情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

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共謀罪,民主党丸飲み策は,ウルトラHではなく,法務省や議員の本音ではないか?~6月2日を振り返り…

2006-06-03 22:36:44 | 共謀罪
共謀罪の強行採決が予測された6月2日の衆議院法務委員会は,夕方5時40分過ぎから約30分間開催され,自民党西川理事が民主党が,与党による民主党案の丸飲み策に乗らないことを延々批判した。終了したのは,午後6時20分近く。金帰火来で動いている国会議員にとって,金曜の夕方にくだらない委員会を開催されることは迷惑なものでしかない。それにもかかわらず,あえて,意味のない法務委員会を開催したのは,なぜだろうか?これを考えることで,なぜ,丸飲み策が出てきたのかが分かるように思う。

ここでヒントになるのが,「開会前には、松島みどり議員(自民)が『今日は強行採決をやるよ。民主党案を自民党が強行採決するんだから前代未聞だ。歴史的な日にする』とまくし立てた」(東京新聞←)という事実だ。

松島みどりは,自民党の5人の理事のひとりだ。その松島みどりが法務委員会開始直前まで強行採決だと認識していたということは,①民主党丸飲み策を民主党が拒否した後,いったん,民主党案に基づく強行採決をするという方向が固まっていたこと,さらには,②委員会開始直前までその強行採決路線をとめる指示がきちんと出ていなかったことを示している。

法務委員会開始の前に行われた同委員会理事会は,午後1時前に始まり,延々と続いたが,最後には野党側が席を立って出たという。この事実も,委員会開始直前まで採決の可能性が残っていたことを示している。もし,メディアが伝えたように,午前中に,採決の目が完全になくなっていたら,長時間,理事会を行う必要はなかったはずだ。

断続的に行われた理事会の過程で,自民党理事は,時折,民主党理事を説得している状況を自民党国対幹部に伝え,ぎりぎりまで説得を続けさせてくれと頑張ったと思われる。自民党国対の同日午前中のコメントは,次のようなものだった。【自民党の細田博之、公明党の東順治の両国対委員長は、民主党が対応を変えない限りは、継続審議もやむを得ないとの認識で一致した】(朝日←)。つまり,民主党がぎりぎりででも応じるということになれば,採決をするということだったのだ。

そのために,法務委員会のメンバーは待たされていた。

しかし,理事会で野党理事が席を蹴って出て行った以上,民主党が出席しての採決はなくなった。ここで,自民党法務委員会理事数名と同党国対幹部が最後の詰めをしたはずだ。

再度,強行採決を要請する法務委員会理事に対し,与党国対幹部は承諾しなかったと思われる。法務委員会理事にして見れば,せっかく,民主党も巻き込んだ採決ができるはずだったのに,細田国対委員長のウルトラH(偽装丸飲み)発言で,吹っ飛んでしまった(細田は,ウルトラHなどと言って,自分の発案のように言ったらしいが,賛成する委員側にその気がなければ無理なわけで,実際には,国民の批判を正面から浴びていた自民党法務委員及び法務省が悲鳴を上げ,丸飲みしてでも早期解決したいという機運が高まっていたと思われる)。「民主党とともに採決するという案が国対側の事情でつぶれた以上,民主党案での強行採決をさせてくれ,民主党案での採決なら,もう批判を浴びることはないのだから。それで終わらせてくれ…。」。法務委員会理事は,そう訴えたのかも知れない。

結局,強行採決も完全に否定された。しかし,法務委員は,国民からの批判を受ける共謀罪には,もう,つきあいたくない。今後,民主党丸飲み案から再度,与党案に戻るようなことになったら,矢面に立つのは,また,法務委員だ。

そこで,民主党案では,国際組織犯罪防止条約を批准することは出来ないとした麻生発言を一部修正させ,「批准に向けて努力する」ことを確認し,民主党丸飲み案での早期解決を目指すことを表明する場として,法務委員会を開催したのではないだろうか。金帰火来を優先すべき議員を多数残してまで,あまり意味のない法務委員会を開催したのはそのためだと思われる。

ここからが重要なことですが,丸飲み策がウルトラHではなく,法務省・法務委員会所属議員の本音だとすると,これから先,さらに,追い込む余地が十分にあるのではないでしょうか。

これまで政府・与党が国際組織犯罪防止条約違反になるから無理だと言っていたこと(対象となる犯罪を懲役長期5年を超えるに限定すること,国際性のある団体に絞ること)を飲んだ以上,本当に,批准するために無理なことは何なのか?この検証をする必要がある。

法務省役人は,条約制定過程では,「日本の法制度には,共謀罪はなじまない」と堂々と述べていた。他方,すでにある国内法によって,条約に対処しようとしている国もあることも明らかになった。日本でも,現在の法制度で,国際犯罪に十分対処できるのではないか。これからしばらくの間は,そういう根源的な疑問を法務委員や法務省にぶつけてはどうでしょうか?

今国会での制定を防いだいまこそ,市民パワーの本当の力量が問われるはずだから…。




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