諏訪山岳会公式ブログ

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雨飾山 南尾根

2017年04月04日 | アルパインクライミング
2017年4月1日~2日
I原、N原、O石(記)
雨飾山南尾根


雨飾山に行って参りました。
昨年も同時期に行きましたが、O石のアクシデントのため、P1取り付き1ピッチで敗退した山です。
今年はそのリベンジ山行でもあり、無事にピークハントができましたのでレポートします。


4月1日(土)
5:30諏訪山ルームに全員集合し、一路、雨飾山を目指して出発。
7:50順調に小谷温泉に到着。通行止めゲートより装備を整え8:10歩行開始。
途中、除雪車の作業を中断して頂いて、横を通り抜ける。(ありがとうございます)
除雪車の先は当然深雪に阻まれているため、早速ワカン着装となった。

昨年に比べて積雪量が多い。林道途中の露天風呂も1メートル程下がったところにある。
除雪前なので当然だが、昨年はアスファルト路面から登り気味だったので、周囲の様子から凡そ2mは昨年よりも多い計算になる。道路看板も手が届く高さだ。
9:20 1127mの林道分岐に到着。南尾根が正面に臨める
なだらかな大海川沿いの林道を40分程進むと南尾根取り付きに着く。
トレースはなく、今日は我々だけのようだ。
昨年同様、体力温存のため、直登は避け尾根の左側の沢を詰める

左右から流れてきたデブリが所々点在している。注意深く上方の様子を伺いながら10m程の間隔を空けて進む。

視界も30m程のため下山の保険に赤旗を立てて進む。先回の仙の倉山行でその効果を実感できたので、今回もI原リーダーが準備した。
支沢が2本程あるが、昨年よりも左側の沢を詰める。
そのまま今日の幕営地点であるP3(1510m)に、ほぼ直登する支尾根に乗れた。
登りやすい効率的なアプローチだ。
11:10 P3(1510m)に到着。テントを設営後、中でゆっくりとランチ休憩を取った。
天候はイマイチ、視界約30m、雪、風はそれほど酷くないため、午後はP2目指してトレースつくりに費やした。
13:30 P2南面の大雪面下(1700m)に到着。残念ながら視界不良で見えず、無理してトレースをつけなくても明日の天候が良いことも考慮してここで引き返すことにした。

宴にはまだ間があるので、途中の適地でビーコン訓練に時間を割いた。
I原リーダーとO石は昨年の長山協のビーコン探索講習の復習として、一方、新人のN原さんは二人のアドバイスを受けながらの初訓練である。
クロスサーチの重要さとプロービングの要領を確認しながら、まずは理解できたようだ。
15:00 テントに戻り宴の始まり。明日の英気を養うべくしっかりと栄養をとり、穏やかに時間は過ぎた。時々風雪が強まることはあれども、就寝するころには星空も望めるほど天候は回復してきた。明日の快晴を期待しつつ静かに眠りに着いた(と思う)。

4月2日(日)
5:40出発 快晴無風の最高のコンディションに足取りも軽い。

昨日引き返したP2下1700mに6:20到着。

昨年同様、宇宙を感じさせる紺碧の空と雪のコントラストが美しい。

6:40 P2(1838m)に到着。昨年記念撮影した穏やかな雪面は、発達した雪庇により当時と様相が異なる。積雪量は昨年より2~3mは多い。先に見えるP1までの雪稜に発達した雪庇も鋭利な三角形でなくキノコ雪状態で逞しい。

6:50 大休止と登攀装備を着装して、猫の耳のような双耳峰目指して歩を進める。
途中のトラバースはロープを出す程ではないが発達した雪庇を避けて左斜面を慎重に進む。落ちればどこまでも止まらない斜面が続く。

ハイ松帯に乗った雪により所々体が落ちそうになるため足場を確認しながら、且つ雪庇に乗らないようにルーファイに神経を注ぐ。

7:30 P1取り付き点(1850m)に到着。いよいよミックス岩稜帯の始まりだ。

7:40 足場の悪い中、全員セルフビレイを整え、O石リードで登攀開始。
昨年、最初のスタンスに乗った瞬間、左脹脛の肉離れをした一歩だ。
アポロ月面着陸の名セリフを借りて恐縮だが、私にとっては重要な一歩だ。
昨年登攀したI原リーダーから事前指示を受ける。「最初のフェースを登った後、中間バンドからクラックを左上し灌木で中間支点を取る、その先の足場が嫌らしいのでここが重要。そのままクラックを詰めるとビレイ点が現れる」 その通りに登攀し最初のフェースをクリアした後に次ぎのフェースが現れた。直登すれば3級程だ。ここから左クラックへ行くべきところ直登してしまった。登った時点で支点もないのでハーケンを打ちそこから左上。当然灌木は下になった。そこで指示を思い出し、少し下がって灌木で中間支点をとりクラックを詰めてビレイ点に着いた。ルーファイが全くできていなかったことになる。というよりもリーダー指示に従わなかったことは完全にNGだ。リーダーからきつく叱責を受けることになった。

続く2ピッチ目もO石リード。「ここからはトラバース主体で、登攀はない」と事前にリーダー指示を頂いた。3mほどのミックス雪壁を登るとコルが現れる。5m程先の正面に4級程のフェースが見える。取り付きまで歩いて進み残置ハーケンに支点を取った。その時すでに「登攀はない」というリーダー指示をまたも失念している。下から「何やってんだ!」とリーダーの激が飛ぶ。
結局コルまで戻り、見ればフェース左側にイージーな雪壁ルートがある。2カ所ほど中間支点を取りつつ40m程トラバースしてビレイ点に到着。あのまま登攀していれば足場の悪いここへのリッジ下降を伴うリスキーなコース取りになっているところだった。さすがにリーダーの逆鱗に触れて反省ひとしきり。
アルパインクライミングに於いては、ルートの弱点を見つけ、迅速かつ安全な登攀を第一に心がける、というもっとも重要な基本を守れない自身の課題が露呈した…
だが、ここで凹んでいても仕方ないので気を取り直して先に進む。
いよいよ本峰が目の前に迫ってきた。1900mから山頂に繋がる両側に切れたったトラバースの始まりだ。南は長野、北は日本海が望める、まさしく県境稜線だ。

I原リード、N原セカンド、O石ラストで50mロープいっぱいに伸ばしてスタカットで通過する。
2mほどのキノコ雪を乗越す最終ピッチをO石リードで進む。ボディービレイで2人登攀してところでロープを収容。最後は緩やかなミックススラブを10m程上がると山頂だ。

9:40 P1(1963m)登頂。

糸魚川市と日本海が眼下に広がる。360度の大展望が望める絶景だ。我々3人だけの頂き、これだから雪山は止められない。

南には北アルプスの大観峰、北は火打山、焼山へとつながるロングルートの眺望が素晴らしい。いつかあの稜線も歩いてみたい。3人で次の山行に話が弾む。

9:50 大休止と記念撮影をして下山開始。
来たルートをそのまま下降し2ピッチ終了点から懸垂下降を考えたが、支点に不安もあったのでロープを出し1ピッチ終了点までトラバース下降。最後は懸垂下降してP1取り付き点に戻る。ここは50mロープ1本で足りた。
P2から先のトラバースでロープを出しているBCクライマー2人とすれ違う。
聞けば全層雪崩跡が顕著なBCコースは危険と判断し滑走をとりやめ登攀に切り替えたらしい。彼らの無事登攀を祈って足早に進む。

11:10 P2に戻り緊張の岩稜登攀+リッジ通過は終了した。
途中BCツアーのパーティー2組とすれ違いテントに12:15到着
12:40撤収して下山開始
14:30 小谷温泉の通行止めゲートに到着し我々の山行は終了した。

昨年のリベンジとして臨んだ雨飾山南尾根。
山容全体を見る。進むルート全体のイメージをする。弱点を見つけて安全なピッチの切り方をイメージする。基本的な考え方と行動がまだ身についていない自分の課題が浮き彫りになった山行だったが、無事コンプリートでき充実の二日間になった。
新人のN原さんにとって初めての本チャンバリエーションとして思い出深い山行になったように、自分も決して忘れてはならない教訓山行となった。


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