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先日の休みに映画を観てきた。
狂言師・野村萬斎主演の時代劇、“花戦さ”だ。
原作は鬼塚忠氏の小説、“花いくさ”。
監督は地下鉄(メトロ)に乗って,起終点駅 ターミナルの篠原哲雄氏。
キャッチコピーは“花で暴君を討つ!その秘策とは?”。
ずっと前にチラシのみゲットしていて、華道の映画か・・・観るべきかな?
そう思っていたものの、たいして内容をチェックしておらず、そのまま忘れていた。
公開前、主演の野村萬斎がとあるバラエティ番組に出演していて、この映画をPRしていた。
大好きな花が題材で、好きな戦国時代モノで、好きな野村萬斎が主演ときたら、
これは観なきゃなんないなと思い、さっそく公開翌日に観てきた。
時は戦国時代。
京の都にある頂法寺(ちょうほうじ)という寺に、花を生ける僧、“花僧(かそう)”たちが居た。
その花僧のなかに、風変りな僧がひとり居た。
池坊専好(いけのぼうせんこう:野村萬斎)。
草木や花を愛で、誰よりも花を生けることを楽しんでいた。
花を生けることによって、人々の幸せと世の平安を願っていた。
そんな専好、住職から大仕事を命ぜられる。
「岐阜へ赴き、信長公のために花を生けよ。」
織田信長といえば、気にくわぬ者は容赦なく切り捨てる冷酷無比な人物。
住職はじめ、専好の兄弟子も敬遠する仕事。
だが、専好はふたつ返事で岐阜行きを快諾する。
実は織田信長という人物を知らずに引き受けたのだった。
尾張の小大名から瞬く間に天下人となった人物。
弟弟子から信長のことを聞いた専好は、信長に対する生け花のイメージを構築してゆく。
そうして、岐阜城にて巨大な生け花が完成する。
昇り龍をイメージし、曲がりくねった松の枝を大胆に生けた大砂物(おおすなもの)だ。
これまでに見たこともない、けったいな生け花に眉をひそめる武将たち。
だが、大胆なそれを見て信長(中井貴一)は感心する。
「見事なり!池坊!!」
信長公を唸らせたという噂は京の街じゅうに広まり、専好は広く知られるようになる。
時は移ろい、十数年後。
本能寺の変によって信長公は天下統一目前に横死。
代わって天下を手中に収めたのは豊臣秀吉(市川猿之助)。
天下人となった秀吉は暴君と化し、傍若無人な振る舞いで部下や民衆を苦しめていた。
専好は先代亡きあと、家元を継ぐこととなった。
だが、出世や名誉にまったく興味のない専好は、
頂法寺のトップになったことによって、さまざまなお勤めが増え忙しくなり、
自由に好き勝手に花を生けられなくなってしまい、窮屈な思いをしていた。
あれだけ好きだった生け花も楽しめなくなってしまい、苦行に感じる。
そんな専好を元気づけようと、幼馴染である吉右衛門(高橋克実)は、
「けったいな花を生けてくれ。」と依頼する。
久しぶりに、好きに生け花ができた専好は気が楽になる。
吉右衛門が、専好の生けた花を店の前に展示すると、
それを見た通りすがりの人物が立ち止まる。
「このお花を生けたお方は、もしや・・・?」
この立ち止まった人物、
かつて岐阜城で、専好の生けた花に驚き、感銘を受けた人物。
わび茶を確立させた茶道の第一人者、千利休(佐藤浩市)だった。
利休と再会した専好。
人の名や顔を覚えるのが苦手な専好は、利休のことはすっかり忘れていたものの、
茶室へと招かれ、利休のたてた茶をいただく。
利休の茶で込み上げてきた専好は、泣きながら悩みを吐露する。
それに対し、優しく的確なアドバイスをする利休。
専好は心晴れやかになり、以前のように生け花を楽しめるようになり、
かくして、利休と深い友情が芽生えるのだった。
秀吉の横暴が止まらない。
自分の意にそぐわぬ者は次々と排除していく。
豪華絢爛金の茶室を作り、豪華な茶器を用い、
金の衣裳で着飾り、賑やかで盛大な茶会を催す。
対して、わびを重んじる利休は、
質素な茶室で、静かに茶をたてる。
茶碗は決まってシックな黒。
利休が自分の好みに合わせないのが気に入らない秀吉は激高し、利休に蟄居を命じる。
秀吉に詫びるよう説得する専好だったが、利休は頑なに拒む。
最後まで自我をつらぬいた利休は、とうとう切腹を命じられる。
秀吉の待望だった世継が病死する。
利休の呪いだと人々が噂するなか、
秀吉を嘲笑した者、その疑いのある者、次々と捕えられては処刑されていく。
幼馴染だった吉右衛門も犠牲となってしまい、
専好を慕ってくれていた民衆たちが次々と捕えられては処刑されゆく。
年端のいかない少女までも犠牲となって、その首が晒される。
「仏なんか、ここに居らん・・・!」
絶望に打ちひしがれる専好だったが、非道な暴君に対し立ち上がる。
花で秀吉に戦を挑む!
自身の生けた花で、秀吉を諫めようというのだ。
死を覚悟して、花材を用意し弟子たちとともに、いざ聚楽第(じゅらくてい)へ!
はたして専好は、花で秀吉に打ち勝つことができるのか?!
面白かった。
ストーリーはシンプルなので、戦国時代の歴史モノを期待していると肩透かしを食らうかも。
千利休がちょっと清廉に描かれ過ぎに感じたけれど、
茶を極めた者と花を極めた者との友情を画く部分で、黒利休は必要ないか。
前田利家(佐々木蔵之介)や、石田三成(吉田栄作)なんかも登場するけれど、ほぼ空気。
生け花とわび茶がメインなので、そんな色濃く画かれていないのは正解。
花が好きな人にとってはたまらない。
加えて歴史が好きな人にはさらに、たまらない。
ということで、自分は十二分に楽しめた。
本家池坊家元監修で、劇中、全ての作品を手掛けていて、それらをじっくり鑑賞するのも楽しい。
また、茶道の方も三千家が監修。
華道,茶道ともに、日本の伝統をどっぷりと楽しめる。
さらには水墨画の絵師も登場するので、もう凄いことに。
日本文化をこれでもかというほどに堪能できる作品。
主演が狂言師、対峙する役が歌舞伎役者。
それぞれのエース的・革命的存在の役者が共演し、
この辺もとても贅沢で豪華。
正直、狂言も歌舞伎もよく解らないんだけど、
それをやってる方々がもの凄いってことだけは、はっきりと判る。
これに佐藤浩市が加わり、もう至れり尽くせり。
野村萬斎は、いつもの力みが和らいでいるように感じた。
ここにきて、だいぶ映画慣れしてきた?
狂言師ならではのオーバーさは健在なので、期待は裏切らない。
市川猿之助秀吉の暴君っぷりが凄い。
超高速!参勤交代では温厚で理解ある将軍吉宗を演じていたのに、それと正反対の役だ。
ワンシーンのみだったが、中井貴一の信長も強烈なインパクトだった。
鼻がデカいから信長が似合う。
河原で倒れていたところを専好に助けられる謎の少女、れん役の森川葵ちゃん。
実は有名な絵師の娘という役で、墨だらけになりながら一心不乱に絵を描く。
これまでも何作か彼女が出演する映画を観たが、
髪型のせいか役柄のせいか?
今回のれん役がいちばん幼く見えた。
童顔でかわいい子だ。
専好の弟弟子、池坊専武を演じた和田正人。
おそらく初めて見た役者さん。
天真爛漫な専好に振り回されて苦労する、しっかり者の役を演じていた。
これまた童顔で、この俳優さんポスト伊藤淳史だ!なんて思っていたら、
すでに40手前で、伊藤淳史よりも年上だった!
すげえ、とっつぁん坊やだな!
秀吉をサル呼ばわりとしたとして、さらし首にされてしまう少女役に伊東蒼ちゃん。
専好を慕う庶民のひとりとして、マスコットみたいな感じで序盤からちょくちょく登場していたが、
まさか終盤で残酷な目に遭うなんて、誰が想像したろうか・・・。
湯を沸かすほどの熱い愛でも印象に残る子役だった。
名前は出て来なかったが、顔を見てすぐに思い出した。
いい女優さんになって欲しい。
花の仕事を始めたばかりの頃に、生け花の基本くらい知っておこうと思って買った本。
何度も言っているけれど、花が好きな人には見て欲しい作品。
とりわけ、生け花を嗜んでいるひとや興味のある方はなおさら。
季節の花木がたくさん登場し、その生けられ方を見ているだけで楽しめる。
同じく花が題材の映画だったのに、肝心のそれがほとんど画かれていなかった、
フラワーショウ!って、いったい何だったんだろう?って思うくらい。
逆に花に興味がない人には、ちょっと厳しいかもしれない。
その点、フラワーショウ!はラブストーリーやサクセスストーリーが好きならば、
たいして花に興味がないひとでも楽しめる作品ではあったな。
それにしても観客、見事にシニア層ばかり!
・・・と思ったら、自分の前の列に小学生と中学生くらいの二人の男の子を連れた父親とおぼしき男性が。
ちょ・・・こんなん子どもに観せて楽しめるとでも?
もしかしたら子どもに生け花習わせているような上流階級の家庭かしら?
この父親も師範代とかの免許持ってるような人物かもしれんぞ!
男の子、二人とも丸坊主でメガネ・・・もしや坊さんの子?
いや、父親らしき男は髪の毛、ボッサボサやな。
単に歴史の勉強にと連れて来た?
ううむ・・・判らん。
この映画観て触発されたわけじゃないが、帰りに久しぶりに切花買って生けた花。
きれいなショウブとシモツケが売っていたのでつい。
まあ、生け花じゃなくてただの投げ入れなんですけどね。
観終わって売店へ直行。
いつものようにパンフレットを購入しようと思ったら、
「すみません完売しておりまして・・・。」と、申し訳なさそうに言うスタッフ。
観に行ったのは公開翌日の朝一上映。
売り切れだと!?
たった一日でか!?
ジャニタレ主演やAKBなどアイドル主演のものならば解らないでもないが・・・。
うーん残念。
再入荷するかもしれんから、公開している間は劇場に寄ったら売店をチェックすることにしよう。
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