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当代随一のSF作家としてその名を轟かせたグレッグ・イーガンも、最近では“SF界の雄”なんてキャッチを付けられたりしている。50も半ばを過ぎるともはや彼の長編に手を出す気力も薄れ気味だが、そんな時こそ読みたくなるのがイーガン短編集。重くもなくかといって軽すぎない丁度いい読み応えの計6編が本書には収められている。
『七色覚』
ジャンク・アプリの影響で脳の色覚が変化。超視覚を得た主人公の孤独と救い。
『不気味の谷』
売れっ子シナリオ・ライターのクローンが、宿主の秘密を探るミステリー。イーガン先生『ブレイキング・バッド』なんてこっそりTVで観てるんだ。
『ビット・プレイヤー』
忘れ去られたオンライン・ゲームの端役たちが、仮想現実世界のリアル度を探る冒険譚。
『失われた大陸』
難民問題に正面から向き合ったイーガンの異色作。でもこれってSFかぁ?
『鰐乗り』
長編小説『白熱光』にも登場する融合世界のクローンたちが、周囲とは隔絶された孤高世界にファースト・コンタクトをとろうとするが、あえなく失敗。それはグローバリズムを拒絶する未開地域のメタファーでもあり、(タイトルつながりで)『クロコダイル・ダンディ』のアボリジニを想起させるが、その存在は多分に『スペース・オデッセイ』のモノリス的である。
『孤児惑星』
ついに融合世界のクローン・カップルが、孤児惑星タルーラの住人たちとコンタクト成功。ジオロジックな科学知識をベースに解明される惑星の成り立ちは、わが地球の遠い未来予想図かも。どこの世界でも、神話を頑なに信じる人々は、変化(真実)を受け入れることができず滅びるしかないのだろうか。
相変わらず意味不明な説明パートにはグッタリさせられるが、最後2編では往年のイーガン節を十分に堪能できるだろう。全編を流れる通奏低音をあえて切り出すとすれば、“探求者の孤独”とでも表現すればいいのだろうか。真実を探求しようとする者は、いつの時代でもどこの世界でも世間一般には受け入れられないもの。それは作家グレッグ・イーガン自身の投影なのかもね。
ビット・プレイヤー
著者 グレッグ・イーガン(早川文庫SF)
オススメ度
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