野村不動産 「逸失利益」34億円上乗せ
全国57の病院を運営する独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO〈ジェイコー〉)が、船橋中央病院=千葉県船橋市=の移転用地取得に111億円超を野村不動産などに支払っていました。JCHOの山本修一理事長があえて移転用地を買い逃し、先に取得した野村不動産から高値で買い取った疑いが1日、本紙の取材でわかりました。(矢野昌弘)
本紙は、野村不動産がJCHO側に示した「土地売却価格 見積り」という2023年10月の内部資料を入手。この資料は約1万5800平方メートルの土地(持ち分は野村6割、住友不動産4割)の代金111億6000万円の内訳です。
これによると「当社取得額」は78億円余り、坪単価で163万円(1平方メートルあたり49万円余)。野村は、さらに「当社逸失利益」として34億700万円を上乗せしていました。坪単価は233万円(同70万円余)に跳ね上がります。
野村からJCHOが取得した土地は三菱電気子会社の工場跡地。三菱側は、同跡地売却に向けた内覧会を22年12月に開きました。これにはJCHO幹部も参加。関係者によると、ここは以前から船橋中央病院の移転候補地でした。
ところが23年2月の期限にJCHOは購入を申し込まず、野村と住友が取得。同年3月末に野村は土地を取得し、直後の4月上旬、JCHOに売却を打診。用地取得を主導した山本理事長は野村が示した111億円6000万円を承諾し、昨年12月に支払いました。この額はJCHOが土地購入の上限とする土地評価鑑定額の1・5倍です。
関係者によると、山本理事長は22年の理事長就任以降、野村の榎本英二副社長(当時)とたびたび面会していました。
JCHOが作成した内覧会の報告書には、「JCHOは跡地取得者と病院用地の取得について交渉」と記載していました。
関係者は「理事長と野村が示し合わせたとしか考えられない。なぜ『逸失利益』を払うのかも不明で、金額ありきの取引ではないか。理事長の背任が疑われる」と言います。
山本理事長に取材を申し込んだところ、JCHO広報部は「不動産鑑定を実施するとともに、相手方と価格交渉を行って購入したものであり、不当な価格での購入とは考えておりません」と回答。野村不動産は「個別のお取引に関しましてはコメントを控え」るとしています。
JCHO 健康保険や厚生年金の保険料で設立した旧社会保険病院や旧厚生年金病院が統合した組織。前任の理事長は、政府の「新型インフルエンザ等対策推進会議」の議長だった尾身茂氏です。
■船橋市での用地取得の動き
2022年 理事長「知り合いに野村不動産」発言を繰り返す
同年12月 JCHO幹部が工場跡地の内覧会に参加
23年1月 「野村はマンションと病院として開発」と理事長
2月上旬 JCHOが期限内に用地購入を申し込みせず
3月下旬 野村不動産などが跡地を購入
4月上旬 野村不動産がJCHOに土地の売却を打診
10月 野村不動産がJCHO側に「見積り」を提出
12月 111億円の支払いをJCHO内で承認
24年12月 野村不動産側に土地代金の支払い完了
※本紙が入手した内部資料と関係者の証言を基に作成
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