スキージャンプ女子のワールドカップ・クロアチア大会で高梨沙羅が連続二位に敗戦する。クロアチアのジャンプ台はノーマルヒルジャンプ台なのだが、助走速度が多くの選手が90Km/hとなる「滑る」台である。その助走速度への対応に苦心していたようなのだ。
宮の森で行なわれたワールドカップでは、助走速度が85km/h前後だった。低速であるが故に、空中姿勢が素晴らしい高梨が飛びすぎと思えるほどのジャンプを披露したわけだが、クロアチアのような高速助走路のジャンプ台では、技術以上に体力がモノを言ったわけだ。勝利した選手は、二戦ともダニエラ・イラシュコが勝利する。ベテランで飛び出し時に力を発揮するパワータイプの大柄なイラシュコに比べ、踏み切りのタイミングと空中姿勢で飛距離を伸ばす高梨には、ジャンプ台も合わなかったという事だろう。助走速度が遅くても、おなじような距離を飛べる高梨と、助走速度がそのまま飛距離に直結する選手との差なのだろう。
特に、日本のジャンプ台は比較的助走速度が抑えられるため、踏切のタイミングがまったく違ってくる。半足の踏切の差が、大きな差となるだけの助走速度が与えられるわけだ。
むしろ、コーチが助走距離を短くするリクエストを出した方が、高梨には良かったのかも知れない。飛ぶ技術という点では、高梨は卓越っしている。卓越した技術で飛ぶだけに、あまりに良好すぎる状態での大会、特に技術的にはまだまだだが、パワーと体格で飛ぶ選手が有利となる助走速度が速すぎるジャンプ台は、明らかに高梨には不利になる。
この速度の違いが、踏切タイミングの微妙な差を生む。タイミングの良さと空中姿勢の素晴らしさで距離を伸ばす技術系選手は、どうしても助走の踏切速度が高まれば高まるほど、踏切タイミングのズレが出てしまう。
雪が少ないため、クロアチア大会は予定のジャンプ台ではできなかった。直前で変更されたわけで、常にベストのジャンプを行なうタイミングの習得時間が高梨には足りなかったのだろう。地元のクロアチアのランクが低い選手が上位に入っている事からも、技術の問題以上に、ジャンプ台に高梨がアジャスト出来なかったのが、この二戦連続の敗戦(とは言っても二位であり、ランキングは未だにトップなのだが)につながったのだろう。ソチの台は経験済みであるから、気持ちを切り替えて、次週の試合も、そしてオリンピックでも良い結果が出ると信じている。弱点とは言っても、慣れることで克服できるものだ。
敗戦の連続で高梨の顔からは笑顔が消えていたのだが、もう台が合わなかっただけ、と切り替えて今後の試合もオリンピックへの挑んで欲しいものだ。頑張らなくて良い。ベストを尽くせば結果は自ずと付いてくる。大丈夫大丈夫。