先日の休みに映画を観に行った。
杏 主演のコメディ、"オケ老人!"だ。
原作は荒木源氏の同タイトルの小説。
近年活躍めざましい杏の、意外にも映画初主演作品。
キャッチコピーは、"世界最高齢!!(たぶん)のオーケストラにまさかの喝采!?"
わりと頻繁に音楽を題材にした映画が公開される。
オーケストラものだと、昨年公開された松阪桃李 主演のマエストロ!が記憶に新しい。
音楽は好きなので、こういう映画は大抵観てしまう。
今回のこの作品も、老人×オーケストラってことで解りやすいコメディ。
落ちこぼれ×オーケストラのマエストロ!よりも、ありえない設定。
これは面白いに違いない。
予告編を観て、ますます期待が膨らむ。
これは、上野樹里 主演のスゥイングガールズを越えるかもしれない。
期待大で鑑賞に臨んだ。
劇場に入ると、観客はシニアばかり。
もしかして自分が一番若い!?
このタイトル、どう考えても、"ボケ老人"とかけてるんだぜ?
「年寄りをバカにして、けしからん!」って感じで、
そういう世代からは敬遠されるだろうと思ったのだけど、逆に興味を持たれているのか?
綾小路きみまろの漫談のようなものなのかな?
梅が岡高校へ数学教師として赴任した千鶴(杏)。
地元、梅が岡のオーケストラコンサートに感動し、
学生時代にやっていたバイオリンを再び始めたくなる。
さっそく帰宅して、さっきのオーケストラを検索する。
この土地に越して来たばかりで、その楽団の名前が判らなかったが、
「梅が岡」「交響楽団」で検索すると、すぐにサイトが見つかった。
しかも「楽団員募集中」の文章をみつけ、さっそく記載されていた代表者の番号に電話。
その電話で、すんなりと入団させてもらえた!
長くしまいこんでいたバイオリンを引っぱり出してチューニング。
翌日、そのバイオリンを引っ提げて、意気揚々と練習場所である公民館へと向かう。
緊張して梅が岡交響楽団のメンバーを待つ千鶴。
ところが、そこへやって来るのは・・・
ぺちゃくちゃしゃべりながら入ってきては、
楽器を脇に置き、テーブルに手製の漬け物を広げて食べ始めるおばあさんたち。
歯を食いしばり、息を切らしながら必死にチェロを抱えてくるおじいさん、
鼻にチューブを通し、酸素ボンベのカートを引きながら、トランペットを持ってやってくる、おじいさん・・・。
楽器を手に公民館に集まってくるのは、お年寄りばかり・・・!?
昨日みた素晴らしいオーケストラの奏者達とは思えない。
もしや時間と場所を間違えた?
公民館の使用予定表を確認するが・・・梅が岡交響楽団と記載されていて間違いない。
何がどうなっているのか?、千鶴が混乱していると、ハゲ頭の老人が千鶴に近寄って来た。
昨日、千鶴の電話を受けた楽団のリーダー、野々村(笹野高史)だった。
ここで昨日のコンサートのことなどを訊くも、どうも話が噛み合わない。
そうして、昨日のオーケストラは、"梅が岡フィルハーモニー"という別の楽団で、
梅が岡交響楽団は、この老人ばかりのアマチュア・オーケストラだと判明・・・。
間違えて老人ばかりのオーケストラのサイトを開き、問い合わせて入団してしまった。
皆に歓迎されてしまい、どうにも間違えたとは言いだせない千鶴。
いざ練習に参加してみれば、なんともひどい演奏。
楽譜を見ない,指揮者も見ない,音程もリズムもバラバラ・・・。
まともに演奏ができていない。
しかも体力が続かず、曲の最後まで演奏が続かない!
そして練習が終われば、メンバーのクラさん(左とん平)の店で打ち上げ。
演奏の練習よりも、打ち上げに重点を置いているメンバーにげんなりする千鶴。
意を決して退団しようとしたのだが、野々村が持病の心臓発作で倒れてしまう。
千鶴は野々村に「梅響を頼む。」と指揮棒を手渡され、自身の後任を頼まれる。
高校の教え子で野々村の孫娘、和音(黒島結菜)にも頼まれ、
仕方なく梅響に留まり、指揮をやることに。
まずはメンバーのひどい演奏を改善させたい。
千鶴なりに、各メンバーの指導を始めるも、思うように上達してくれない。
何よりもメンバーに集中力もやる気も真面目さもない。
とうとう体を壊してしまい、匙を投げかける千鶴。
そんなとき、梅が岡フィルハーモニーが、
メンバー補充のため、バイオリン奏者を募集していると知る。
しかも、千鶴が憧れていた、世界一といわれるマエストロ、
フィリップ・ロンバール(フィリップ・エマール)が梅フィルのコンサートで指揮することが決定!
本来、自分が入団したかった憧れのオーケストラ、梅フィル。
もし入団できれば、あこがれのロンバールの指揮で演奏できる!
悩んだ末に、大枚をはたいて防音室を購入し、
入団オーディションの日に向けて、猛練習をはじめる。
その間、掛け持ちで日曜日には、公民館で梅響の練習にも参加していた。
梅響と梅フィルには因縁の関係があった。
梅響のリーダー、野々村と梅フィルの支配人、大沢(光石研)は犬猿の仲。
かつて梅響に所属していた大沢、演奏の上手い者たちを率いて離脱。
新たに梅フィルを立ち上げて、今やプロのオーケストラに。
しかも、大型家電チェーン店を経営する大沢。
いっぽう、客のほとんど居ない、さびれた家電修理店を営む野々村。
大沢は野々村の土地を買い上げて、より経営を大きくしようとしていた。
見事、梅フィルに入団できた千鶴。
しかし・・・梅フィルのレベルは高く、練習は想像以上に厳しく過酷なものだった。
千鶴は付いて行くことができず、とうとう退団させられてしまう。
あこがれのロンバールの指揮で演奏するという夢が潰えてしまった・・・。
けっきょく自分には音楽は無理だった・・・。
過去の夢を再び叶えようと思っていたのに、また挫折してしまった。
野々村の元を訪れ、梅響も辞めると伝える千鶴。
ところが、そこへ、あのロンバールがやって来た!?
いろいろあって、再び梅響でタクトを振るう千鶴。
メンバーも増えて、皆、練習も熱心にやるようになった。
ある日の打ち上げのとき、千鶴がメンバーに提案する。
「梅響で演奏会をやりましょう!」
喜びに沸くメンバー達。
ドへたくそで、めちゃくちゃだった梅が岡交響楽団の演奏。
それが、コンサートを開けるようになるまでに上達できるのか!?
コンサートへ向けて、梅響のさらなる練習がはじまる---。
なかなか面白かった。
マエストロ!よりも面白かった。
ありがちなネタなんだけど、焦点が老人だけに絞られておらず、
いろんな要素が絡み合っているので意外にも楽しめた。
これまた伏線の描き方が巧かった。
劇場内であちこちから、笑い声や吹き出す声が起こっていた。
シニアでも笑えるのね。
いやむしろ、シニアの方が"あるある”で笑えるのかもしれない。
杏はいいね!
こういう千鶴のような、ひたむきな役がすごく合う。
仕事に恋に夢に一生懸命、こんな女の子、ぜったいに応援したくなる。
あと、髪がボサボサなのは、原作でそういうキャラ設定なのかな?
なんか恋愛経験なさそうで、喪女キャラっぽかったけれど、
杏のルックスでそれはないなと・・・。
ちくしょう、東出昌大め!
いや、東出よりも許せないのは、オードリーの若林。
老人のみなさんも、それぞれいい味出していた。
左とん平さんは、子供の頃に観ていた、西遊記の猪八戒役で印象に残っていた。
あれ、途中から西田敏行に変わったんだよな。
・・・と思ったら逆で、西田敏行から左とん平に変わっていた。
小さい頃の記憶って本当に曖昧だわ。
小松政夫さん,石倉三郎さん,藤田弓子さんら、
アクの強い俳優さんらが、オケ老人の主要メンバーを彩る。
森下能幸さんの演じる、ラバウルさんが衝撃。
あんな酸素ボンベ携行している人がトランペットなんて演奏できるの?
そのニックネームは南方へ出征してたってことなのかしら?
ここら辺の掘り下げた部分は原作の小説じゃなきゃ判らないな。
そして野々村役の笹野高史さん。
いぶし銀の演技で、グイグイ引き込んでくれる。
デジタル家電に弱く、古い家電にめっぽう強い。
デジカメ画像を誤って消去してしまい、孫の和音に怒られるシーンや、
病室での杏とのやり取りは最高だった。
あのシーン、枯葉が散って・・・オチが読めていたのに笑えた。
その孫の和音役の黒島結菜ちゃん。
なかなか可愛い子、媚びない感じの可愛さでいい。
和音のキャラクターも相まって、好感が持てた。
この子、どっかで見たことあるような気がするんだけど、思い出せない。
千鶴が想いを寄せる、同僚の坂下役に、坂口健太郎。
俺物語で、主人公・剛田猛男の親友、砂川を演じていた俳優さん。
昨年、高校生を演じていたのに、今度は高校教師役。
クールだった砂川とは真逆の、ちょっと中性的なスイーツ男子を演じてくれる。
このひと、前の連続ドラマ小説、とと姉ちゃんでも、内気な青年を演じていたっけ。
なかなかのカメレオン俳優っぷり。
海街diaryにも出演したことになっているけれど、どこで出てたっけ?
自分の大好きなコメディの群像劇。
音楽好きならば観て損なし。
実際にアマチュア・オーケストラに所属している方が観て、
"アマオケあるある”が、たくさんあったというので、
映画好きで音楽を趣味でやっている方は是非。
・・・というか、そういう方たちは自分なんぞが薦める前に鑑賞してるわな。
千鶴の袖裾が短くて、ちんちくりんな燕尾服姿も必見!
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