共謀罪新設の根拠とされている国際組織犯罪防止条約の立法ガイド(←ここ)でまたまた,面白い表現を発見した。その一つが“The second option is more consistent with the civil law legal tradition and countries with laws that do not recognize conspiracy or do not allow the criminalization of a mere agreement to commit an offence.”というもの。必要部分だけ訳すと,「2つめの選択(すなわち,参加罪)は,単に犯罪を行うことを合意しただけでは犯罪化することを許さない国に適している」となる。
つまり,日本のように共謀罪という犯罪になじまない国については,共謀罪を新設するのではなく,参加罪を設けるように指示しているのだ。
では,その参加罪とは,どういうものか?
法務省の和訳(ここ←)では,参加罪の定義は,次のようなものである(5条)。
ii) 組織的な犯罪集団の目的及び一般的な犯罪活動又は特定の犯罪を行う意図を認識しながら、次の活動に積極的に参加する個人の行為
a 組織的な犯罪集団の犯罪活動
b 組織的な犯罪集団のその他の活動(当該個人が、自己の参加が当該犯罪集団の目的の達成に寄与することを知っているときに限る。)
では, 日本は,この)の犯罪を処罰する法律をすでに有しているだろうか,それとも新設しなければならないだろうか?
まず,)のaは,犯罪行為への参加なので,当然,日本でも犯罪とされている。
次に)のbは,犯罪以外の活動への参加行為なので,一見,日本では,犯罪とされておらず,新たな立法が必要なような感じもする。
しかし,その他の活動といったって,いかなる活動でも処罰されるわけではなく,処罰の必要のある行為に限定されることになるはずだ。
そういう観点から,検討すると,日本でも,一般的に犯罪といえない行為を犯罪として処罰しているものはありそうだ。
例えば,銃刀法や特殊解錠用具の所持の禁止等に関する法律,軽犯罪法は,ナイフなどの武器や解錠用具を持ち歩くことすら禁止している。銃天国アメリカなどをみれば明らかだが,銃やナイフ,凶器の携行がそれだけで犯罪とされるというのは,必ずしも国際基準ではない。
よって,この銃刀法,特殊解錠用具…法,軽犯罪法は,)のbでいう「その他の活動」を処罰する法律だと言える。
また,暴対法は,暴力団が寄付金を募る行為や,暴力団に加入するよう「勧誘」する行為を犯罪とし,また,事務所の使用を一定程度制限し,これに反する行為を犯罪としている。これらも,立派に「その他の活動」を処罰する法律だと言える。
また,破防法は,破壊的団体について,公開の集会を行う行為などをを犯罪として処罰しているし,無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律も,寄付やメンバー勧誘を犯罪としている。
さらに,毒劇法は毒物の所持そのものを犯罪としている。
また,公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律は,テロ集団に対する資金援助を犯罪としている。
以上の犯罪は,それ自体が処罰されないにもかかわらず,物の性質自体に着目し,あるいは,関係団体の性格を考慮して,前倒しで犯罪として処罰されることになっているといえる。
これだけの行為を犯罪としていれば,十分,)のbの要件を満たしているのではないだろうか?
この点について,共謀罪・参加罪の新設は不要だという懸念があるのですが,法務省はいかがでしょうか?
本日,保坂議員は,ブログ(ここ←)で,
【国連が作成した立法ガイドの43パラグラフには、次のような興味深い言及がある。「各国の国内法の起草者は、単に条約テキストを翻訳したり、正確に言葉通りに条約の文言を新しい法律案または法改正案に含めるように試みるより、むしろ条約の意味と精神に集中しなければならない」「法的な防御や他の法律の原則を含む、新しい犯罪の創設とその実施は、各締約国に委ねられている」「国内法の起草者は、新しい法が彼らの国内の法的な伝統、原則と基本法と一致するよう確実にしなければならない」とされており、条約の文言をなぞる必要はなく、条約の精神に忠実であれば、かなり広範囲の裁量が認められていることがわかる。】
と主張されているが,まったく,そのとおりだと思う。条約は,各国の実状に応じて,適切な組織犯罪集団対策を行うよう求めているだけなのである。
共謀罪・参加罪の新設は実は不要だという懸念を最近あちこちのブログで見かけるのですが,法務省はその懸念について,HPで説明をしていただけるのでしょうか?
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つまり,日本のように共謀罪という犯罪になじまない国については,共謀罪を新設するのではなく,参加罪を設けるように指示しているのだ。
では,その参加罪とは,どういうものか?
法務省の和訳(ここ←)では,参加罪の定義は,次のようなものである(5条)。
ii) 組織的な犯罪集団の目的及び一般的な犯罪活動又は特定の犯罪を行う意図を認識しながら、次の活動に積極的に参加する個人の行為
a 組織的な犯罪集団の犯罪活動
b 組織的な犯罪集団のその他の活動(当該個人が、自己の参加が当該犯罪集団の目的の達成に寄与することを知っているときに限る。)
では, 日本は,この)の犯罪を処罰する法律をすでに有しているだろうか,それとも新設しなければならないだろうか?
まず,)のaは,犯罪行為への参加なので,当然,日本でも犯罪とされている。
次に)のbは,犯罪以外の活動への参加行為なので,一見,日本では,犯罪とされておらず,新たな立法が必要なような感じもする。
しかし,その他の活動といったって,いかなる活動でも処罰されるわけではなく,処罰の必要のある行為に限定されることになるはずだ。
そういう観点から,検討すると,日本でも,一般的に犯罪といえない行為を犯罪として処罰しているものはありそうだ。
例えば,銃刀法や特殊解錠用具の所持の禁止等に関する法律,軽犯罪法は,ナイフなどの武器や解錠用具を持ち歩くことすら禁止している。銃天国アメリカなどをみれば明らかだが,銃やナイフ,凶器の携行がそれだけで犯罪とされるというのは,必ずしも国際基準ではない。
よって,この銃刀法,特殊解錠用具…法,軽犯罪法は,)のbでいう「その他の活動」を処罰する法律だと言える。
また,暴対法は,暴力団が寄付金を募る行為や,暴力団に加入するよう「勧誘」する行為を犯罪とし,また,事務所の使用を一定程度制限し,これに反する行為を犯罪としている。これらも,立派に「その他の活動」を処罰する法律だと言える。
また,破防法は,破壊的団体について,公開の集会を行う行為などをを犯罪として処罰しているし,無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律も,寄付やメンバー勧誘を犯罪としている。
さらに,毒劇法は毒物の所持そのものを犯罪としている。
また,公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律は,テロ集団に対する資金援助を犯罪としている。
以上の犯罪は,それ自体が処罰されないにもかかわらず,物の性質自体に着目し,あるいは,関係団体の性格を考慮して,前倒しで犯罪として処罰されることになっているといえる。
これだけの行為を犯罪としていれば,十分,)のbの要件を満たしているのではないだろうか?
この点について,共謀罪・参加罪の新設は不要だという懸念があるのですが,法務省はいかがでしょうか?
本日,保坂議員は,ブログ(ここ←)で,
【国連が作成した立法ガイドの43パラグラフには、次のような興味深い言及がある。「各国の国内法の起草者は、単に条約テキストを翻訳したり、正確に言葉通りに条約の文言を新しい法律案または法改正案に含めるように試みるより、むしろ条約の意味と精神に集中しなければならない」「法的な防御や他の法律の原則を含む、新しい犯罪の創設とその実施は、各締約国に委ねられている」「国内法の起草者は、新しい法が彼らの国内の法的な伝統、原則と基本法と一致するよう確実にしなければならない」とされており、条約の文言をなぞる必要はなく、条約の精神に忠実であれば、かなり広範囲の裁量が認められていることがわかる。】
と主張されているが,まったく,そのとおりだと思う。条約は,各国の実状に応じて,適切な組織犯罪集団対策を行うよう求めているだけなのである。
共謀罪・参加罪の新設は実は不要だという懸念を最近あちこちのブログで見かけるのですが,法務省はその懸念について,HPで説明をしていただけるのでしょうか?
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