先日の休みに映画を観てきた。
中村勘九郎主演の時代劇、"真田十勇士"だ。
戦国武将、真田信繁とその精鋭家臣、"十勇士"たちの物語。
江戸時代から講談として語られてきた物語で、十勇士は架空の人物(一部モデルとなった人物あり)。
この映画と同じキャスト(一部相違)での舞台公演が、
映画公開と同時にスタートするという、日本のエンターテイメントでは初の試み。
監督は20世紀少年などの堤幸彦氏。
キャッチコピーは、"不可能に、挑め。"
真田十勇士。
先にも書いたが、江戸時代から庶民の間で講談として人気を博した物語。
猿飛佐助,霧隠才蔵など、一度は聞いたことのある名前の忍者などからなり、
剣の達人だったり、槍の使い手だったり、怪力の屈強僧侶だったり、
個性的なメンバーで構成される十勇士。
物語によって、メンバー構成や名前,人物像等はまちまちらしく、
今回の映画でもこれまでとは異なる構成となっている模様。
真田信繁のことを、"真田幸村”という名で語られたのはこの物語からで、
現在に至るまで、こっちの名前の方が認知度は高い。
自分も大河ドラマ"真田丸”を観るまで、信繁という本当の名前は知らなかった。
しかし、大河ドラマ放送を狙っての映画化。
しかもクライマックス突入前を見計らっての映画公開。
タイミング的に、あからさまに いろんな思惑が見え隠れするこの映画。
当初、どうせ便乗映画だろうから、大したことないだろうと思っていたし、
なによりも、真田十勇士が史実ではなく作り話。
南総里見八犬伝とかもそうだけど、こういった類はあまり興味がない。
ところが公開直前になって、物語の大まかなストーリーを知る。
"名将と名高い真田幸村が、本当は腰抜けだったら・・・?"
そんな設定でのストーリー、ちょっと興味が沸いてきた。
予告編の映像もスケールが大きくて、だんだんと観に行きたくなってきて、
決定的だったのが、息子の「観たい!」のひと言だった。
だが・・・息子とスケジュールが合わず、けっきょく一人で観ることに。
時は1614年。
石田三成と徳川家康(松平健)、天下分け目の関ヶ原の戦いから14年。
三成を降した家康は征夷大将軍に就き、江戸幕府を開いて
その地位を盤石にし、その権力を確固たるものにしていた。
そして天下取りの総仕上げ、豊臣の成敗に乗り出す。
豊臣秀吉の遺児、秀頼は淀殿(大竹しのぶ)と共に大阪城で、家康を迎え撃つことに。
しかし、20万とも言われる徳川の軍勢。
淀殿と秀頼は家康を嫌う大名や牢人たちを全国から招集する。
紀州、高野山のふもと九度山。
関ヶ原の戦いののち、家康の命で蟄居生活を送っていたひとりの武将が居た。
真田幸村(加藤雅也)。
信州・上田の小大名、真田昌幸の二男であった彼は、
家康を撃退した巧で勇名を馳せていた。
そんな幸村の元にも、秀頼からの招集の報せが届いていた。
しかし、当の幸村はその招集に消極的だった。
抜け忍の猿飛佐助(中村勘九郎)。
盗みに入った九度山で幸村と出会う。
天下の名将、幸村と対峙して、佐助は恐れおののく。
自身が有利な状況だったにも関わらず、
名将と名高い幸村のその堂々とした たたずまいに屈服してしまう。
しかし、幸村はため息混じりに佐助に明かす。
「わしは世間で言われておるような、天下の名将などではない・・・。」
常に無策で行きあたりばったり。
戦は嫌いで、敵と戦うのが怖い。
家康を撃退した合戦も、単なる幸運で勝てただけだと明かす。
成り行きだけで名声を手に入れてしまった幸村。
天下の名将として名高い真田幸村は、ただの腰抜けだった!?
幸村からそんなことを吐露された佐助は拍子抜けする。
だが、ここで佐助はでかいことを思いつく。
自分が幸村を盛り立てて、世間の評価に違わぬ名将に仕立てあげてやろうじゃないか!
元々でかいことをやりたくて忍びの里を抜けた佐助。
腰抜け武将、真田幸村の一の子分となり、同志集めをはじめる。
まずは同じ忍びの里出身の抜け忍、霧隠才蔵(松坂桃李)と、
才蔵の子分の三好清海(駿河太郎),伊三(荒井淳史)兄弟を強引に仲間に。
真田の元に凄腕の勇士達が集まっている。
佐助が自ら吹聴して回り、だんだんとその噂が世間に広まっていく。
その噂を聞きつけて、宇喜多秀家の元家臣、由利鎌之助(加藤和樹)が志願してくる。
忍びの里からの追手との戦い中に助太刀してくれた、芸州牢人の筧十蔵(高橋光臣)。
幸村の嫡男、真田大助(望月歩)、
その大助に剣の稽古を付けていた真田家剣術指南役の望月六郎(青木健)も仲間に加える。
そして最後に真田家の大番頭、海野六郎(村井良大)を無理矢理仲間に入れて、
ここに真田九勇士が誕生した!
幸村は九勇士を引き連れて、大阪城へと入城する。
民や集まっていた兵達から歓迎される真田一行。
既に大阪でも真田の勇士たちの噂は広まっていた。
その勇士の名をかたり、城下で無銭飲食をしたり金をせびる人物が。
武士のふりをした百姓、根津甚八(永山絢斗)。
「九勇士だと語呂が悪い。」
自分たちの名をかたって悪行を働いたこの男すら佐助は仲間にしてしまう。
一、変幻自在の策士、猿飛佐助
二、沈着冷静な実力派忍者、霧隠才蔵
三、怪力無双の山賊兄、三好清海
四、韋駄天走りの山賊弟、三好伊三
五、関ヶ原を生き抜いた槍の達人、由利鎌之助
六、豪放磊落な芸州牢人、筧十蔵
七、幸村嫡男で最年少、真田大助
八、真田家剣術指南役、望月六郎
九、文武両道の大番頭、海野六郎
十、秀頼にうりふたつの謎の男、根津甚八
ここに、真田十勇士が誕生する。
秀頼を中心に、大阪城に集まった武将たちで軍議が開かれる。
これまでの功績・名声で、幸村が筆頭となって軍議に参加することに。
ところが策なし腰抜けの幸村、天井裏に潜む佐助と才蔵の指示どおり発言する。
「大阪城には弱点がある!そこに出城を築き、その守りをそれがしに任せてくだされ!」
かくして、真田幸村の叡智の結集、世に名高い難攻不落の要塞、"真田丸”が完成。
ここで幸村は家康を迎え撃つ。
大坂の陣、その戦いの火ぶたが切って落とされた。
迫り来る敵をなぎ倒す十勇士たち。
猿飛佐助、一世一代の大嘘。
絶対不利な戦いに勝利し、真田幸村を名将に仕立て上げ、嘘を真に!
はたして佐助の思惑どおり、徳川の大軍勢相手に勝利することができるのか?
腰抜けの幸村は、佐助の算段どおりに、真の天下の名将になることができるのか?
かなり面白かった。
期待していたよりも、ずっと面白かった!
正直、CGなんかを駆使したド派手なアクションばかりの、
つまらない時代劇だろうだと思っていたが、
これがなかなかどうして、きちんとした殺陣のシーンも存分にあり、
合戦シーンも、忍者同士の戦いのシーンもかなり見応えがあって良かった。
大河ドラマ"真田丸"に合戦シーンがほとんどなく、
殺陣のシーンもしばらくないため、フラストレーションが一気に拭い去られた感じだ。
ラスト、家康本陣めがけ、一斉に敵軍を突破していくシーン、
次々に仲間が倒れて行く光景で込み上げてくる。
マシュマー的にいえば、滅びの美学のような、そんな感覚だろうか。
ドレッドヘアーの侍(山賊だけど)とか、金髪ビジュアルロック系の忍者とか、
ムササビの術とかあり得ないようなシーンも多々あれど、
真田十勇士自体が装飾された物語であり、登場人物も架空の人物であるため、
この程度の誇張は受け容れられるレベル。
物語も途中でだれることなくテンポよく進むため、
夏の陣が始まるころには、もう終わっちゃうのかよ・・・と終わるのを惜しんでしまったくらい。
ラストの大どんでん返しには やられた。
エンドロールの後日談は要らなかったかな。
十勇士の面々はどれも素晴らしかった。
いちいちマントひるがえして格好つけの松阪桃李の霧隠才蔵も、
本当に格好いいから、男の自分が見ても嫌味に見えない。
他の面々は知らない俳優さんばかり。
舞台も上演されるため、テレビや映画では見馴れない舞台役者さんたち。
しかしこれが、皆よかった!
由利鎌之助が超カッコイイ!
その寡黙で堅いキャラクターも相まってすごく良かった。
三好兄弟も筧十蔵も、やたら訛りのある望月六郎も。
最後に見せ場とオチをかっさらって行った、根津甚八も。
"根津甚八”って同名の俳優さんが居るけれど、芸名の由来はここからだったのね。
見せ場のなかった海野六郎、最初にやられるのはメガネの宿命か。
ショタコンは、大助役の望月歩くんにハマるはず。
あ、主役はロンドンブーツ1号2号の淳にしか見えなかった。
十勇士以外では、加藤雅也の幸村様がシブくてカッコイイ!
これ見ちゃうと、堺雅人の幸村がショボく見えてしまう。
実際には、加藤雅也版はヘタレで、堺雅人版が策士なんだけどね。
それから、佐助と才蔵の幼馴染の くの一、火垂を演じた大島優子が良かった。
AKBに居た頃はなんとも思わなかったんだけど、なかなかどうして可愛い子じゃないか。
くの一補正が強いのかもしれない。
個人的に巫女さんとくの一は、かなり補正されて見えてしまう。
とはいえ、それをバッチリ演じられていたからこそ活きてくる補正。
忍びの頭領の娘にして凄腕のくの一。
才蔵に一途に恋い焦がれ、愛するがあまり、
自分の意にそぐわなければ、その命を奪い、自らも死のうと考える危険な女。
実際に本人がこなしたというアクションも格好良かったし、
殺気だったなか垣間見せる乙女心が、くすぐってくれる。
あと額に巻いた はちがねに描かれていたマーク。
所属する忍びの里の紋だろうが、アムロ・レイのパーソナルマークにしか見えなかった・・・。
淀殿役が大竹しのぶ。
これまで見てきた、淀殿、二階堂ふみ,竹内結子に比べて、グッと年齢が上がり違和感が・・・。
でも大坂の陣のときの淀殿の年齢だと、大竹しのぶで妥当なんだよな。
さすが名女優、その貫禄と繊細な演技で、後妻業にも負けない悪女っぷりを披露してくれた。
徳川家康役が、松平健。
かつて八代将軍、吉宗を演じていた健さんが家康を演じる。
あの貫禄で家康を演じられちゃうと、内野聖陽の家康が・・・。
楽しめた映画だったが、残念な点もある。
まず冒頭10~20分くらいがアニメであること。
佐助が幸村と出会ってから九勇士を集めるまでのストーリーが、全編アニメ。
途中で「※アニメ映画ではありません。数分後に本編が始まります。」みたいな注意テロップが表示される。
延々と続くアニメに、さすがにイライラして途中退席したくなったくらい。
あのテロップなきゃ、本気で退席してクレーム入れる年配の方も居たかもしれない。
仲間が集うてくる重要な場面。
この冒頭の大切なシーンを、なぜアニメにしたのか意図がまったく解らない。
キャストで不満な点が。
後藤又兵衛を演じたのが大嫌いな俳優、佐藤二朗。
いや、確かに演技が巧くて名脇役の俳優さんだけどさ、
阿部サダヲやムロツヨシとかと同じで、なんか生理的に嫌いなのよね。
あの猛将、又兵衛を、なぜ喜劇俳優(勝手にそうイメージしてしまっている)が演じるのか?
しかも、ちょい小太りだぜ?
細マッチョでなくてもいい、屈強な俳優さんが演じてサマになると思うんだ。
でも実際の又兵衛も、大坂の陣のときは肥満体だったというから、こんなものだったのかもしれないな。
エースコックから販売されているカップ麺、まる旨 小海老天そばと、豚骨ラーメン。
真田十勇士パッケージのものが販売されていた。
それにしても、やっぱりタイミング悪く公開されたもんだ。
これ観てしまうと、大河ドラマの方が消化試合みたく感じてしまう。
まあ映画ではとちょろっとしか登場しなかった、
長宗我部盛親や毛利勝永らの活躍が見られるだろうし、
なによりも、哀川又兵衛に期待して、最終回まで観続けようと思う。
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