きんえんSwitter

医者の心の目で日々を綴ります

医者とバーテンダーの共通点

2022年06月26日 | ヘルスリテラシー
私は飲酒の習慣はありませんが、大切な友人を伴ってお酒を飲むならこの店、と決めているバーはあります。

経験を積んだ良いバーテンダーは、たとえ初対面の客でも、その人の好みの酒を出すことができるのだそうです。
以前、有名なバーのバーテンダー氏がラジオで語っているのを聞いたことがあります。

客との会話や、相手の服装、髪型、持ち物などから類推するのだそうで、それがバーテンダーとしての愉しみでもあるらしいのです。

彼は、「良いバーテンダーの条件というのは、良い医者の条件としてもあてはまる。良い医者というのは、患者さんの話をじっくり聴いてから、きちんとその人にあった薬を考えて出すものだから」とも言っていて、その時運転しながらラジオを聞いていた私は、とたんに耳がダンボになりました。

たしかに、身近なところでは風邪薬などはそうです。
もともと風邪に特効薬などはありません。
一言で風邪といっても患者一人一人違うわけで、咳がひどいなら咳止めを、熱がつらいなら解熱剤をと、対症的に薬を処方します。

症状が出てどれくらいたっているか?
それまで飲んでいた薬があるか?
それまで服用した薬が効いたかどうか?
持病がないか?

こういった様々な情報も患者から聞き出し、熟考して、適切な薬を出しています。

「この人に任せて大丈夫かどうか迷ったら、ビールをまず頼んでみるのがよろしいでしょう。ビール瓶やグラスをぞんざいに扱うようならば、その人にカクテルを頼むのはやめておいたほうが賢明です。がさつな人間にはバーテンダーはつとまりません」

なるほど。
医者もがさつな人はダメです。

特に持病がなくても、遅くとも40歳を迎えたら、行きつけのバーよりも先に、頼りになる内科のかかりつけ医を、自宅か職場の近所にぜひ持つべきです。

信頼できる医者かどうかは、まず風邪をひいたときにかかってみて、その対応をみて判断するというのは良い方法だと思います。

「水割りひとつにしても、バーテンダーによって味が違います。左手にグラス、右手にマドラーを持ったとき、そのバーテンダーのオーラとか気とか、科学では説明できないような深いチカラのようなものが働くのだと思います」

その道を極めたプロというのは、最終的にはこれと同じようなことを言うような気がします。
極めれば極めるほど、非科学的な部分に触れるようになるのかもしれません。

私は科学のひとつである医学に携わる者として、科学に対しては肯定的な考えを持っているほうだと思います。
ですが、この世のすべての現象を科学で解明、説明できてしまったら、面白くないですし、もしそんなことになったら、世も末かも···

コロナ禍で、かのお気に入りのバーも、苦しい経営状況に陥っていたのではないかと思いますが、テイクアウトのお昼のお弁当を始めたり、どうにか頑張って今も営業を続けてくれているようなので、いつかまた行きたいなあと思っています。


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 夏野菜を食べよう | トップ | のど飴まだ? »
最新の画像もっと見る

ヘルスリテラシー」カテゴリの最新記事