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杉山を自然林に戻したい。
黒っぽい杉山を見るたびに子供の頃見た青い自然林を想う。山のことのみならず生活ブログです。

杉山か杉畑か

2006年07月06日 22時15分10秒 | 森林
宇治田原の山の中の「耕雲庵」に行く用があって、書き出した住所を頼りに訪ねたことがあった。
その折、行き着くまでに庵の裏手の杉林に迷い込んだ。里山と呼ばれる山だが、その杉林は間伐も枝打ちも全く為されておらず、晴天だというのに林の中は暗く、陽光が入らないので草が一本も生えていない。下の地肌は茶褐色の薄気味の悪い光景で、愕然とした。こんな山があるものか。
戦後の農林省の政策で国有林を民間に下げ渡して、植林が奨励されて、村々では盛んに杉が植えられた。檜も植えられたが杉のほうが生長が速いので多くは杉だ。動物の住処であり黒土を作り、山に保水力を与え、土壌を豊かならしめる広葉樹の自然林は、杉山ならぬ杉畑になった。農村では現金収入を欲しかったのだ。それから50年、60年が経って、時代が変わり、人の世代が変わり、山の世話をする人間が少しずつ居なくなり、杉畑、檜畑は放って置かれた。人工林は人手によって世話をされ、手入れされなければ荒れてしまう。茂り過ぎる枝葉は山肌を太陽から隠し下生えを起きさせない。下生えの無い山肌は土が諸出しとなり雨が降ると解けて流れ出す。山肌を解かした水は川に泥を堆積させ、水棲のもの達を痛めつける。自然の浄化力が著しく損なわれ、海に流れ出した泥水は海岸近くの漁場に磯焼けを起こし台無しにする。日本の至る所でこの現象が発生して、日本の自然はすっかり美観を失った。
十津川から熊野川沿いに南へ車を走らせると、行けども行けども杉畑が続く。四国の吉野川沿いも四万十川沿いも同じようなものだ。

農水省が最近杉山等の人工林を自然林に返す事業を始めたようだ。切り出しを終えた後には植林をせず、自然林に返そうという農家には補助金が降りるとか。好結果を期待したいがどれほどの効果があるだろう。林業に望みを持つ人たちも多いから。
ところで、淡路島には人工林が非常に少ない。淡路島の山の最高峰は600mだが、自然林になっているので、低山でも歩いて楽しい山々が多い。淡路島で山歩きをすると生き返ったような気になる。自然の森の生体に与える好影響が実感されるのだ。京都の北山の谷の水は泥のせいか透明感が無い。杉林のせいだろう。山に保水力が無く、いかにも泥水という印象が強く、手で掬って飲む気にはならない。昔はどこの山でも谷の水は美しく、おいしく呑めた筈だ。
早明浦ダムから北に遡る支流は汗見川という。この支流のさらに上流は杉林がよく手入れされているのか、また自然林も多く残されているせいか、目を奪われるほど美しい水が流れている。私はよくこの谷に入ってゆく。




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