
針金を巻くための用具を班長さん借りて、2班に分かれて山ぎわへ出発。高さ2メートル近いメッシュのつなぎ目の針金の緩みや、隙間の有無などをチェックする。といっても隊員は金魚のふんの地位を確立して、ついて行くだけ。百戦錬磨のおじいさん、おじさんたちが手早く針金を巻き直したり、メッシュとトタンを組み合わせて補修したりするのを、感心して見ている。
「これを越えてくるシカもおる。たまに失敗して、突き刺さって死んどるのもおるで」。一緒に歩いていた男性が説明する。「まぁ、かわいそうに」と思うのはにわか山里住民の隊員だけ。鳥獣による農作物被害は、この一帯でも深刻だ。シカの鳴き声は朝夕関係なく、山の奥からわが家まで聞こえてくる。
「万里の長城」のように張られたメッシュ沿いを、ひたすら歩く。作ったときはさぞ大変だったろう。
80代の男性も藪をこぎながらハイスピードで斜面を歩き、資材をひょいと担いでくる。男性は昨年の西日本豪雨で土砂に埋まった畑も、人の手を借りながら復活させたという。「戦前生まれにゃ、わしらはどうやってもかなわんよ」。60代と思われるおじさんが大声で言う。

