強制移住許さず恒久停戦こそ
パレスチナ・ガザ地区の住民全員を周辺国に恒久的に移住させ、米国が長期に所有し、開発するというトランプ米大統領の発言が、ガザはもちろん、米国の同盟国を含む各国や国連からの非難を呼び起こしています。15カ月に及んだイスラエルによるジェノサイド(集団殺害)で極限に追い込まれ、ようやく停戦を迎えたガザの人々にさらなる苦難をもたらす暴論です。
ガザ住民の多くは、1948年のイスラエル建国で故郷を追われ難民となった人々の子孫です。強制移住は、占領下の文民の権利保護を定めたジュネーブ条約の違反です。トランプ発言は、「人民の同権及び自決の原則」(国連憲章)をはじめ、パレスチナ人の独立国家樹立を含む自決権の実現、イスラエルとの平和共存による問題解決を支持する国連の諸決議や従来の米政府の立場にも反しています。
「人々に生きるチャンスを与え」(トランプ氏)るならば、ガザでの虐殺に使われてきた米国製兵器のイスラエルへの提供をやめ、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金拠出を再開すべきです。国際社会は、ガザへの大規模な人道・復興支援のため、3月初めまでの一時停戦を恒久化する働きかけを強めるべきです。
■新たな蛮行後押し
ガザの住民追放というトランプ氏の“提案”に、移住先に想定された周辺のエジプトやヨルダンなどは強く反発していますが、イスラエルのネタニヤフ政権は歓迎しています。同政権は、2023年末にガザ住民の「自発的移住」を促すと表明し、今月6日にも国防相が、住民の自主退去の準備をと述べました。
昨年5月にはイスラエル首相府作成とされる「ガザ改造計画」を地元紙が報じました。3段階の復興・再開発で、ガザ住民は当面、周辺のアラブ諸国の監督下に置かれるとあります。35年の未来図は、鉄道や高速道路、きらびやかなビル群、緑の農地、海上には貿易船と石油採掘場を描いており、トランプ氏の話と重なるイメージです。
ネタニヤフ政権は既に、ガザと同じく占領地のヨルダン川西岸と東エルサレムでパレスチナ人の追い出しや土地の強奪を続けています。西岸のジェニンでは、1月21日からイスラエル軍が治安対策と称して家屋や難民キャンプ、病院などを破壊し、多数の死傷者が出ています。イスラエル入植者のパレスチナ人への暴力は重大で、米国のバイデン前政権は一部の過激入植者に制裁を科しました。しかしトランプ大統領はこれも就任初日に取り消しました。
ネタニヤフ首相には、戦争犯罪の罪で国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ています。その政権の新たな蛮行とトランプ政権の加担を止める国際連帯が、いっそう求められています。
■国際法違反ただせ
石破首相は7日の日米首脳会談でトランプ発言をいっさい批判せず、おもねる態度に終始しました。日本政府は昨年の国連総会で、イスラエルのパレスチナ占領終結を求める決議に賛成しています。それにふさわしい、国際法違反を正す行動をとるべきです。
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