先日、BS日テレで此の映画が放送されたので観た。
何か月前か、NHK BSでも放送されたが其れも観た。
同じ映画を続けて観るというのは私には稀有のことだ。
それだけ私には此の映画が面白かった。
私は藤沢周平の原作も読んでいるが、私感ながら映画のほうが面白い。勿論、映画は藤沢周平ワールドというべきものが良く表されているが、必ずしも原作に忠実ではなく、例えば映画では清兵衛の娘の回想として話が展開していく。
その回想はナレーションで展開され、(確かビリー・ワイルダー監督の『麗しのサブリナ』もそうだったと記憶しているが私の勘違いかも知れない・・・このナレーション役即ち成人した娘役は岸恵子だったが、そのユッタリとして落ち着いたナレーションは聞きとりやすく私は好感をもった。
また原作では登場人物の会話は標準語でなされているが、映画では東北・庄内弁で会話され、その飾らぬ田舎くささも此の映画の奥行きの深さを感じさせていた。
山田洋二監督は此の映画の時代考証に1年以上かけたという。確かに、昔の東映チャンバラ映画のような、いかにも安直な子供騙し作り・・・これはこれで楽しめる映画も多いが・・・とは一味も二味も異なり、黒澤明流のリアリズムが此の映画にはあった。
やはり此の映画の成功は其の演出と脚本と役者たち(真田博之や宮沢りえ等)に負うところが大だろう。というより此の映画のスタッフ全体に負うとこが大きいのだろう。ならばこそ数々の受賞、とりわけ作品賞が与えられたのは首肯できる。
***
私が此の映画で最も印象的な場面は、清兵衛(真田博之)が藩の命を受け決闘に行く直前に、朋江(宮沢りえ)に自身の身仕度を依頼する箇所だ。急を知った朋江は清兵衛宅に駆け付けるが、清兵衛の身支度をすべく、すばやく襷(たすき)がけする。
この襷を、さっと素早くする其の行為が私には実に美しく見えた。
襷がけとは、和服が着られなくなった現在においては日常生活において、ほとんど見られなくなったし、そのような機会の無い人は襷がけする方法も知らないだろう。
私は襷がけした和服姿を美しく思う。
何故というに、この襷がけという行為は和服の袖や袂が邪魔にならないように紐で袖や袂をしぼる実用のための行為であるからだ。
その行為は虚飾とは全く無縁であるのみか、その襷がけした和服姿そのものが私は美しく感ずる。
朋江は、勿論、普段着のままで、さっと素早く襷がけする。
私は此の何気ない動作に惹かれた。それを見たさに此の映画を二回も続けて観たと言っても過言ではない。
***
豪華絢爛たる和服は私は好まないが、質素な和服には惹かれる。
質素な和服を着た日本人は最も日本人らしく美しい。
襷がけした質素な和服姿は、それが利に叶った合理的な姿であるが故に更に美しい。
私は此の映画をみて其れを再認識した。
何か月前か、NHK BSでも放送されたが其れも観た。
同じ映画を続けて観るというのは私には稀有のことだ。
それだけ私には此の映画が面白かった。
私は藤沢周平の原作も読んでいるが、私感ながら映画のほうが面白い。勿論、映画は藤沢周平ワールドというべきものが良く表されているが、必ずしも原作に忠実ではなく、例えば映画では清兵衛の娘の回想として話が展開していく。
その回想はナレーションで展開され、(確かビリー・ワイルダー監督の『麗しのサブリナ』もそうだったと記憶しているが私の勘違いかも知れない・・・このナレーション役即ち成人した娘役は岸恵子だったが、そのユッタリとして落ち着いたナレーションは聞きとりやすく私は好感をもった。
また原作では登場人物の会話は標準語でなされているが、映画では東北・庄内弁で会話され、その飾らぬ田舎くささも此の映画の奥行きの深さを感じさせていた。
山田洋二監督は此の映画の時代考証に1年以上かけたという。確かに、昔の東映チャンバラ映画のような、いかにも安直な子供騙し作り・・・これはこれで楽しめる映画も多いが・・・とは一味も二味も異なり、黒澤明流のリアリズムが此の映画にはあった。
やはり此の映画の成功は其の演出と脚本と役者たち(真田博之や宮沢りえ等)に負うところが大だろう。というより此の映画のスタッフ全体に負うとこが大きいのだろう。ならばこそ数々の受賞、とりわけ作品賞が与えられたのは首肯できる。
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私が此の映画で最も印象的な場面は、清兵衛(真田博之)が藩の命を受け決闘に行く直前に、朋江(宮沢りえ)に自身の身仕度を依頼する箇所だ。急を知った朋江は清兵衛宅に駆け付けるが、清兵衛の身支度をすべく、すばやく襷(たすき)がけする。
この襷を、さっと素早くする其の行為が私には実に美しく見えた。
襷がけとは、和服が着られなくなった現在においては日常生活において、ほとんど見られなくなったし、そのような機会の無い人は襷がけする方法も知らないだろう。
私は襷がけした和服姿を美しく思う。
何故というに、この襷がけという行為は和服の袖や袂が邪魔にならないように紐で袖や袂をしぼる実用のための行為であるからだ。
その行為は虚飾とは全く無縁であるのみか、その襷がけした和服姿そのものが私は美しく感ずる。
朋江は、勿論、普段着のままで、さっと素早く襷がけする。
私は此の何気ない動作に惹かれた。それを見たさに此の映画を二回も続けて観たと言っても過言ではない。
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豪華絢爛たる和服は私は好まないが、質素な和服には惹かれる。
質素な和服を着た日本人は最も日本人らしく美しい。
襷がけした質素な和服姿は、それが利に叶った合理的な姿であるが故に更に美しい。
私は此の映画をみて其れを再認識した。