最初の結婚はできちゃった婚、カメラマンの夫とは赤ちゃんのひよ子が生まれるとすぐにうまく行かなくなり離婚、25才でシングルマザーとなった。19歳の時に留学で滞在したイギリスに憧れ、そして日本人との結婚に失敗したあとは、イギリス人と結婚したいと考えるようになる。時代はバブル、しかし月収6万円程度で不安定な仕事しかなかったため、タイトルにあるような張り紙を外国人が立ち寄りそうな箇所に貼り、電話を待った。
直ぐに電話があった。会ってみるとその彼は自分が頭のなかで描いていた理想のイギリス人「金髪碧眼、清潔感漂うアッパミドル」のイメージとは程遠いイタリア系で中東の血も交じるバックパッカー風の英会話教師で稼ぐ貧乏そうな男、名前はガイだった。積極的なガイは初めての顔合わせから何回も電話で同居はOKかと迫ってくる。そして、夕食に招いて、自分の子供ひよ子も見せて、彼の話をもう少し聞いてみることにする。そしてその日はガイを自宅に泊めてしまう。そしてなんとなくガイは頻繁に自宅を訪れるようになる。半同棲である。
当初はイメージと違うガイに違和感を持っていたが、積極的で優しいガイに次第に心を許すようになり、娘のひよ子もガイになつく。ガイは友達を連れてきたいという。友達は理想のイギリス人と頭に描いていたイメージ通りの男性で、その彼女は性格もよく美人でスタイルもいい、言ってみれば美男美女の国際カップル、自分たちと比べればなんという違いかと落差を感じてしまう。ガイはファミリー志向、しかし筆者はなんとか自分の仕事で身を立てたいともがく。そんな彼女を「ワーカホリック」と言うガイ。もっとリラックスしようよと遊びに誘うガイに「仕事があるから」と振り払う。表面上はうまく行っているように見えても相手も違和感を感じていたことに気がつかない。
あるときガイはイギリスの両親にあって欲しいと言う。いよいよプロポーズしてくれるのかと期待が高まる。会ってみるとガイの両親が暮らすのは日本人から見れば素晴らしい環境に建つお屋敷、しかし母親というのは父がガイの母と離婚した後に再婚した相手だと知る。それでも両親は彼女とひよ子を大歓迎、息子をよろしく、と言うので、すっかりその気になる。しかしガイからのプロポーズはない。なぜこれからの生涯を一緒に暮らそうと言ってくれないかと迫ると、ガイは急に冷淡になり、成田についた時にはもう別れよう、と言われる始末。嘘でしょ、と思うがガイは本気だった。ガイとの別れに焦って、外人ならだれでもとパートナー求めるがそんなにいい具合には行かない。イギリス人と文通した上に、ガイとのイギリス旅行中にその文通相手とも会ってしまう。あやふやな返事をする間に相手はその気になってしまう。
帰国後、雑誌の創刊を企画していた時に出会ったのがロジャー、日本の大手電機メーカーに勤める駐在員で37才、バツイチだったが金髪碧眼、知的でユーモアのセンスもあり日本人のことも理解してくれている理想的なパートナーだった。そんな時、文通していた彼が日本に来たと連絡、会ってくれと言う。とんでもない、自分はロジャーと結婚、しかし彼はすでに日本に来ている。会って断るが相手はそれが信じられない。大変な迷惑をかけてしまった。一方、ロジャーとの結婚話はトントン拍子に進み婚約、長崎に済む実家にも連れて行って両親にも合わせ、あとは結婚式という頃、元妻と電話でいいから話をしてくれと頼むロジャー。自分も元夫と今でも連絡を取り合っていたのでOKした。しかしそれは不幸の始まりだった。元妻は、「本当に子連れの日本人とうまくやっていけると思っているのか」と詰め寄り、ロジャーは一気に結婚する気をなくしてしまう。
どうしてもイギリス人との結婚にこだわった自分、しかし誰ともうまく行かなかった。映画で見た「ノッティングヒルの恋人」に憧れていただけなのか、夢の様な理想をイギリス人との生活として空想していただけなのか。それとも最初の結婚の失敗を相手が日本人だったから、と他責にしたいだけだったのか。
今は50歳になり憧れのロンドン郊外にフラットを手に入れた自分、二十代の失敗を顧みて、今同じような悩みや失敗で苦しむ日本人女性がいて読んでくれることで救いを見出してくれたら、というのが筆者からのメッセージである。
さて参考になるだろうか。なるだろうと思う。異文化への憧れや、よりよい生活への向上心、仕事に対する一途な思い、失敗を恐れない勇気、どれをとっても人生にプラスになると思うが、幸福感の多くを外形的な部分に求めるところに引っかかりを感じるのは私だけだろうか。ガイと自分の二人連れを他人はどう見るか、人が綺麗に着飾っているところに惨めな姿で行きたくはないと友人の結婚式参列を躊躇う、文通相手の性格や相性ではなく見た目から嫌悪感を抱いて拒絶する、本人はひょっとして今でも比較幸福感の不具合に気づいていないのかもしれないと感じるがどうだろう。今や成功して幸せに暮らす筆者にはまったく余計なお世話ですが。
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