東広島市内の児童精神科の開業医を訪ねた。隊員が進めている不登校や引きこもりの子どもたちの居場所「こども農園(仮)」づくりについて、助言や力ぞえを請おうと、数年ぶりにアポイントをもらった。
以前、約1年にわたって一緒に仕事をさせてもらったことのあるドクター。当時は別の療育機関に勤めていた。当時から超多忙な人で、アポ時間に到着して面会まで「1時間待ち」はざらだった。
初めて訪れる新しい“マイクリニック”は、新興住宅地に立っていた。発達障害を専門に診る珍しい小児クリニックで、待合室はカフェのよう。午前中の診療時間が終わろうとしていたが、まだ親子連れたちが入れ代わり立ち代わり、診察室に入っていく。
「作業療法をやろうということになったよ」。父親らしき男性が奥さんと思われる人に電話で診療結果を報告する。「そう、あぁ、聞いとくよ」。クリニックから提案された作業療法の受診ペースを、もっと増やしたいようだ。
看護師のお姉さんが、待合室でお菓子を配って回る。「クリスマスが近いので、お菓子どうぞ」。ソファにひとりで腰掛けた中学生ふうの男の子は、あれこれ悩んだ末にブドウ味のお菓子を手に取る。「あっ、ありがとうございます」。うつむき、はにかむ男の子。
ひとりひとり、それぞれの「課題」を抱え、家族とともに悩み、クリニックにかかっている。隊員が普段使う、発達障害、療育、特別支援―なんて言葉が、使い勝手はいいが何ごとも表せない、のっぺらぼうな言葉に思えてくる。
40分待ちで面会できたドクターは、昼食の時間も取らず、たくさんのことを語ってくれた。1歳半健診でほぼ4割が「気になる所見」が見つかること。障がい者雇用枠でなく、一般雇用の枠で障がい者を雇用する企業がでてきていること。知的障害者と精神障害者の仕事上のハードルのちがい。隊員が描く「農園」が、さまざまな就労支援にまでつながるのが理想であること―。どれも勉強になる。
ドクター自身もずいぶん以前、農家から畑を借りて子どもたちと農作業をする試みもしていたらしい。「でも、僕ら医者がふだんから畑を世話できないから、どうしても無理が出てきてね」
わが「こども農園」で開く保護者との勉強会での講師役などでの「ご助力」をお願いすると、快く引き受けてくれた。そして、隊員がこれまで訪れたいくつかのフリースクールの先生ともつながっていることが分かった。
そのうちの1校の代表者男性も今月、わが農園の視察に来てくれた。幼少期の療育から就労支援まで一貫して手掛けている。「不登校や引きこもりに限定せず、あえて一緒に集えるといいですね」「その日にやることを大まかに決めたら、あとは子どもたちの流れに任したほうがいい」。なるほど。
代表者の男性自身も、大人になって学習障害(LD)であることが分かったという。もともとは農業関係の企業に勤めていた。どうりで、畑や田んぼをみて繰り出すコメントがプロ並みに詳しい。わが家で1時間ほど話をして、少しだけ軽トラを走らせて町内も見てもらった。「いいところですね。一緒にいろんな可能性を探らせてください」。ありがたい。
学ぶべきことは尽きない。
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