道の駅熊野きのくにを発して有井より国道三百十一号線に入れり
この道 細くして山中をくねくねと曲がりつつ延びてをれば
対向車あれば交互に道を譲りつつの走行なり
新田隧道を抜ければ空一面に雲あるも 神明神滝隧道を抜ければ青空の見へるもをかし 風伝隧道を抜けて県道四十号線に入ればさらに道細くなりぬ
坂道をくねくねと登り行けば
午後三時十分
左手に視界の大きく広がりゐたるに車を停めたり
見渡せば・・・
をを 何たる美しさなる哉
言葉もなく ただただ 見入りぬ
是 丸山千枚田なり
丸山千枚田は是 我が國最大の棚田ときけり
量り難き労力を注ぎきて幾百年なる哉
そのかみは二千四百枚が造成されたるとふも
その存在すら危ぶまるる状況に陥れば
平成六年 紀和町は条例を制定したるとふ
千枚田の保護に一層努力せんことを宣言するや
田のオーナー制度を実施するとなん努めれば
その数千三百枚余まで復田が図られたるとふ
いとすばらくして力強きこと限りなし
また
一枚の田といへど減らすを許さじ
とふ強き決意を合ひ言葉として
平成十一年には丸山千枚田を守る会を結成すれば
我が國各地より会員の申し出あるときくもうれし
脈々とかけてこられし労力の神々しさを見る千枚田 丹人
もと来た細き坂道を下りて
再び国道三百十一号線を走り行けば
奈良県十津川村に入りたり
予が武路愚の友なる酒徒善人殿の住まひたる県なれば
心温まるおもひなり
国道百六十九号線に入れば和歌山県なり
道幅広がりて肩の力もやはらかとなりぬ
宮井大橋を越へれば熊野川に沿ひて国道百六十九号線を西へと向かふ
熊野川のゆるやかにして瑠璃色の流れを右に見下ろしつつ走れば
午後四時十分
湯の峯温泉に到着す
宿は湯の名を冠したる「湯の峯荘」なり

湯の峯温泉は是
湯の谷川の天然の岩のくぼみより
九十二度なる重曹硫化水素泉が噴出したるとふ
白濁した湯の色が日に七変化すといわれる霊験あらたかなる温泉なりて
常州に縁深き小栗判官の蘇生の地なると知れば
嗚呼
予のこの旅の主題なる「再生」に重なるものあれば
心の奥底に熱きものの湧き起こり行くを感ず
いとあらまほしきことなり
宿に荷を移して給はりたる熱き茶にて一服すれば
午後四時三十分
温泉の中心に位置する共同浴場へと
歩をすすめたり


七百五十円にて入浴券を購入すれば
まずは
名高きつぼ湯(画像左)に入らん
先客あるに待つこと三十分
岩が間に三人が入れば一杯となれる狭きつぼ湯に
身を浸したる
をを
よき湯なり
ひきつづきて
共同浴場の薬湯(画像右)に入りぬ
薬湯とは是 高温の源泉を適温に冷ましたる湯ときける
この湯もまた その匂ひとともに薬効の身に沁みいくとなんおもへる
宿に戻るは午後六時となりぬ
飲むことかなふ湯なれば
温泉にてつくりたる料理を堪能しつつ
むまき酒を飲めば
湯の峯の夜は静かに更けにけり
画像一:丸山千枚田 2007.7.23 撮影
画像二:熊野本宮観光協会ホームページより
画像三:s_sile氏武露倶「日帰り温泉の旅」より




↑現在50位前後なり↑現在茨城3位なり
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