先日の休みに映画を観た。
菊池亜希子 主演のドラマ、"海のふた"だ。
原作は吉本ばなな 氏の同タイトルの連載小説。
監督は安達祐美のフルヌードで話題になった、"花宵道中"の豊島圭介 氏。
キャッチコピーは、"ここは、いつも心が帰ってくる場所―"。
会員登録している映画館の割引クーポンを所有していた。
通常1,800円の鑑賞料金が、1,200円になるクーポン。
これの有効期限があと2日に迫っていた。
観たい映画けっこうあったので、期限が切れる前に使おう!
そう思い立って、その映画館のサイトで上映スケジュールを確認する。
そこで目に付いたのが、この海のふた。
あらすじだけ読むと、なんだかのんびりした感じのドラマっぽい。
しかも かき氷がテーマか・・・食を題材にした映画は嫌いじゃない。
数年前に観た映画、中谷美紀主演、"食堂かたつむり"みたいなのを想像する。
そして調べてみると、この海のふたという映画、
当初 関東地方だけで公開されていたものが、順次地方公開されているマイナー作品。
関東では既に上映終了してしまっており、それ以外はまだ未公開。
で、なぜか福岡のみ上映中で、上映劇場も自分が行く予定だった劇場のみ。
これは・・・なんだかレアな映画だ、これにしよう!!
そうして急に思い立ち、予告編もチラシも何も見ないまま、鑑賞に臨んだ。
・・・というか主演のひと知らない。
メインキャスティングのひとたちも知らない・・・。
東京で大学を出て、舞台美術の仕事に就いていた まり(菊池亜希子)。
ある夏の日、都会の喧騒に疲れ実家のある伊豆へと戻って来る。
海辺の懐かしい街で、まりは かき氷屋をはじめることにする。
倉庫代わりに使われていた古い民家を借り、
自分がデザインしたお店を作り上げていく。
そんなとき、母の親友の大学生の娘さんを預かることになる。
その娘さんの名前は、はじめ(三根梓)。
顔に大きなやけどのアザがある はじめちゃん。
同居していた大好きなおばあちゃんが亡くなってしまい、
親や叔母らは遺産相続で揉め、住んでいた家が相続のため売却されることに。
居場所を失ってしまったため、まりの実家に身を寄せることになった。
心にも体にも深い傷を負ったはじめちゃん。
発作的に泣きじゃくったり、いつも携帯をチェックしていたり、
口数も少なく、なかなか心を開いてくれない。
まりは彼女への対応に苦慮しつつ、お店のオープンに向けて着々と準備を進めていく。
かき氷のシロップは糖蜜とみかんの二種類だけ。
それにエスプレッソコーヒー、メニューはたったの三種類。
「私が良いと思ったものしか出さない!」
そんな頑ななポリシーを持って、まりはお店を作る。
お店オープンの日、まりは はじめちゃんに かき氷を食べさせる。
サトウキビを剥いて砕いて煮詰めて、手間暇かけて作った、糖蜜のかき氷。
「初めて食べるはずなのに懐かしい味がする・・・!」
徐々に心を開いてきた はじめちゃん。
色々と話してくれて、お店を手伝いはじめる。
まりの両親、そして幼馴染の元カレのマサル(小林ユウイチ)らと触れ合いながら、
まりと一緒に、海辺ののどかな街で、かき氷屋をやりながら、
心と体に傷を負いながらも、実は芯が強くてしっかりしていたはじめちゃん。
だんだんと自分のやりたいこと、考えているこを形にしていく。
逆に強く頑なな意志で地元に戻って、お店を始めたつもりが、
本当は心の奥底に迷いや戸惑いがあって、自分をだましだまし模索していたまり。
赤の他人だったふたりの女性。
かき氷屋をとおして、まるで仲の良い従姉妹同士のようになり、
お互いが解り合い、そしてやってくる別れの日。
そんなふたりのひと夏の物語。
・・・・。
つまんなかった。
最初らへん眠くなった。
映画で眠くなったのは初めての経験だった。
ひとつひとつのシーンが冗長というか、えらく長い。
こういった間が何かを訴えようとしているのかもしれないが、自分にはじれったく感じた。
でもってストーリーが淡々とし過ぎて、本当につまらない。
後半に動きがあるのだけど、それがどれも"転”のまでで"結”に行かない。
まさか・・・これで終わりじゃないよね?
ええ!?本当に終わりやがった!!
そんな感じ。
海の情景も南国の美しいのや瀬戸内など島嶼部ののどかな雰囲気とかなく、
伊豆のひとには悪いけれど、ありふれた海水浴場の、ちょっとよどんだ感じの海の景色。
「生き物が減った。」とか、サンゴの死骸とか、そういう描写があったので、
ただただ美しいだけの海ではなく、そのままのリアルな海を映していたのかも。
ひょっとしたら、吉本ばなな氏の作品はこういうものなのだろうか?
恥ずかしながら、このベストセラー作家の作品を読んだことがない。
当然この原作も知らないし、これは原作を読んでから評価すべきと、
本屋へ行ってみたが、どこにも置いていない。
ネットでも在庫なしで入荷後連絡とかになっている。
おいおい・・映画の原作を公開時に増刷していないとかどんだけ・・・。
ただ、つまらなかったというのが率直な感想だけど、観て良かったとも感じている。
なんというか、観ている最中も観た後も、色々と考えさせられる。
まりや、はじめちゃん、そしてまりの元カレのマサルなど、
それぞれの主要人物の境遇や考えなどを自身と重ねたとき、
今俺なにやってんだろ?
今までなにしてきたんだろ?
これから先どうすりゃいいんだろ?
そんなことが堂々巡りで、ずっと考えさせられる。
コメディタッチの面白いドラマでもなく、
ドキドキする恋愛ドラマでもなく、ハラハラするサスペンスドラマでもなく、
お涙ちょうだいの泣けるドラマでもない。
淡々としたふたりの女性の短い期間の人生ドラマ。
ただこのふたりにとっては、人生の大きな転機にもなっている。
観て率直な感想を言うような作品ではなく、己で色々と考えるのが正しいのかもしれない。
とくに"結"がないのは、まりもはじめちゃんも、
これからそれぞれの道へ向かって進むのだから、それでいいのだろう。
ラストシーン、カウンターに飾られたぬいぐるみと、
かき氷のシロップにイチゴが追加されていたのが、その後のふたりを現していたのかもしれない。
冒頭にも書いたけれど、主演のまり役の俳優さん、
菊池亜希子ちゃん・・・名前もなにも知らないひとだった。
ただ、観ている最中、どっかで見たことあるよな~とずっと思っていた。
ファッションモデルもやってるそうで、
ドラマや映画のみならずCMにも数多く出演しているらしい。
おそらくそういうので見た記憶があるのだろう。
モデルなので長身で、手足も長くてスタイルがいい。
ちょっと猫背気味なのがネックだが、逆にそれがチャームポイントに見える。
いくつか著書があり、ベストセラーだとか。
はじめちゃん役の三根梓ちゃん。
これまた知らない若手女優さん。
モデルの仕事もやってるらしく、かなり端正な顔立ちのべっぴんさん。
顔に大きなやけどアザのある、心と体に傷を負っているという難しい役を初々しく演じていた。
後半は心開いて明るく前向きになるはじめちゃん。
キャラクターの雰囲気が180°異なる、その移ろいも見所。
マサル役の小林ユウキチ。
このひとも、どっかで見たことあるよな~名前も見た記憶が・・・。
と、思っていたら、出演作品にNHK大河ドラマ軍師官兵衛とあってピンときた。
黒田二十四騎のひとり、有岡城牢番の息子、黒田一成 役だった俳優さんだ!
松坂桃李 演じる黒田長政に常に寄り添っていたな。
なるほど、そうそうこの顔だった!
実は主要キャストで唯一知ってるひとが居た!
まりのお父さん役だった、鈴木慶一 氏。
ちょっとボケてる?ような、のんびりとしたお父さん役を演じていた。
本業は俳優ではなく、実は音楽家。
若い頃はご自身もバンド活動をなさっていたようだが、
映画からCMから、数多くの作曲を務める。
そして鈴木慶一氏といえば、自分はやっぱりこれ、
大好きな任天堂のファミコンRPG、MOTHERの音楽!
心に染みいる楽曲の数々は何度聴いてもたまらない。
続編のスーパーファミコンのMOTHER2も担当。
音だけのゲームとして話題になった、セガサターンの風のリグレットも手掛けた巨匠だ。
映画を娯楽と捉えると、どうしてもこういったドラマは"つまらない"ものになる。
文化作品として捉えたら、こういう作品でちょっと哲学的になって、
自身の人生など、思わず考え耽ってしまう。
面白くなくても、なんだか観てよかったと思える不思議な作品だった。
観る時期がもうちょっと早ければ、観た後にかき氷食べてたかもしれない。
もう真夏の暑さが通り過ぎたこの時期、そんなかき氷食べたいと思わない。
作中でまりが、「冬に食べるかき氷、美味しいんだよ!」と言う台詞があったが、
確かに寒冷地では暖房利かせた部屋でアイスを食べるというのを聞いたことがあるけれど、
やっぱ夏限定だよな~。
かき氷を作る光景も丁寧に描かれていて、シズル感があってよかったのだけどね。
かき氷監修に石附浩太郎 氏。
あの巷で話題のボッタ・・・いや冬でも行列の大人気かき氷店の店主さんだ。
いやしかし・・かき氷に500円も出すかね?
市販のシロップではなく、あの丁寧に作ったシロップを使い、
どっかから取り寄せた天然氷とかで作ったのなら、そんのくらいするのかもしれないが、
フルーツにアイスにクリームにチョコレートにクッキーに・・・
色んなスイーツがふんだんに盛られたパフェと比べてみたら、
やっぱりたかが氷にそんな・・・って思うんだよな。
まあ海の家やらテーマパークで売られている、水道水凍らせただけのやつに、
合成甘味料と着色料と香料だけのシロップをぶっかけた、かき氷が500円するのと比べればね。
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