福富ストラット

「記者ときどき農夫」。広島の山里で子ども向け体験農園づくりにいそしむ、アラフォー新聞記者のブログ。

こわもてドクターの転身

2019-09-07 01:07:08 | 日記
 人から見ると人生の大きな転換でも、当の本人にとってはごく自然な流れ―。そんなことは、珍しくないのかもしれない。今日仕事で会った広島県内の男性医師も、泌尿器科医から精神科医へという転換を経て今、田舎町の地域医療と向き合っていた。
 大学の医学部を卒業後、いくつかの総合病院で経験を積みながらバリバリと働いていたドクター。30歳を過ぎたころ、心の病から体調を崩した。激務と人間関係のストレスが原因だった。たくさんの人を治してきた医師の立場から一転。ひとりの患者として医療に関わる中で、人の心と向き合う医師になりたいとの思いが芽生えたという。
 体調を取り戻した後、新たな「師匠」の医師の下で学びながら精神科の専門医資格を取った。数値や画像に基づいて治療法をほぼパターン化できたそれまでと違い、心や精神の病は原因がなかなか目に見えない。「患者さんと時間をかけて話し、その人の人生を知らないと、表面的なケアや間違った治療につながってしまうんだと痛感しました」
 再び長年の「修行」を積みながら、精神科の入院病棟や「看取り」を扱う介護事業所などを持つ医療法人のトップとなったドクター。全国的に相談・支援の機会が限られている高校生以上の発達障害の専門外来を設けるなど、独自のチャレンジを続けている。
 自分の心の声に気付いたとき、新たな一歩を踏み出すかどうか。そこが一番難しい。たいていの声は、常識や生活を理由に「踏み出さない」ことの言い訳に変わり、居酒屋でぶちまけられて消化されるのかもしれない。
 「まあ理想に向けていろいろやってますけど、現実はなかなか厳しいですよ」。こわもてに茶パツの風貌で、地域医療をめぐる現実もとつとつと語ったドクターの目は、なかなかかっこよかった。




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