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隊員はちょうど、同僚隊員が貸してくれた「自分の仕事をつくる」という本を読み終えたところだった。一家言ある働き方、暮らし方をしている人や企業を筆者が訪ね、そのうんちくを聞く内容。そのラインナップにはかなり偏りもあったが、二つのケースに共感した。
どちらも超有名な事例だが、一つは、アメリカ西海岸にあるアウトドアウェアメーカー「パタゴニア」社。ここでは、社員が希望すれば、経験の有無を問わず、他の部署の仕事に移ることができる。さらに、会社の仕事を一時的に離れ、環境保護団体などで働ける。しかも、会社でのポジションや給料は保留したまま。さらに、アウトドアに出かけるために、4カ月仕事を離れられる。「アウトドアに熱中する時間は、私たちの仕事にとってあらゆる意味で重要なこと」「私たちは人を雇用するけど、その人の人生まで雇い上げているわけでじゃない」という会社の考えかららしい。
社員の大半は1年のうち10カ月を仕事に、残り2カ月をアウトドア・ライフに充てている。例えばカヤックやスキーの旅をしたら、社内で報告会を開いて「楽しみ」を共有する。それはウエアの開発、改良にもつながる。とにかく個人への投資がハンパない。だから、「働きたい」人が集まる。なるほどー。
もう一つ共感したのは、パン屋「ルヴァン」の創業者甲田幹夫さんの「この仕事には矛盾がなかった」という言葉だった。
学校の先生や会社勤めなどをしてきた甲田さん。やりがいを感じても、働いているうちに「僕が売っているものを飲み続けたら、体を悪くするんだろうな」などと、どこかで矛盾が出てきたという。
しかし、ごく気軽に始めたパン屋では、矛盾が感じられなかった。作っていて気持ちいい。人に喜んでもらえる。素材も体にいい―。その「矛盾のなさ」で続けられた。
確かに、たとえ仕事の「苦労」は大きくても、「矛盾」がない仕事をしている人の表情は、会うだけでこちらが気持ち良くなる。それは、事業規模や職種の華々しさとは関係ない。
冒頭の友人2人の言葉の背景には、それぞれたくさんの事情があり、価値観がある。単純に白黒付けられるもんじゃない。ただ、隊員はどちらの気持ちも、とてもよく分かる。そして、そんな気持ちを抱えながら、「矛盾」を感じながらもがいて働く2人も好きだなぁと思う。