グーグル効果

3月16日の朝日新聞教育面に,岐阜大学社会システム経営学環2022年度の入試試験の小論文の問題が取り上げられていた。
同紙に紹介されていた問題文と設問の一部は次の通りである。
〈問題文〉ではなぜわたしたちは知識を身につけなくてはいけないのだろうか。スマホにグーグルやウィキペディアが入っているのに。確かに,電話番号くらいなら問題ない,だが,あらゆる知識をグーグルで代用することは当然できない。人間には知識が必要なのだ。社会と繋がり,批判的な問いかけをし, 情報精査するために。情報を作業記憶から長期記憶へと移動するための固定化は,「元データ」を脳のRAM(ランダム・アクセス・メモリー)からハードディスクに移すだけの作業ではない。情報をその人の個人的体験と融合させ,私たちがが「知識」と呼ぶものを構築するのだ。
〈設問〉下線部のグーグルで代用できる知識と人間に必要な知識について,本文を踏まえ,あなたの考えを述べなさい。(60字程度)
問題文の原典は,精神科医のアンデシュ・ハンセン氏が書いた『スマホ脳』(新潮新書)で,この著書についての早稲田大学教授のドミニク・チェンさんのコメントが載っている。
ハンセンさんは,人々が1日数時間スマートフォンを使っているのは,脳の仕組みや特性をIT企業が巧みに利用しているからだという。そして,情報が別の場所に保存されていると分かっていると,脳が自分で覚えようとしない「グーグル効果」について言及し,美術館で写真を撮っていない作品は,撮った作品に比べて,翌日よく記憶しているという実験結果を紹介しているという。
チェンさんはこれに賛成し,簡単に手に入る情報はたやすく零れ落ちて行くもので,意識を集中させて向き合って得られる「自腹を切った」知識が自分の中に残っていくのだという。
なるほどと思った。
以前,ツアーでエルミタージュ美術館に行った時,同行の一人がひたすらカメラのファインダーから作品を見ていて,こんなことなら画集を買って見ればいいのにと感じたことがある。しかし,その傾向はわたし自身にも無きにしもあらずで,自戒しなければならない。
岐阜大学の入試問題は,情報化時代に向けての警告を問うていて,なかなかの良問である。紙面に紹介されていた,解答例(教学社2023版大学入試シリーズ所載)を以下に転写する。
グーグルで代用できる知識は誰でも知り得る単なる情報であるのに対し,人間に必要な情報は情報を個人的体験と融合して構築され,社会との連携や批判,情報の正確さの精査に必要となる。
また,この問題文をchatGPTに読ませて感想を訊いたところ,次のようなコメントが得られた。まさに優等生だ。
確かに、現代のテクノロジーは私たちに多くの情報を提供してくれますが、それでも知識を身につけることは非常に重要です。理由は以下のとおりです。
批判的思考を養うために:知識を持つことで、あなたは情報を評価し、批判的に考えることができます。それによって、あなたは虚偽の情報に惑わされることが少なくなります。
自分自身と社会とのつながりを深めるために:知識を身につけることで、あなたは人々とより深いレベルでつながりを持つことができます。あなたは知識を共有することができ、議論をすることができ、意見を交換することができます。
問題解決の能力を向上させるために:知識を持っていることで、あなたは新しい問題に直面したときに、より迅速かつ効果的に解決策を見つけることができます。
職場での成功のために:多くの職場では、知識を持っていることが成功の鍵となります。あなたが持つ知識によって、職場での業務の質が向上し、キャリアの成長が促進される可能性があります。
総合的に言えば、知識を身につけることは、あなたの人生において大きな価値を持ちます。テクノロジーが進化している今日でも、知識はあなたが自分自身や周りの人々、社会、そして世界を理解する上で必要なものです。
Happy Birthday!

今日はカミさんの○○歳の誕生日だ。彼女の心友が生花を送ってくれた。友とは佳きもの。
STOP WAR!