1年半かけて得たもの

ホテルのお客様から私宛のメッセージを頂いた。
綺麗な部屋で気持ちよく過ごせたという内容だ。
もちろん頂いたメッセージはとても嬉しかった。
でもメッセージを見ながら考える。
これは私宛ではあるが、
私一人が頂いた訳ではないと。
私が清掃した後、不備がないかリーダーが確認をする。
そこで不備がなかったとしても、
ホテルのスタッフの対応が乱雑であったら、
ホテルはお客様にとって不快な空間になり、
清掃云々など気が回らないだろう。
ホテルスタッフの各人がお客様に丁寧な対応をしたからこそ、
お客様は心から寛ぎメッセージを残して頂けたのだ。

この仕事を始めたばかりの頃、
一人で行う作業は孤独との戦いだと感じていた。
誰とも接す事のない日々を苦痛に思う事もあった。
いかに早く作業をこなせるか？
私のテーマはそれだけだった。
仕事にお客様を感じる事など皆無だった。
ある時仲間の助けを得て仕事は孤独でないと感じた。
初めてお客様からメッセージを頂き、
これは作業ではなくお客様をもてなす事だと知った。

ホテルスタッフの誰もが最高の接客をお客様に行っても、
入った部屋が埃まみれだったり、
髪の毛が落ちていたりしたらお客様は不快になるだろう。
スタッフの努力を1本の髪の毛が台無しにしてしまうのだ。
私たちは派遣の清掃員であるが、
お客様にもっとも身近で重要な場を任されている。
作業でなくもてなしの心を持たなければいけないのだ。
良いメッセージで有頂天になってはいけない。
それはたくさんのスタッフによって頂けたのだと、
感謝の心を忘れてはいけない。

良いメッセージはけして一人では頂けない。

メイドになって1年半、
ようやくそう思えるようになってきた。