「先生は喫煙防止教室を行っていらっしゃいますが、タバコを吸ったことがありますか?」
昨日行った喫煙防止教室で、中学生から質問されました。
実はこういった質問は初めてではなく、小学生からも時々聞かれます。
「幸いなことに、これまで一度も、1本も、吸ったことはありません」と答えました。
私が子供だった頃は、今よりもずっと多くの喫煙者が世の中にいましたし、社会の受動喫煙防止環境も全く整っておらず、学校での喫煙防止教育もきちんと行われていない時代でした。
ですから、喫煙者になってしまうリスクは、今の子供たちよりもずっと大きかったけれど・・・という意味が、「幸いなことに」という言葉には含まれています。
ではなぜ彼らは、私が喫煙したことがあるかどうか、ということが気になるのでしょうか?
ひょっとしたら、「喫煙経験者だからこそ、こんなにタバコについて詳しいのだろう」と思っているのかもしれません。
かつて覚せい剤や大麻などの薬物に依存した生活を送ったことのある人が、薬物乱用防止教育の講師として話をすることがあるのを知っています。
けれども、経験者でないと真実は語れない、とは限りません。
むしろ、特に依存性薬物については、経験したことがないほうが、客観的に分析ができて、教育や治療において有利であるという考え方があります。
以前から、大麻や覚せい剤の使用はやめていても、依然タバコを吸い続けている人が多いことが気になっています。
タバコは薬物乱用の入り口にあるもの、ゲートウェイドラッグとして認識されています。
タバコを吸い続けていると、他の依存性薬物の再使用のリスクが高くなるのではないかと心配です。
依存性薬物の使用を断ち切る治療は、タバコも含めて行うことが重要だと考えます。