ネタばれせずにCINEるか

かなり悪いオヤジの超独断映画批評。ネタばれごめんの毒舌映画評論ですのでお取扱いにはご注意願います。

華麗なる晩餐

2022年08月29日 | ネタバレなし批評篇


上映時間わずか16分の短編映画、前回ご紹介した『プラットフォーム』なるスペイン産SF映画の元ネタだそうだ。やんごとなき上流階級の紳士淑女の皆さまが、給仕される豪華料理を取り憑かれたかのようにひたすら食いまくる一風変わった作品だ。

ありとあらゆる動物の料理を、フォークとナイフをカチヤカチヤさせながら食いまくるシーンがひたすら続くのだが、監督がドゥニ・ヴィルヌーブだけあってかなり含みがありそうだ。紳士淑女の皆さんがお召しになっている高級衣装はなぜか埃で真っ白、空になった皿あらばワンコ蕎麦よろしく料理を盛り付けていく給仕たちの早業も面白い。

日本の活け作りを思わせるグロテスクな盛りつけがされた肉、肉、肉のオンパレード、寺門ジモンが泣いて喜びそうなメニューばかり。ベジタリアンのあなたなら、思わず吐き気をもよおすにちがいないアブラッコそうな料理がひたすらテーブルに並べられていくのである。

料理を食す客の数は11人、なぜかキリストの弟子の数と同じなのである。鋭い方ならもうおわかりかと思われるが、つまるところこの短編映画“最後の晩餐”のパロディになっているのだ。映画の原題は、劇中唯一の給仕長の台詞『Next floor』。意地悪く訳せば『下に参ります』といったところだろうか。

食べるほどに天国からどんどん遠ざかっていく人々の罪名はまさに“飽食”。日本の大食いTV番組を揶揄したわけでもなかろうが、“Next”にいくたびに品性を失い隣席の料理にまで手を出す“獣”になり果ててしまった人間たち。もしかしたら次の大皿にもられるのは給仕長と目があったあなたかもしれない。

華麗なる晩餐
監督 ドゥニ・ヴィルヌーブ(2008年)
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