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意思による楽観のための読書日記

ハーバードはなぜ日本の「基本」を大事にするのか 佐藤智恵 ***

本書は何冊かのシリーズになっていて、2016年以降に書かれた新しい教材と授業を紹介するのが本書、2020年6月発刊。日本では新規起業の環境が整っていないという報道があるが、起業家精神や創造的ビジネスアイデア、事業継続の工夫、イノベーションの努力、企業風土の醸成など世界の若い学生たちが学ぶべき教材にあふれている、というのが筆者の主張。

ホンダジェットは破壊的イノベーションの好事例で、50年に渡る会社の中での蓄積の成果が出た製品。長期的視点による継続的投資とその経営判断、判断を支えた組織内での成功への確信と執念である。ホンダの原点は「人を大切にする」ことが成功を実現できた。小型ジェットという市場は大手のジェット機メーカーが敬遠してきた需要が見込めそうになくて儲かりにくいニッチである。そこに目をつけたのが慧眼であった。

コマツの「コムトラックス」は製品の全てにGPSを設置して、世界中の自社製品情報を集約し、盗難を防止し、メンテナンスを容易にした。そのアイデアはWEBが世界に広まるずっと以前からあり、GPSとWEBの広がりで成功をもたらした。

半導体製造装置を作るディスコは超優良企業として成長してきた。高収益を社員の幸せのために再投資するという経営姿勢が社員と市場、投資家に評価され成長してきた。「個人ウィル会計」という独自の会計システムは、社員それぞれが会社が共有する会計アカウントを持ち、社員の希望、得意分野、会社の方向性を加味して評価につなげていくというユニークな仕組み。他社に真似ができないのは、それが単なる社内システムではなくて社内風土となって定着してきていること。トヨタの生産管理システムにつながるものがある。

安藤百福のラーメンの国際化は、国際化の前提としてローカル対応の工夫がある。世界初の宇宙のゴミ掃除に挑むのはアストロスケール社、誰もやりたがらないことをビジネスとして着目したのがユニーク。リクルートは大企業となっても起業家精神を失わないぶれない経営姿勢が評価されている。AKB48がアメリカ市場ではなく、アジア、特にインドネシアから進出し始めたのには戦略的視点があった。柿の種を製造・販売している亀田製菓は、米を製品化するという点を訴求ポイントとして、肥満予防、環境対策、アレルギー対応なと日本にはないマーケティング戦略でアメリカ市場で成功している。ソニーはトランジスタラジオ、ウォークマンで一世を風靡する時代があったが90年代には沈滞した。しかし2012年以降、テレビ、CMOSに着目してV字回復に成功した。福島第二原発では第一原発のような結末を回避した。それは、増田所長の冷静な状況判断とそれに従い一心に努力して電源回復に努めた所員たちの団結力が悲劇を回避した。リーダーとしての正しい行動とは、普段からの部下との交流に根ざすものだった。

日本は、現在でも国のブランドランキングで最上位にランキングされている。経済複雑姓指標でも最上位、それは永年の製造業を中心としたノウハウと努力の積み重ねであり、「人を大切にするリーダーシップ」こそが日本の強みであること、もっと意識することで、日本独自のイノベーションが実現できる。課題解決のヒントは、先進国の成功事例から何かを学ぼうとするよりも、日本の中にあること自覚することから始める必要がある。本書内容は以上。

長寿企業は日本に多いことは知られている。長く企業が継続できるというのは創業者のアイデアだけではなく、その後の経営者が時代に合わせた戦略転換を実行したり、それでも創業者が大切にした創業の精神や強みなどを変えなかったことなどがあるといわれる。CSRやSDGsのアイデアの中に日本企業が再び世界で活躍できるヒントがありそうに思えてならない。
 

↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。

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