沿岸漁民優先し生業の維持を
沿岸漁業へのクロマグロ(本マグロ)の不公平な漁獲規制が続いています。
国際的な資源管理機関である中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)で日本の漁獲枠の増枠(1・5倍)が決定されました。これを受け12月に決まった日本国内の配分は、沿岸漁民にとって到底納得できるものではありませんでした。
■大型漁業優遇続く
2018年に始まった国内での漁獲規制は、わずか数十隻の大中型まき網漁業に小型魚1500トン・大型魚3063トンの漁獲枠を配分し、全国1万7000隻を超える沿岸漁民には小型魚1317トン・大型魚733トンしか配分しないという大変不平等な内容でした。
この配分では、沿岸漁民は数匹とったら年間の枠がなくなります。当時「これでは生活できない」と全国の漁師が国会に集まり抗議しましたが、政府は耳を貸すことなく決定しました。
今回、日本の増枠に伴って新たに決まった25年の配分は、まき網船が小型魚1200トン・大型魚4116トン、沿岸漁民が小型魚3066トン・大型魚2991トンとなりました。水産庁は「沿岸漁民に配慮した」漁獲枠だとしています。
しかし、全国沿岸漁民連絡協議会(JCFU)の高松幸彦共同代表は「これでは個人の枠が2尾から3尾に増えるだけだ」「配分の考え方を根本的に改める必要がある」と憤ります。
00年代から10年代にかけて、太平洋クロマグロの資源が大きく減少した原因は、大中型まき網漁業による大量漁獲です。太平洋側でアジ・サバを中心に操業していたまき網漁業が、日本海側で操業するようになってから、マグロ資源は急減していきました。
旬とは言えない夏の日本海のマグロを狙うのは、この時期に産卵のため太平洋全域から隠岐~山形沖に集まり群れを作るため、一網打尽にしやすいからです。
産卵期のマグロの大量漁獲は「加入乱獲」といい、資源に大きな打撃を与えます。水産庁の研究者も「最も効果的な対策は、産卵期・場を禁漁にすることです」(「過剰な漁獲能力の削減急務 水産総合研究センター三宅眞研究員に聞く」『OPRTニューズレター』09年1月)と認めています。
■国際ルールに従え
まき網漁業は、地域社会にとっても、日本の食料生産にとっても、重要な役割を果たしています。しかし、資源に最も打撃を与える漁法を国がしっかり規制し、沿岸漁業を優先することは、国際法におけるルールです。WCPFC条約5条や国連食糧農業機関(FAO)の「責任ある漁業のための行動規範」では、「(沿岸の小規模な)漁業者の利益が考慮されること」と規定しています。
11年に大西洋と地中海のクロマグロに国際的な漁獲規制がなされた際、まき網漁業は漁獲可能量が9割以上減らされ、沿岸漁民の枠を確保しました。日本でも沿岸漁民の生業(なりわい)の維持をまず優先するべきです。
テレビ東京「ガイアの夜明け」(19年)では、まき網漁船が網でつぶれたマグロを海洋投棄していることが報道されました。こんなことは許されません。欧米と同様に大型漁業の操業位置のリアルタイム公開、録画による監視が必要です。
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