福富ストラット

「記者ときどき農夫」。広島の山里で子ども向け体験農園づくりにいそしむ、アラフォー新聞記者のブログ。

make your work

2019-11-20 23:13:09 | 日記
 最近、友人2人から相次いで電話やメールをもらった。お互いに近況を報告する中で、こんなぼやきを聞いた。「家族が一番大切なのに、仕事にばかり時間をかけてきちゃった」「趣味や飲みの時間まで、会社の人と一緒に過ごしたくない」―。

 隊員はちょうど、同僚隊員が貸してくれた「自分の仕事をつくる」という本を読み終えたところだった。一家言ある働き方、暮らし方をしている人や企業を筆者が訪ね、そのうんちくを聞く内容。そのラインナップにはかなり偏りもあったが、二つのケースに共感した。
 どちらも超有名な事例だが、一つは、アメリカ西海岸にあるアウトドアウェアメーカー「パタゴニア」社。ここでは、社員が希望すれば、経験の有無を問わず、他の部署の仕事に移ることができる。さらに、会社の仕事を一時的に離れ、環境保護団体などで働ける。しかも、会社でのポジションや給料は保留したまま。さらに、アウトドアに出かけるために、4カ月仕事を離れられる。「アウトドアに熱中する時間は、私たちの仕事にとってあらゆる意味で重要なこと」「私たちは人を雇用するけど、その人の人生まで雇い上げているわけでじゃない」という会社の考えかららしい。
 社員の大半は1年のうち10カ月を仕事に、残り2カ月をアウトドア・ライフに充てている。例えばカヤックやスキーの旅をしたら、社内で報告会を開いて「楽しみ」を共有する。それはウエアの開発、改良にもつながる。とにかく個人への投資がハンパない。だから、「働きたい」人が集まる。なるほどー。

 もう一つ共感したのは、パン屋「ルヴァン」の創業者甲田幹夫さんの「この仕事には矛盾がなかった」という言葉だった。
 学校の先生や会社勤めなどをしてきた甲田さん。やりがいを感じても、働いているうちに「僕が売っているものを飲み続けたら、体を悪くするんだろうな」などと、どこかで矛盾が出てきたという。
 しかし、ごく気軽に始めたパン屋では、矛盾が感じられなかった。作っていて気持ちいい。人に喜んでもらえる。素材も体にいい―。その「矛盾のなさ」で続けられた。
 確かに、たとえ仕事の「苦労」は大きくても、「矛盾」がない仕事をしている人の表情は、会うだけでこちらが気持ち良くなる。それは、事業規模や職種の華々しさとは関係ない。

 冒頭の友人2人の言葉の背景には、それぞれたくさんの事情があり、価値観がある。単純に白黒付けられるもんじゃない。ただ、隊員はどちらの気持ちも、とてもよく分かる。そして、そんな気持ちを抱えながら、「矛盾」を感じながらもがいて働く2人も好きだなぁと思う。