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JFK暗殺から国葬を経て、ジャッキーことジャクリーン・ケネディがホワイトハウスを退去するまでの約1週間を描いた伝記映画。暗殺当日にジャッキーが着ていたピンクのシャネル・スーツをまんまナタリー・ポートマンが身につけていることから、ほぼ事実に基づいた映画だと思われる。
皆さんご存じのようにJFK暗殺の真犯人については諸説あるようで、大統領選挙の際の不正行為やカストロ暗殺計画に手を貸したといわれるマフィア犯人説、大統領との直接コンタクトをとることが許されず中枢から遠ざけられたCIA犯人説、キューバのソ連接近を妨害した米国に報復しようとした共産勢力犯人説…そのほとんどに、実弟で当時司法長官に就いていたロバートも絡んでいたと見られており、その後兄貴同様何者かに暗殺されている。
兄弟そろって女癖が悪かったのも社交界では有名であり、次男パトリックが生後3日で亡くなった時も浮気相手の家から憔悴の妻の元に戻らなかったほど。マフィアと昵懇だったフランク・シナトラの引き合わせで知り合ったといわれるマリリン・モンローについては、兄弟揃って関係をもったというゲスの極み。そんなケネディ家にまつわる黒い噂を、いいとこのお嬢であるジャッキーがどの程度把握していたのだろうか、はなはだ疑問である。
チェーン・スモークに精神安定剤、ウォッカの力まで借りて何とか体面だけは保とうと、巨額の費用をかけホワイトハウス修復にのり出したジャッキーだが、完全に冷えきった夫婦仲の修復にはいたらない。ダラス事件後の記者インタビューと神父への懺悔を間に交えながら、夫の暗殺によりジャッキーが不安におののきホワイトハウスをウロチョロするシーンがほとんどのこの映画で、監督が一体何を伝えたかったのかが最後までどうもはっきりしないのである。
さて退去当日、ホワイトハウスを名残惜しそうに車中から見つめるジャッキー。が、アーサー王に結局はなれなかったJFKのように、アンティーク家具や調度品で飾りたてたホワイトハウスも、王宮キャメロットのように歴史に刻まれることはけっしてないだろう。血塗られたケネディ家になにも知らずに嫁いできた世間知らずのお嬢さんが、夫のいない寂しさを紛らすために始めた道楽として人々の記憶に残ることはあったとしても。
ジャッキー/ファースト・レディ最後の使命
監督 パブロ・ラライン(2016年)
[オススメ度
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