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今日の筆洗

2023年10月07日 | Weblog
 コメどころ東北は長く冷害と闘ってきた。憎むべき敵は夏に太平洋側に吹く東寄りの風「やませ」である▼オホーツク海高気圧から流れ込む冷たく、湿気のある風は稲作に悪影響を及ぼし、凶作風、餓死風とも呼ばれる。かつて困窮した農家の娘たちが売られたことはよく知られる▼戦前から青森で、低温に強い品種開発に取り組んだ研究者に田中稔がいる。藤坂という名の地で、水田に冷水を入れイネを育てるなどの試行錯誤を何年も続けて「藤坂5号」を開発した。広く普及し、昭和28年の冷害でも藤坂5号は穂を実らせた。田中は総理大臣表彰を受けたという▼新潟、福井県が開発に携わった人気品種「コシヒカリ」も低温に強く、東北でも生産されているが、今後は暑さに強い品種の開発ニーズが高まるかもしれぬ。今年の記録的猛暑によって米の粒が白濁する高温障害が東北、北陸、北関東などでみられると伝えられた▼コメの等級が下がって価格が安くなりそうで、農家には痛手である。宮城の農家が地元紙の河北新報で「1等米が少ないのは本当に残念。毎年の暑さにどう対策を講じればいいのか」と嘆いていた▼かつて田中は、作況の視察に各地を訪れた。夜の宿でやませが吹いているのを耳にし、同行の部下に「イネが泣いているのがわかりますか」と語りかけたという。暑さに泣く時代が来ると想像しただろうか。