二次医療圏に一つの「がん診療連携拠点病院」を作ることが国と県の方針なのだから、大北地域にもがん診療連携拠点病院をつくらなければならないとの主張がある。
では、二次医療圏とはどのようなものなのだろうか?
二次医療圏とは医療法第30条の4第2項第10号で規定され、都市と周辺地域を一体とした広域的な日常社会生活圏で医療資源を適正に配置し、高度・特殊な医療を除く、手術や救急などの一般的な入院医療や包括的な保健医療サービスを地域で完結することを目指す地域単位である。
地理的条件、自然条件、人口分布、交通圏、通勤・通学圏、既存の行政等の圏域、医療施設の分布、患者の受療状況、老人保健福祉圏域等の社会的条件を考慮して、人口約30万人程度を目安として複数の市町村を一つの単位として認定される。
(多くの県では中心都市までのアクセスが1時間程度として設定されている。)
ちなみに三次医療圏とは一次医療圏や二次医療圏で対応することが困難で特殊な専門性の高い医療需要に対応し、より広域なサービスを提供する区域として定められており、一般的にはその都道府県全域を指す。(ちなみに長野県や北海道は複数の3次医療圏が設定されている。)
長野県で言えば二次医療圏は34000人の木曽医療圏から、長野の565000人の長野医療圏まで人口で10倍以上の開きがあるという状況になっている。これは平地が山で隔たられているという長野県ならではの地理的条件によるものだろう。
大北医療圏は木曽医療圏に次いで人口が少なく約60000人であり、隣接する松本医療圏420000人の7分の1、基準となっている300000人の5分の1の人口規模でしかない。
そもそもこの二次医療圏自体、絶対的なものではなく、医療圏の設定要素である自然条件や社会的条件(交通事情)等の変遷により変更されている県もあるようだ。(ex. 二次医療圏の推移(平成18年~平成19年))
だから、交通網の発展で大北医療圏(人口約60000人)と松本医療圏(人口約420000人)が合併したり、権兵衛トンネルができたことで木曽医療圏(34000人)が上伊那医療圏(192000人)と合併するなどのことも今後はないとも言えない。
長野県の北の端の小谷村の人(特に北部の集落)は県をまたいだ医療圏である新潟県の糸魚川市の病院にかかっている患者も多い。
この保健医療圏の設定はあくまでも行政的配慮に基づくもので、圏域を超えての住民が受診することが制限されたり、サービスの提供者である保健医療機関の活動等を規制するものではものではない。
高度専門医療への要求も強まり、交通網が発達し車での移動が普通になった現在、医療圏も大きく変化し、県庁所在地や大学病院がある二次医療圏に隣接する二次医療圏はどうしてもその影響を受けてしまう。
一般的に高度専門的な医療においては中小規模の病院よりも医師数や症例が集積する巨大病院の方がレベルが高い。
都市部の大病院には患者があつまりますますレベルがあがるという好循環(ポジティブフィードバック)がうまれ、過疎地の中小規模の病院は患者がへり、ますますレベルが下がり医者があつまらなくなるという悪循環(ネガティブフィードバック)がうまれる。
その勾配にさからって過疎地の中規模病院が都市部の大病院と高度急性期医療分野で同じ土俵で闘う事は相当困難なことである。
逆に高齢者医療やリハビリテーションや精神医療は、温泉地や山間地など過疎地に追いやられるというその逆の流れもある。(これは人件費や土地が安いということもあるだろうし、障害者を隔離するという意識も根底にはあるものと思われる。)
医療政策上、住民はフリーアクセス(自由に自分がかかる医療機関を選べる)なのにもかかわらず、医療資源は計画配置するというやや無理のある構造となっているが、これは医療サービスの均てん化という理念に基づいているからなのだろう。
一般的な医療サービスとはどこまでをいうのか、何%の医療ニーズを二次医療圏で完結するかとうことに関しての規定は特に定められてはいないようだ。
がん診療、心筋梗塞や脳血管障害や、お産、小児医療、精神医療など個別にデータを集め医療機関ごとにどのような機能が必要かといったようなことが県や保健所で一般的に綿密に検討されているかと言えばそうではないらしい。
現実的には地域医療計画に主として病院及び診療所の病床(ベッド数規制)を図る地域的単位として設定されていること以外に縛りがあるのみであり、毎年10月のある1日の患者の動向調査をもとにして、基準病床数の妥当性を検討しているにすぎないという。
地域医療は、以前から「二次医療圏を一体の区域として病院における入院にかかわる医療を提供する体制の確保を図るべきである」との規定をもとに、二次医療圏内で必要な医療が可能な限り完結できることが望ましいとされてきた。
これに沿って長野県でもすべての二次医療圏に概ね一カ所程度「がん診療連携拠点病院」をおくことを目指すなどというような目標設定がなされてきた。
(第5次長野県保健医療計画平成20年3月、がん対策アクションプラン平成21年12月)
しかし国の政策は主要な4疾病・5 事業について、医療の流れや医療機能に着目した診療実施機関を二次医療圏域にとらわれることなく設定し、病態別に地域医療連携を図ることという通達が各都道府県に対してでるなど(厚生労働省通知平成 19 年 7 月 20 日、医政指発第 0720001 号)、二次医療圏内である程度完結することが望ましいとされたこれまでの経過からややニュアンスも変化してきている。
現実的な方向性だとおもう。
「疾病または事業ごとの医療提供体制(平成19年7月20日 医政医政指発07200001指導課長通知)」(→4疾病5事業について)
こういった流れを受けてか平成23年2月の長野県議会で阿部知事は「一定レベルの第2次医療圏のがん治療と緊急医療の整備を図るべき」との宮澤敏文県議(池田町・松川村より選出)の質問に対して
「・・・2次医療圏ですべてが完結する体制が本来望ましいわけでありますけれども、医療資源が遍在する現在の状況を踏まえますとなかなか難しいというのが現状です。・・・
・・・医療機能の集約化、あるいは役割分担の観点も含めまして、専門家や地域住民の御意見なども十分尊重しながら、長野県全体の医療体制の確立を図ってまいりたいというふうに考えております。・・・・
2次医療圏では完結することが困難な救急、周産期、がん医療、こうした分野における高度専門医療については、広域的な3次医療圏単位で県的な拠点病院と2次医療圏との十分な連携体制の構築というものが不可欠であります。」
(長野県議会 平成23年2月定例会本会議 阿部守一知事)
のように答弁している。
あまり二次医療圏での完結にこだわると特に人口の少ない医療圏においては現実的には集約化ができず高コストとなり、またかえって医療の質を担保できず結局は住民にとっても不利益となってしまう。
この現実を無視して高度医療機関を人の少ない地域に強制配置するのは得策ではない。
がん医療に関しては以下のような専門家の意見もある。
「がん医療には手術、放射線、化学療法、緩和医療、患者からの相談に応じる業務が必要ですが、地域がん診療連携拠点病院はその1セットをそろえていなければならないことになっています。しかし、いろいろな手術を少しずつ行っていたのでは技量の維持ができません。放射線医療も集約化できるはずです。患者の身近にあると便利なのは、化学療法であり、緩和医療であり、相談です。ですから、手術と放射線は県庁所在地近辺にまとめ、そのほかの医療は地域で担当するというように機能を分けたほうが賢明です。」(国立がんセンター中央病院長土屋 了介 氏)
(→日経メディカルオンライン2010. 4 がん診療連携拠点病院・4年目の決算)
「最近「耐震偽装」や「食品偽装」の問題が取り沙汰されたが,がん医療においても不備な体制整備にもかかわらず,内実の伴わない「がん診療連携拠点病院」の指定は「偽装がん治療」であり,「絵にかいた餅」となる。」
(北海道がんセンター、放射線治療科 西尾正道氏)
(→がん拠点病院の実態)
もちろん過疎地に、がん医療がなくていいというわけでは決してない。
しかし人口60000人の医療圏の過疎地の中規模病院にとって「がん診療連携拠病院」のハードルは高すぎる。
5大がんに限っても、がんの専門医をそろえるのは困難だ。
またリニアック(放射線治療機器)を配置したところで、指定要件である専任の放射線治療医や技師を配置するのに十分な症例数も集まらない。
たとえ建物を作り機械を入れたところで、信大の医局から放射線治療医を安曇病院に出す余裕はとてもないという。いや例え人手があっても症例が少ない病院に来たがる放射線治療医はいないだろう。
安曇総合病院には既に、「がん相談支援センター」が設置されているが、そこから一つずつ積み上げて、まず質の高い緩和ケア、外来化学療法を中心に医療を提供し、高度な手術や放射線治療などは大学病院などで行い一連の治療計画(地域連携クリニカルパス)にもとづいて共同でフォローして治療をおこない、地域の患者のニーズに応えていけばよい。
補助金をもらって建物をつくり放射線治療機器をいれたところで県が放射線治療医を確保してくれたり、それによってうまれた赤字を補填してくれるわけでは断じてないのだ。
イメージのみで医療を語る、名誉欲、地元エゴにとらわれた夢見る政治屋が何をいおうとも、あわてて安曇総合病院に放射線治療機器を入れる必要はどこにもない。
ドジョウが金魚のまねをしてもしょうがない。
第一線にいる現場の者は、ピンボケした無責任な外野の声に惑わされることなく、ドジョウのように泥臭く日々実践し、地域医療を前進(医療の民主化)させるのみであろう。
(文責:樋端)
なぜ、安曇総合病院への放射線治療機器という話しに?
では、二次医療圏とはどのようなものなのだろうか?
二次医療圏とは医療法第30条の4第2項第10号で規定され、都市と周辺地域を一体とした広域的な日常社会生活圏で医療資源を適正に配置し、高度・特殊な医療を除く、手術や救急などの一般的な入院医療や包括的な保健医療サービスを地域で完結することを目指す地域単位である。
地理的条件、自然条件、人口分布、交通圏、通勤・通学圏、既存の行政等の圏域、医療施設の分布、患者の受療状況、老人保健福祉圏域等の社会的条件を考慮して、人口約30万人程度を目安として複数の市町村を一つの単位として認定される。
(多くの県では中心都市までのアクセスが1時間程度として設定されている。)
ちなみに三次医療圏とは一次医療圏や二次医療圏で対応することが困難で特殊な専門性の高い医療需要に対応し、より広域なサービスを提供する区域として定められており、一般的にはその都道府県全域を指す。(ちなみに長野県や北海道は複数の3次医療圏が設定されている。)
長野県で言えば二次医療圏は34000人の木曽医療圏から、長野の565000人の長野医療圏まで人口で10倍以上の開きがあるという状況になっている。これは平地が山で隔たられているという長野県ならではの地理的条件によるものだろう。
大北医療圏は木曽医療圏に次いで人口が少なく約60000人であり、隣接する松本医療圏420000人の7分の1、基準となっている300000人の5分の1の人口規模でしかない。
そもそもこの二次医療圏自体、絶対的なものではなく、医療圏の設定要素である自然条件や社会的条件(交通事情)等の変遷により変更されている県もあるようだ。(ex. 二次医療圏の推移(平成18年~平成19年))
だから、交通網の発展で大北医療圏(人口約60000人)と松本医療圏(人口約420000人)が合併したり、権兵衛トンネルができたことで木曽医療圏(34000人)が上伊那医療圏(192000人)と合併するなどのことも今後はないとも言えない。
長野県の北の端の小谷村の人(特に北部の集落)は県をまたいだ医療圏である新潟県の糸魚川市の病院にかかっている患者も多い。
この保健医療圏の設定はあくまでも行政的配慮に基づくもので、圏域を超えての住民が受診することが制限されたり、サービスの提供者である保健医療機関の活動等を規制するものではものではない。
高度専門医療への要求も強まり、交通網が発達し車での移動が普通になった現在、医療圏も大きく変化し、県庁所在地や大学病院がある二次医療圏に隣接する二次医療圏はどうしてもその影響を受けてしまう。
一般的に高度専門的な医療においては中小規模の病院よりも医師数や症例が集積する巨大病院の方がレベルが高い。
都市部の大病院には患者があつまりますますレベルがあがるという好循環(ポジティブフィードバック)がうまれ、過疎地の中小規模の病院は患者がへり、ますますレベルが下がり医者があつまらなくなるという悪循環(ネガティブフィードバック)がうまれる。
その勾配にさからって過疎地の中規模病院が都市部の大病院と高度急性期医療分野で同じ土俵で闘う事は相当困難なことである。
逆に高齢者医療やリハビリテーションや精神医療は、温泉地や山間地など過疎地に追いやられるというその逆の流れもある。(これは人件費や土地が安いということもあるだろうし、障害者を隔離するという意識も根底にはあるものと思われる。)
医療政策上、住民はフリーアクセス(自由に自分がかかる医療機関を選べる)なのにもかかわらず、医療資源は計画配置するというやや無理のある構造となっているが、これは医療サービスの均てん化という理念に基づいているからなのだろう。
一般的な医療サービスとはどこまでをいうのか、何%の医療ニーズを二次医療圏で完結するかとうことに関しての規定は特に定められてはいないようだ。
がん診療、心筋梗塞や脳血管障害や、お産、小児医療、精神医療など個別にデータを集め医療機関ごとにどのような機能が必要かといったようなことが県や保健所で一般的に綿密に検討されているかと言えばそうではないらしい。
現実的には地域医療計画に主として病院及び診療所の病床(ベッド数規制)を図る地域的単位として設定されていること以外に縛りがあるのみであり、毎年10月のある1日の患者の動向調査をもとにして、基準病床数の妥当性を検討しているにすぎないという。
地域医療は、以前から「二次医療圏を一体の区域として病院における入院にかかわる医療を提供する体制の確保を図るべきである」との規定をもとに、二次医療圏内で必要な医療が可能な限り完結できることが望ましいとされてきた。
これに沿って長野県でもすべての二次医療圏に概ね一カ所程度「がん診療連携拠点病院」をおくことを目指すなどというような目標設定がなされてきた。
(第5次長野県保健医療計画平成20年3月、がん対策アクションプラン平成21年12月)
しかし国の政策は主要な4疾病・5 事業について、医療の流れや医療機能に着目した診療実施機関を二次医療圏域にとらわれることなく設定し、病態別に地域医療連携を図ることという通達が各都道府県に対してでるなど(厚生労働省通知平成 19 年 7 月 20 日、医政指発第 0720001 号)、二次医療圏内である程度完結することが望ましいとされたこれまでの経過からややニュアンスも変化してきている。
現実的な方向性だとおもう。
「疾病または事業ごとの医療提供体制(平成19年7月20日 医政医政指発07200001指導課長通知)」(→4疾病5事業について)
○がん
専門的な診療を行う医療機関における集学的治療の実施状況を勘案し、従来の二次医療圏にこだわらず、地域の実情に応じて弾力的に設定する。
(※一方、がん対策推進基本計画(平成19年6月1 日閣議決定)においては、「原則として全国すべての2次医療圏において 、3年以内に、概ね1箇所程度拠点病院を整備するとともに、すべての拠点病院において、5年以内に、5大がん(肺がん、胃がん、肝がん、大腸がん、乳がん)に関する地域連携クリティカルパスを整備することを目標とする」こととされている。)
○脳卒中
発症後3時間以内の脳梗塞における血栓溶解療法の有用性が確認されている現状に鑑みて、それらの恩恵を住民ができる限り公平に享受できるよう、従来の二次医療圏にこだわらず、メディカルコントロール体制のもと実施されて る搬送体制の状況等、地域の医療資源等の実情 応じて弾力的 設定する。 もと実施されている搬送体制の状況等、地域の医療資源等の実情に応じて弾力的に設定する。
○急性心筋梗塞
急性心筋梗塞は、自覚症状が出現してから治療が開始されるまでの時間によって予後が大きく変わることを勘案し 勘案し 住民ができる限り公平に享受できるよう 、住民ができる限り公平に享受できるよう、従来の二次医療圏にこだわらず 従来の二次医療圏にこだわらず、メディカルコントロ ル体制のもと実施されている搬送体制の状況等、地域の医療資源等の実情に応じて弾力的に設定する。
○糖尿病
従来の二次医療圏にこだわらず、地域の医療資源等の実情に応じて弾力的に設定する。
○救急医療
地域によっては、医療資源の制約等によりひとつの施設が複数の機能を担うこともあり得る。逆に、圏域内に機能を担う施設が存在しない場合には、圏域の再設定も行うこともあり得る。ただし、救命救急医療について、一定のアクセス時間内に当該医療機関に搬送できるように圏域を設定することが望ましい。
○災害時における医療
原則として都道府県全体を圏域として、災害拠点病院が災害時に担うべき役割を明確にするとともに、大規模災害を想定し 規模災害を想定し 都道府県をまたがる広域搬送等の広域連携体制を定める 、都道府県をまたがる広域搬送等の広域連携体制を定める。
○周産期医療
重症例(重症の産科疾患、重症の合併症妊娠、胎児異常症例等)を除く産科症例の診療が圏域内で完結することを目安に、従来の二次医療圏にこだわらず、地域の医療資源等の実情に応じて弾力的に設定す
る。
○小児医療(小児救急医療含む)
地域小児医療センターを中心とした診療状況を勘案し、従来の二次医療圏にこだわらず、地域の実情に応じて弾力的に設定する
専門的な診療を行う医療機関における集学的治療の実施状況を勘案し、従来の二次医療圏にこだわらず、地域の実情に応じて弾力的に設定する。
(※一方、がん対策推進基本計画(平成19年6月1 日閣議決定)においては、「原則として全国すべての2次医療圏において 、3年以内に、概ね1箇所程度拠点病院を整備するとともに、すべての拠点病院において、5年以内に、5大がん(肺がん、胃がん、肝がん、大腸がん、乳がん)に関する地域連携クリティカルパスを整備することを目標とする」こととされている。)
○脳卒中
発症後3時間以内の脳梗塞における血栓溶解療法の有用性が確認されている現状に鑑みて、それらの恩恵を住民ができる限り公平に享受できるよう、従来の二次医療圏にこだわらず、メディカルコントロール体制のもと実施されて る搬送体制の状況等、地域の医療資源等の実情 応じて弾力的 設定する。 もと実施されている搬送体制の状況等、地域の医療資源等の実情に応じて弾力的に設定する。
○急性心筋梗塞
急性心筋梗塞は、自覚症状が出現してから治療が開始されるまでの時間によって予後が大きく変わることを勘案し 勘案し 住民ができる限り公平に享受できるよう 、住民ができる限り公平に享受できるよう、従来の二次医療圏にこだわらず 従来の二次医療圏にこだわらず、メディカルコントロ ル体制のもと実施されている搬送体制の状況等、地域の医療資源等の実情に応じて弾力的に設定する。
○糖尿病
従来の二次医療圏にこだわらず、地域の医療資源等の実情に応じて弾力的に設定する。
○救急医療
地域によっては、医療資源の制約等によりひとつの施設が複数の機能を担うこともあり得る。逆に、圏域内に機能を担う施設が存在しない場合には、圏域の再設定も行うこともあり得る。ただし、救命救急医療について、一定のアクセス時間内に当該医療機関に搬送できるように圏域を設定することが望ましい。
○災害時における医療
原則として都道府県全体を圏域として、災害拠点病院が災害時に担うべき役割を明確にするとともに、大規模災害を想定し 規模災害を想定し 都道府県をまたがる広域搬送等の広域連携体制を定める 、都道府県をまたがる広域搬送等の広域連携体制を定める。
○周産期医療
重症例(重症の産科疾患、重症の合併症妊娠、胎児異常症例等)を除く産科症例の診療が圏域内で完結することを目安に、従来の二次医療圏にこだわらず、地域の医療資源等の実情に応じて弾力的に設定す
る。
○小児医療(小児救急医療含む)
地域小児医療センターを中心とした診療状況を勘案し、従来の二次医療圏にこだわらず、地域の実情に応じて弾力的に設定する
こういった流れを受けてか平成23年2月の長野県議会で阿部知事は「一定レベルの第2次医療圏のがん治療と緊急医療の整備を図るべき」との宮澤敏文県議(池田町・松川村より選出)の質問に対して
「・・・2次医療圏ですべてが完結する体制が本来望ましいわけでありますけれども、医療資源が遍在する現在の状況を踏まえますとなかなか難しいというのが現状です。・・・
・・・医療機能の集約化、あるいは役割分担の観点も含めまして、専門家や地域住民の御意見なども十分尊重しながら、長野県全体の医療体制の確立を図ってまいりたいというふうに考えております。・・・・
2次医療圏では完結することが困難な救急、周産期、がん医療、こうした分野における高度専門医療については、広域的な3次医療圏単位で県的な拠点病院と2次医療圏との十分な連携体制の構築というものが不可欠であります。」
(長野県議会 平成23年2月定例会本会議 阿部守一知事)
のように答弁している。
あまり二次医療圏での完結にこだわると特に人口の少ない医療圏においては現実的には集約化ができず高コストとなり、またかえって医療の質を担保できず結局は住民にとっても不利益となってしまう。
この現実を無視して高度医療機関を人の少ない地域に強制配置するのは得策ではない。
がん医療に関しては以下のような専門家の意見もある。
「がん医療には手術、放射線、化学療法、緩和医療、患者からの相談に応じる業務が必要ですが、地域がん診療連携拠点病院はその1セットをそろえていなければならないことになっています。しかし、いろいろな手術を少しずつ行っていたのでは技量の維持ができません。放射線医療も集約化できるはずです。患者の身近にあると便利なのは、化学療法であり、緩和医療であり、相談です。ですから、手術と放射線は県庁所在地近辺にまとめ、そのほかの医療は地域で担当するというように機能を分けたほうが賢明です。」(国立がんセンター中央病院長土屋 了介 氏)
(→日経メディカルオンライン2010. 4 がん診療連携拠点病院・4年目の決算)
「最近「耐震偽装」や「食品偽装」の問題が取り沙汰されたが,がん医療においても不備な体制整備にもかかわらず,内実の伴わない「がん診療連携拠点病院」の指定は「偽装がん治療」であり,「絵にかいた餅」となる。」
(北海道がんセンター、放射線治療科 西尾正道氏)
(→がん拠点病院の実態)
もちろん過疎地に、がん医療がなくていいというわけでは決してない。
しかし人口60000人の医療圏の過疎地の中規模病院にとって「がん診療連携拠病院」のハードルは高すぎる。
5大がんに限っても、がんの専門医をそろえるのは困難だ。
またリニアック(放射線治療機器)を配置したところで、指定要件である専任の放射線治療医や技師を配置するのに十分な症例数も集まらない。
たとえ建物を作り機械を入れたところで、信大の医局から放射線治療医を安曇病院に出す余裕はとてもないという。いや例え人手があっても症例が少ない病院に来たがる放射線治療医はいないだろう。
安曇総合病院には既に、「がん相談支援センター」が設置されているが、そこから一つずつ積み上げて、まず質の高い緩和ケア、外来化学療法を中心に医療を提供し、高度な手術や放射線治療などは大学病院などで行い一連の治療計画(地域連携クリニカルパス)にもとづいて共同でフォローして治療をおこない、地域の患者のニーズに応えていけばよい。
補助金をもらって建物をつくり放射線治療機器をいれたところで県が放射線治療医を確保してくれたり、それによってうまれた赤字を補填してくれるわけでは断じてないのだ。
イメージのみで医療を語る、名誉欲、地元エゴにとらわれた夢見る政治屋が何をいおうとも、あわてて安曇総合病院に放射線治療機器を入れる必要はどこにもない。
ドジョウが金魚のまねをしてもしょうがない。
第一線にいる現場の者は、ピンボケした無責任な外野の声に惑わされることなく、ドジョウのように泥臭く日々実践し、地域医療を前進(医療の民主化)させるのみであろう。
(文責:樋端)
なぜ、安曇総合病院への放射線治療機器という話しに?