この日は息子が立ち寄る予定だったが、私が帰宅する頃には、息子は出かけていた。
居間に入ると珍しく夫がソファーで横になったまま、元気がなかった。
聞くと「朝から身体がだるくて、頭が痛い」と言う。「熱は?」と聞くと、「出ていない」というので、昨日風呂上がりに湯冷めでもしたのかね、などと話した。
その日の夜遅く、息子が再び家に立ち寄り、帰り際に「お父さんの風邪うつらないようにね」と言って帰って行った。
3日後の11月30日水曜日はパートがお休みの日だった。
その日は、朝から熱っぽかった。私の平均体温は35.5度前後と低いはずなのだが、測るとすでに36度半ばだった。
夫の風邪がうつったか、それともまさか…と思いながらも少し様子を見るべく、兎に角ひたすら眠った。午後になっても熱はどんどん上がり続けるので、これは明日の仕事は無理だなと判断し、職場の上司に電話を入れた。
上司へ発熱の事を伝えると、とりあえずコロナの抗原キットで検査するか、発熱外来へ行くようにと指示された。
その日は午後から兎に角眠り続けた。
目が覚めれば麦茶を飲み、熱を測るの繰り返し。
夕方熱が37.9度になり、いささかきつかったので夕食後、風邪薬パブ○ンを服用し、少し楽になった。
明けて12月1日木曜日。
先ず初めに新聞紙に記載されている「新型コロナウイルスの相談・受診」欄を見た。
65歳未満の人と、65歳以上の人とでは対応が違うことをその欄を見て初めて知る。
65歳未満の対応の方に電話してみると、札幌市の場合、抗原検査キットを無料で配布している薬局がある事を伝えられた。「札幌 抗原」で検索すると出てくるとのこと。
発熱外来のある病院もネットで調べるとわかるのでという簡素な説明で終わった。
まず、「札幌 抗原」で早速調べてみたが、抗原検査キットは無料ではあるが郵送のみの対応で、到着までに2〜3日かかるというものだった。
結果は早く知りたい。
多少お金がかかってもいいと思い、頭にすぐ浮かんだのは、いつも行くスーバーの2階の靴屋さんに売っている抗原検査用キットだった。
直ぐに靴屋さんに電話して、それがあるかどうか確認すると、880円のと、ワクチン後の抗原がわかるという1480円のタイプとがあるという。880円のタイプでいいなと思い、夫に頼んで抗原キットを買ってきてもらった。
さっそく抗原キットで説明通りに舌の上に乗せ検査してみたが、待てど暮らせど本来出るはずのラインが1本も出て来ない。結局、判定は無効。880円が無駄になった。
靴屋さんで買ったのがこれ。表面、右下に研究用の表示あり。
裏面。右上に研究用の表示あり。
後から知ったのだが、今回靴屋さんで購入した抗原検査キットは、厚生労働省が承認していない研究用だった。
袋の表面、裏面に割りと大き目に表示されているので、購入するときは注意が必要だ。
何で、薬局じゃなくて靴屋で買ったのか。それがそもそもの間違いだったが、熱がある頭ではちゃんと考えられなかったと弁解しておこう。
抗原検査の判定が無効になり、どうしたものかとボーっとした頭で考えあぐねていると、夫の携帯に息子からラインの着信があった。
「コロナ陽性になった」という連絡だった。
息子は自分が感染源ではないかと思い謝り、昨夜から発熱しているとラインを返してきた。私も昨日朝から徐々に熱が高まっていた。ということは、息子と私はほぼ同時期に感染したことになる。
それでピンと来たのは、もしかしたら夫はコロナに感染していたのでは無かったかという疑惑。
私の周りには、コロナワクチンを接種していない友人が多い。
そのワクチン接種していない友人の内二人が、先ごろそれぞれ家族から感染したのだが、何れもほぼ熱も出ずに軽症だったという話を聞いていた。
実は夫もワクチン接種をしていない。
ワクチン接種しない人の方が軽症だなんて不思議な気もするが、実際そんな例が私の身近にあったのだ。
夫も感染していたけれど、軽症だった可能性がある。
その時点で、熱のある頭で暗黙の内に夫をコロナに感染しているとみなして、そのように対応するしかなかった。
多くの人がコロナの療養中に苦労するのが、感染していない家族との隔離生活だと思うが、二人暮らしで先に夫が(多分)感染し軽症だったのが幸いだった。
抗原検査が無効となってしまったので、やはり発熱外来へ行くのが手っ取り早いと思い、スマホで市内の発熱外来を検索した。
日頃ニュースで医療関係機関が押し寄せる患者の対応に大変ご苦労されているのは承知だが、この病が何であるか確定しないことには、身動きが取れない事情もあるのでやむを得ない。
札幌市内の区別に表示された欄が出てきたので、南区をタップするとPDFがダウンロードされたのだが見ることが出来ない。何かを設定しなければならないらしいが、熱のある頭では難しい。熱がなくても難しいというのに。下手にいじっても、おかしな事になってはとビビル気持ちもある。
スマホのファイルから確認できると娘に教えてもらうけれども、肝心のファイルがどこにあるのやら…。結局娘に助けてもらい、一覧表をラインで送ってもらい確認出来たのだった。
コロナ感染を確認するために、発熱外来のある病院を探すだけで、こんなに手間がかかってしまう。ただでさえ頭の回転が悪くなっている年齢に加え、熱が加わると尚更である。
何もかもがオンラインからの検索の時代。高齢者には憂鬱だ。87歳の若宮正子さんは得意かもしれないけど、彼女はただの高齢者ではなかった。若い頃から非常に優秀なバンカーだったのだ。「バッターボックスに立ったら打てちゃったんです」なんて言っているけど、皆が彼女みたいだったら苦労はしない。
先ずは発熱外来への予約をしなくては。