きんえんSwitter

医者の心の目で日々を綴ります

災いをもってなんとか···と言いますでしょう

2021年09月19日 | CORONA
先日は、朝からワクチンの集団接種会場で仕事をしていました。
その日の接種人数は千人超。
接種ブースは4レーンありますが、1レーンあたりの人数も相当なものです。
問診票を見ながら、改めて必要事項を確認します。

多くの人に次から次へと同じ質問をしなければならず、喋り通しなので疲れますが、事務的、流れ作業的にならないよう、ちゃんと相手の顔をみながら話すようにしています。

こちらは座りっぱなしで、マスクも当然していますから、愛想よい印象を与えるかどうかは、声色や言葉遣い、喋り方がポイントになるでしょう。

振り返ってみると、ワクチン優先接種が開始された頃の高齢者の方々は、副反応に対する不安を訴える方はあまり多くなかったように感じます。
それよりも、家族の協力で予約が取れ、ワクチンが受けられることに安堵している、といった方々が大半で、問診時に感極まって泣いている車椅子のおじいさんもいらっしゃいました。


最近は、働き盛り世代の接種が進んでいます。
働き盛りというと健康的という印象を持つかもしれませんが、現実はそうではありません。

病院にこれまでかかったことがないとか、特にかかりつけ医もいないとかいう人は多く、解熱剤などの基本的な薬の飲み方も知らないのかもしれない、と思って話をする必要があります。

検診で高血圧や肝機能異常を指摘されても、そのまま放置している人も、詳しく話を聞けば相当数いるのではないでしょうか。
中には、いわゆる隠れ糖尿病の人もきっといるでしょうね。


詳細な事例報告がないのではっきりとしたことは言えませんが、第5波で、「基礎疾患がないのに死亡」という人のなかには、そういった背景がある方々が含まれている可能性は充分考えられます。


病気とは無縁で過ごしてきた「医療ナイーブ」な人で、SNSのヘビーユーザーが多い世代は、今回の新型コロナのワクチンについて、謝った情報を信じてしまったり、過度に怖がったりしてしまっている人の割合が多いかもしれません。

問診中は、時には「面白い柄のTシャツですね」とか、「そのカーディガンの色、とてもお似合いですね」とか、本当にそう思った時には、一言コメントしたりもします。
そうすると少しは緊張が解けて、スムーズに注射を受けていただけるのでは、と思うからです。

けれど、先日はちょっと失敗してしまいました。


1回目の接種のあと、3日も高い熱が続いたという60代の男性がいました。
「それは大変でしたねー」と、詳しく話を聞きました。

相手の方は最初からとてもくだけた雰囲気で話されていたので、こちらもそれにつられて同調したのがよくなかったんでしょう。
突然、「アンタの友達でもなんでもないのに、さっきからその言い方はなんだ‼  人をバカにしやがって!」と怒られてしまいました。

「大変失礼いたしました。バカになどしていません。申し訳ございませんでした」とすぐに謝って、とりあえず事なきを得ましたが、その後はとても気分が落ち込んでしまいました。

ですが、落ち込むだけではいけないので、なぜそうなってしまったのか、考えました。


3日も熱が出たことは、彼にとってはとてもつらい経験だったのです。
ですから、2回目の接種がとても不安だったのでしょう。
にもかかわらず、私があろうことか、明るく笑顔で対応していたので、深刻に受けとめてもらえていないと感じてしまったのかもしれません。


また、私が自分よりも年下のオンナであるということも、彼の怒りに十分影響した因子であることは、(長い経験上)容易に推察されます···



まあ、数多くの人と接すれば、時にはこういう災いにも遭遇するという点では、ウィルス感染と同じです。

皆様も、引き続き、くれぐれもお気をつけくださいませね。








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