情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

憲法改正国民投票法案に重大な問題点~出来レースになっている…

2006-09-06 22:19:23 | 憲法改正国民投票法案そのほか
安倍晋三官房長官が,出馬会見で,「憲法改正の発議は、衆参両院で国会議員の3分の2以上の賛成が必要という大変高いハードルがあり、簡単ではない。任期中に方向性を出していかなければならない。まず憲法改正手続きを定める国民投票法案の成立を目指す。与野党で議論を深めなければならない。集団的自衛権の行使容認に関しては、個別に具体例を検討したい。今の憲法は占領下でつくられたもので占領軍が深く関与している。戦後61年を否定するのではない。私たち自身の手で新しい憲法を書いていこうではないか。」と改憲に意欲を燃やし,憲法改正国民投票法案の早期成立を目指すと明言した(ここ参照←クリック)。しかし,その法案には重大な問題がある。あまり大きくは報道されていないが,それだけに見過ごせない問題だ。

まずは,衆議院憲法調査特別委員会及び憲法調査会事務局が作成したこの資料(←クリック)を見て欲しい。9頁(頁下の番号で9頁)の一番上に,「政党等による放送及び新聞広告」について,与野党案が並んで掲載されている。

与党案は,政権等による公報活動の一環としての放送(政見放送のようなもの)について,【この放送に関しては、すべての政党等に対して、同一放送設備を使用し、憲法改正の発議に係る議決がされた際当該政党等に所属する衆議院議員及び参議院議員の数を踏まえて憲法改正案広報協議会が定める時間数を与える等同等の利便を提供しなければならないものとすること。】と規定している。

また,新聞広告については,【政党等は、憲法改正の発議に係る議決がされた際当該政党等に所属する衆議院議員及び参議院議員の数を踏まえて憲法改正案広報協議会が定める寸法で、新聞に、憲法改正案広報協議会が定める回数に限り、無料で、憲法改正案に対する意見の広告をすることができる】と規定している。

 つまり,政党に所属する国会議員の数に比例してテレビラジオ無料放送の放送時間や新聞無料広告のスペースを割り当てるということだ。憲法改正案を発議するということは,その案に3分の2以上の国会議員が賛成しているということだ。したがって,憲法改正案の投票に向けて運動が行われている間,上記無料放送,無料広告で伝えられる情報は,3分の2以上の多数が賛成派のものとなる。反対派は3分の1以下…。この圧倒的な違いは結果に大きく影響するだろう。これではあまりに不合理だ。


再度,衆議院憲法調査特別委員会及び憲法調査会事務局が作成この資料(←クリック)を見て欲しい。46頁に「5 諸外国の国民投票運動に対する公的助成」の表がある。この表の助成内容欄に注目して下さい。

【欧州憲法条約についての国民投票の際には、国民投票実施委員会が100 万ユーロ(約1.4 億円)を限度として、助成金を支給した*1。
そのうち、40 万ユーロが欧州憲法条約の批准に「賛成」の立場の活動に、40 万ユーロが同条約の批准に「反対」の活動に、20 万ユーロが中立的な活動や投票促進のための活動に割り当てられた。】(46頁)

【1 億4,000 万クローナ(約21.4億円)。その使途は各団体の裁量に任されている。
・キャンペーン団体合計で9,000万クローナを支給(賛成派に4,200 万クローナ、反対派に4,800 万クローナが各頂上組織に支給された)】(47頁)

【ラジオ及びテレビのそれぞれ10時間の放送枠が与えられ、放送施設の使用料が国庫から支払われる。
放送枠は、対象となる政党又は政治団体に平等に配分される。】(47頁)

【欧州連合加盟に関する国民投票(1994年)に際して、賛成者・反対者に同額ずつ公的資金を支出した例がある。】(47頁)


以上のとおり,海外では,議席数の割合にするのではなく,賛成派と反対派を平等の割合にしているところがほとんどだ。

そもそも,権力者側が3分の2の多数で賛成するような案って必ずしも市民にとって有利なものとは思えない。それにもかかわらず,賛成派の情報が倍以上も流され続けるシステムになっているのは,やっぱり,変だ!

憲法改正投票が避けられなくなったとき,答えの分かっている出来レースにさせないように,以上を中心とする問題点を各党の憲法委員など担当議員にメールやFAX,電話で伝えよう!!





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ベルギーの異議申し立て口頭審理9月12日,欧州司法裁判所にて~弁護士依頼者密告制度

2006-09-06 00:50:44 | 適正手続(裁判員・可視化など)
弁護士から警察への依頼者密告制度(ここ参照←クリック)に対して,世界各国の弁護士会が反対運動を繰り広げている。このうち,ベルギー弁護士会が,弁護士に密告義務を課すことは、欧州人権条約で認められる「公平な裁判を受ける権利」に反するとして,ベルギーの憲法裁判所に訴えを起こしたところ,2005年7月,同裁判所は、条約の解釈問題を欧州司法裁判所の判断に委ねることを決定した。この欧州司法裁判所の口頭審理が9月12日に,同裁判所で行われる予定だ。

この依頼者密告制度は,来年の通常国会で審議されるといわれている「犯罪収益流通防止法」に基づくもの。依頼者の利益を守る弁護士が密告義務を負わされることに対し,弁護士会は危機感を強めており,前回一丸となって反対している。

世界各国でも弁護士会は必死で,カナダでは,2001年11月,弁護士に密告義務を課する規則が制定されたが,弁護士会が各州裁判所に規則の実施差止めを求める裁判を起こし,その結果,裁判所は規則の実施差止めを命令した。この判決を受けて、2002年5月カナダ政府は規則を撤回し,弁護士の職務に適合したルールを模索すると発表したという。

ヨーロッパでの動向は注目するべきであり,9月12日の口頭審理はぜひ,多くのメディアに取材して頂きたいところです。





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