1998年の大蔵省ノーパンしゃぶしゃぶ接待汚職事件と消費税率アップを目論んだ大蔵省の動き題材にした物語。しかし物語の最後の部分で、大蔵省職員による公文書改ざんが行われることにより、次期次官候補の人物の策謀に、部下が一矢を報いるという、大どんでん返しが起きる。これは、現在問題になっている官庁のモラル腐敗と官邸による官僚支配のアイロニー。
大蔵省文書課で課長補佐を務める香良洲は、変人と言われるが頭は切れる。離婚した元妻は現在社倫党女性若手ホープの錐橋の公設秘書を務める理代子で、大蔵省職員による過剰接待事件を追求しようと証拠集めをしている。香良洲は雇った女性ジャーナリスト絵里に探偵を依頼、接待事件の舞台になった新宿の店舗オーナーが、顧客リストを持っていることを突き止める。
関西ヤクザの大物である芥と若頭の薄田は、店舗オーナーを探し、探索のプロセスで香良洲とも接点を持つ。オーナーは、警察からも闇の勢力からも追われた結果、芥に救済を求め身を預けてきた。芥は香良洲に知恵を貸してほしいと協力を求めてきた。
同時に、香良洲は接待汚職とは無縁だったため、大蔵省の中で、汚職に関わったメンバーの割り出しと、処分案立案を任される。次期次官候補の主計局長は、自分に有利になる処分案を香良洲に作成するように迫る。香良洲は、主計局長には面従腹背、意に沿う処分案を作成するフリをしながら、最終案作成の段階で、主計局長の名前も含まれた最終処分案に文書改ざんを行う。
香良洲は、大蔵省職員としての正義感で、改ざんを行ったはずだったが、元妻の理代子、ジャーナリストの絵里からの信頼を失う。香良洲は、慕ってくる部下の続投の求めを振り切り、大蔵省を退職する。物語はここまで。
財政規律を取り戻すためには、消費税アップは必要なのか。大蔵省の金融と財政の機能分離のための金融監督庁設立に対する大蔵省内部からの抵抗。官僚の正義感と倫理。当時は政権与党だった社会党の役割。1998年の話題を取り上げながら、現在の問題に切り込んだ物語。