2017年から「道後温泉本館」は、営業を継続しつつ改修工事が始まります。
今までの風情を感じるなら、2016年度までに行かれることをお勧めします。
いい日旅立ちになりますように。
2011年11月、熊本から赤い「九州横断特急」に乗り、阿蘇を超え別府へ向かいます。
こんこんと湧き出る「道後温泉」の湯に逢うため別府の港から旅立ちます。
別府駅前にある、おかしな格好した「油屋熊八(あぶらや くまはち)」の銅像。
「山は富士、海は瀬戸内、湯は別府」
というキャッチフレーズを考案した別府観光の生みの親です。
出身地は、宇和島出身
あれあれ、どこかで聞いた名前です。
西日暮里駅近くの「羽二重団子」のお店の資料を読んでいたら、
「別府温泉開拓者 杉乃井ホテル始祖 油屋熊八旧居跡」と書いてあるではありませんか。
この西日暮里の地から頑張ったんですね。熊八さん。
羽二重団子店で記されている資料を抜粋すると、
「明治40年頃、私どものお得意様の「油屋」さんが突如、夜逃げされ後日の相場に失敗したとのことでありました。
渡米したのち
やがて時は移り、昭和の初め、私ども4代目庄五郎が、風の便りで油屋さんが別府温泉で大成功したというので、九州旅行の途中立ち寄ったところ
東京を離れて以来各所を転々とし、遂に九州別府で「杉の井ホテル」を経営するに至ったとのこと。
私も戦後昭和50年ころ、別府に赴き、別府中央公園入口で出会った、よその団体のバスガイドさんの説明を聞いておりますと、
『この顕彰碑の主「油屋熊八」さんは、別府鉄道社長・別府観光バス社長などなど別府の要職を総て歴任する「別府開拓の主」でこざいます。』と伺いました。
この杉の井ホテルの現在は熊八さんの曾孫の代だと思います。
ちなみに平成10年の全国温泉旅館の年所得はナンバーワンでありました、と記されていす。あの♨️マークを考えたのも熊八です。
日本の旅を作りあげた先駆者なのですね!
四国に向かうフェリーの出航まで時間があるので、
別府の湯「駅前高等温泉」を堪能します。
別府駅より徒歩2分。大正13年築、宿泊部屋も兼ね備えた温泉施設です。
大正浪漫の香り漂うレトロな建物です。
別府港から「宇和島運輸フェリー」で四国の「八幡浜港」へ向かいます。
2時間50分の船旅です。
豊後水道を渡るのは初めてです。
別府名物「とり天弁当」をつまみに、ビールを飲んでいると
老夫婦の方に「ご一緒にやりませんか」と誘われます。
お話しをすれば、以前我が家の近くに住んでいたとか、
ご近所ばなしで益々盛り上がります。
話が盛り上がり、あっという間に八幡浜です、船旅の短かったこと。
思い出に2人の写真を額にいれ、新潟の住まいに送ると
年末に「こしひかりのお米とお餅」が送られてきました。恐縮するばかりです。
大雪情報を聞くたびに電話を入れ、雪空に「真っ赤なアイベリー」送ります。
今でも賀状のお付き合いですが、旅で巡り会った幸せな思い出になりました。
八幡浜港から3人でタクシーに乗り、八幡浜駅で再会を約束して別れます。
去年の賀状には「またフェリーで会えると思ったのに」と粋な文面。嬉しいですね~。
JR四国の「特急宇和島」に乗り、揺られること52分、「松山驛」に到着しました。
伊予鉄のオレンジカラーの路線電車に乗って「道後温泉驛」に向かいます。
明治の面影残すクラシカルな駅舎です。
道後温泉駅前にある「からくり時計」と道後温泉本館で使用していた、「湯釜」です。
お土産店が並ぶ「道後ハイカラ通り」のアーケード街をL字に抜けると、正面に堂々とした「道後温泉本館」が見えてきました。
来ましたね~。伝説の白鷺を最上に飾り付けた木造の三層楼。
名湯の誉れ高き姿に見惚れてしまいます。
玄関前には色とりどりの浴衣を流した多くの方が、入り口に吸い込まれて行きます。
銭湯感覚の一階の「神の湯」か、プライベート感覚の「霊の湯」に入るか迷います。
ここは思い切って「霊の湯 三階個室」を選びます。
白鷺模様の浴衣に着替えて道後温泉限定の赤タオルを持ち、神の湯、霊の湯を巡ります。
3階の三畳の個室で「道後名物 坊っちゃん団子」を食しながら、贅沢な時間を過ごします。
向かいを見ると今日泊まるホテルが目の前に見えます。
記念にオリジナルの赤タオル(石鹸付)を求めます。
今日の宿は、道後温泉本館の目の前ある「ホテル パティオ・ドウゴ」
屋根上をよ~く見ると、白鷺がホテル側を向いています。
明治にはこちら北側に玄関があったそうです。
ホテルとしては珍しく、浴衣・雪駄(せった)での外出がOKです。
明日は、浴衣に着替え、タオルを肩に朝風呂めぐりです。
荷を置き、夕食に出かけます。
前の日に泊まった「熊本郷土料理 とっぺんさき」のご主人に松山で美味しいところを尋ねたら、松山市の「美酔(ほろよい)中村」を紹介してくれたので探してみます。
大街道の二番町を探すこと、やっと見つかりました。
カウンターの中央に座り、いきさつを主人に話すと歓迎してくれました。
おすすめの「七種の馬刺し盛り合わせ」とぬる燗をもらいます。
「旨い!」
はもの炙り・ゆば飛龍頭と、美味さにうなってしまいます。
旅に出ると小料理屋さんにぶらりと出かけ、地酒のぬるを舐めながらご主人と語らう至福の時、ご主人の笑顔が思い出されます。
翌日は、早朝 浴衣にせったを履き、手ぬぐいを持って地元の方が通う「椿の湯」へ伺います。
聖徳太子も訪れた椿の湯、湯釜には、「十年の汗を 道後の温泉に 洗ヘ 子規」と刻まれています。
浴室は、道後温泉本館より広くこちらの方が落ち着きます。
地元の気さくな「毎朝風呂人」と話していたら、居酒屋なら「福福亭」がいいと勧めてくれます。
なんと、幸運が舞い降りそうなお店の名です。
夕焼け酒場(BS-TBS 8月15日6時~)を楽しみに「毎朝風呂人」に必ず行きますと礼をいい湯を上がります。
時間もたっぷりあるので、再び「道後温泉本館の神の湯」に
改めて開湯3000年、日本最古の温泉、御影石で作られた洋風な湯船につかると心が洗われるような不思議な感覚があります。
湯はさらりとしたお湯で、やさしさ感ありありです。
ホテルの下にある「すし丸」店で、郷土料理の「松山鮓」を頼みます。
瀬戸の小魚でダシをとった、甘めの合わせ酢の寿司飯の上に、
錦糸卵をちらし季節の魚介を盛り付けた郷土料理です。
それと鯛の出汁をとった「鯛そうめん」です。
午後からは、道後観光案内所で「松山城下めぐり切符」を求めて観光に向かいます。
まずは、「坊っちゃん列車」に乗って松山城へ行きます。
動き出すとお尻の痛いこと、クッションが無いので痛みが増していきます。
係の方が説明してくれますが、全く聞き取れない状態です。
お客さん同士で顔を見合うばかりです。
「大街道」で下車、松山城ロープーウェイ・リフトに乗って山頂へ向かいます。
お~ なんと ひとり用リフトです。
降りてから坂道を上がります、坂の先に松山城を見上げます。
お城を見上げる本丸公園で、買い求めていた駅弁「醤油めし」でお昼にします。
昭和30年からある松山地方に伝わる「あり合わせた具」で作られた駅弁です。
ごはんは、鶏出汁のコクがあり、さめていても柔らかくて美味しい一品です。
海抜132mの勝山山頂にそびえる松山城、立派すぎます。
大天守に登り松山市の城下町を眺めてみます。
遠くには、瀬戸内海がキラキラ輝いています。
伊予鉄道に乗り大手町駅に向かいます。
ここは全国広しと言えどもここだけ「平面交差」があります。
「伊予鉄道の市内電車」と「郊外線の高浜線」が、ほぼ90度で交差するものです。
旅客営業をしている鉄道線と軌道線が直角に、平面交差しているのは珍しいものです。
ぶらぶらと、浪漫漂う街を巡りました。日も落ちかけてきました。
「椿の湯」で会った「毎朝風呂人(まいあさぶろびと」から聞いた「ふくふく亭」を探してみます。
ありました。なんと椿の湯のすぐそばに
暖簾をたたき、引き戸を開けると左にカウンターがあります。
新参なので入口近くに小さくなって座ります。
常連の方が数人、熱い視線を感じます。
ここは、瀬戸内海の小魚が売りのお店ですね。
鯵、鰯、太刀魚、キビナゴの刺身、鯛のあら煮、鯵の南蛮漬け、イイダコ大根の煮物カウンターの上の大皿を覗き品定めします。
酔いにまかせ、思い切って女将さんに話しかけてみます。
なんと気さくなことか、いい気分で飲んでいると、肩をたたく人。
見上げると仕事帰りの「毎朝風呂人」ではありませんか!
早速、杯をかさねていると、となりの方も話の輪に入り盛り上がります。
お話しを伺うと「スカイツリーの照明」や「シンガポールのマリーナベイサンズ」で働いているとのこと。
いろいろな話しが聞けて ご馳走様でした。
翌日も朝から神の湯につかり、しみじみと最後の道後の湯を堪能します。
もっと、丸亀とか高松に廻って「寝台列車 サンライズ瀬戸」で帰りたいけど次回まで我慢です。
道後温泉驛向かいのバス停から、リムジンバスで松山空港へ向かいます。
最後もやっぱり「松山鮨」駅弁を空弁にして。
◯特情報;松山駅に売っている駅弁「松山鮨・醤油めし」が、松山空港に売っています。
空港の1階、2階の方に駅弁(空弁)はありますか? と聞いてみましたが、分からないと言うばかり。
保安検査所に入った、C搭乗口の近くの売店のすみに隠れるように売っていました。
旅をしながら巡りあう様々な人 なにかの縁を感じますね~
また伺ったら 隣りに座っていたりして
正岡子規の「子規記念博物館」を巡り
秋山真之・秋山好古の「坂の上の雲のミュージアム」に時の流れを感じ
この松山のまちを歩いていると、全体が「屋根のない博物館」のようです。
やり遂げたあとの汗を流すには、いいところです。
《 三十六年の汗を 道後の温泉に 洗う 》
それでは、また汗を流しに 伺いましょうか。2011.11.11作