これはじゅばんです。けっこうしぼがあり、汚れもほとんどないものでした。
これは鮮やかな「黄緑色」が地色で、「紗綾型」が白く抜いあります。
黒に近い焦茶の雲取りの中に芥子で染め疋田、合間に飛んでいるのは「源氏香」。
いつも「柄」についてのお話が多いので今日は「色」について・・。
この地色は、実物はもう少し濃くてはっきりした色合いです。
実は、和服では「緑色系」というのがあまりありません。
最近の着物では、けっこうみかけるのですが、昔のものほどとても少ないです。
薄い緑だと色褪せや汚れが多くて、結局は染め直されたりしてしまう、
ということもあるのかもしれません。
ちなみに、下は、私の手持ちの「緑系」です。
実物はもう少し濃い緑です。錦紗の元・着物。
こちらはじゅばんをほどきました。更に濃い「深緑」、すずらん柄の錦紗です。
こういう濃い目の緑は、比較的きれいに残りますが、それにしても
紫、紺、朱、赤・・と言った色に比べると、数は出ません。
ひょっとして、着物としては「人気のない色」なのかもしれません。
「色」については、日本という国は実に雅な国だと思います。
たとえば「緑系」でいうなら、最初の濃い眼の黄緑は「若緑」、
2枚目のは緑ですが「柳煤竹(やなぎすすたけ)」というのが一番近いようです。
3番目は、もっと黒ずんだ緑で「千歳茶(せんさいちゃ)」。
緑なのになぜ「茶?」、日本の茶色というのは元々はお茶の葉の色から
出ています。紅茶などのように発酵させたり、番茶のように炒ったりすると
茶、つまり「ブラウン」になりますが、茶の葉は本来緑・・ですよね。
ですから日本古来の色の呼び方で「茶」となっているのにグリーンがかった色は
けっこうあります。
このブログで、ハギレのことを書くときなど、古来の呼び方で書きたいと
思うこともあるのですが、たとえば「お納戸色」とか「鳩羽鼠」とか・・
それ、どんな色??・・ではないかと思うのです。
それで、耳慣れた「深緑」とか「紺」などと書くわけですが、
実際には微妙な違いをあらわす色の名前がたくさんあります。
全部などは到底覚えられないですが、たとえばごく薄い水色のスカーフなど
「薄水色」ではなく「甕覗き」と言ってみたら、ちょっとシャレてませんか?
「かめのぞき」というのは、藍の薄まった藍染の甕に、一度すーっとくぐらせた
程度にそまった薄い青のこと、藍の甕をちょっとのぞいてきた程度の薄い青、
という意味ですね。さだまさしの「精霊流し」には「♪今夜の着物は浅葱色」と
出てきます。歌詞では「浅黄」となっているかもしれませんが、「葱」の方が
正しいといわれています。黄と書くとどうしても「黄色」のイメージですが
実際の「あさぎ」は水色の濃い色でやや緑がかっています。
ちなみに武士が切腹のときに着る裃も、無官のものは「浅葱」でした。
だから「四十七士」が切腹したときは本当は白い裃ではなかったんでしょうね。
彼らは「浪人」でしたから・・。
日本の国旗は、歌では「♪白地に赤く 日の丸染めて・・」このあと歌えますか?
「ああ美しい 日本の旗は」だったと思うんですが・・。
で、そう歌われているにもかかわらず、国旗に関する法律で定められているのは
「地色は白、中の丸は『紅』」、紅という言葉は、たとえば「紅白戦」など
よく使われるのですが、実際の「紅色」というのは赤より少し紫がかっています。
赤に近いのは「猩々緋(しょうじょうひ)」という緋色ではないかと、
私は思っているのですが・・。ちなみに「猩々」というのは想像上の「サル」で
お酒が大好き、その血はどの動物の血より赤い・・といわれています。
その血のような赤・・ということでとても鮮やかです。
法律どおり「紅色」で国旗を作ったら、いまよりちょっと迫力に欠ける??
最初に決めた人達って、紅(くれない)って書いときゃわかるだろ・・
だったんでしょうかねぇ。素直に「赤」ってしておけばよかったのに・・。
とくに最近の顔の小さい方で、貧血気味の若いかた、うすいグリーンて沈んで見える色かも、
なんといっても暖色は初々しくみえたり、明るく見えたりと、初心者には無難な色かも
「源氏物語」には夕霧が六位の浅葱色の衣装しか着けられず、親をうらみつつ、雲井の雁の乳母から馬鹿にされて、ひそかに涙するなんてありました。下って江戸時代、さらに浅葱色は同じ武士でも下層武士の衣装の色、
さすれば色に罪はなけれども、現在でもどうもあの薄青の色、格が下なんじゃと思ってしまいます。
グリーンにかぎらず、寒色系の色、着こなすのなかなか難しいのかもしれません。
深みを加えると大丈夫なんですけどね。
色の歴史も関係あるかもしれませんね。
けっこうみつけるんですけど、あまりにもポップで着るのに戸惑います。羽織とか帯とかで、緑系がほしいんですけどなかなかみつかりません。探すのも着るのも難しい色ですが、だからよけいに燃えますっ?!
蜆子様
今は宮中のお留め色でも着られる時代・・シアワセですねぇ。浅葱は、5月ごろ着たい色なんですが、着物にすると柄によってすごく地味になるんですよね。地味好みではありますが、おばあちゃんの借り着・・ではいやだという・・ゼータクな・・。
私にとってはとても難しい色です。
自然の中の緑はとても大好きなのですが・・・。
ここからは私の推測なのですが、江戸では浅葱色の裏地を付けるのが流行っていると聞いた武士が、参勤交代の折に浅葱裏を付けてみたところ既に流行は終わっていた。つまりは情報伝達が遅かったという事だと思うのです。
男着物の半衿は「浅葱」と「臙脂」が基本色と言われております。私も迷った時はこの二色から選びます。夏~冬に向かっては臙脂、逆に冬~夏に向かっては浅葱にすることが多いです。
去年の5月に極薄緑の紬に緑の帯を”角出し”で結び、帯あげは濃い緑・帯締めはオレンジという女性を見かけました。とても清々しい印象でしたよ。
日本人に最も似合わない色はピンク・・ときいたことがあるんですが。緑も濃い色が難しいような・・。
ダン之助様
浅葱と臙脂が基本ですか・・なるほど。男のかたの「柄衿」も粋ですよね。ぜひ、襟元アップのお写真を!別記事の話題で申し訳ないんですが、腰紐の男物、ひょうたんとかダルマ柄ってありますよね。あれ狙ってるんですー。女物のモスリンの紐って、生成ばっかりでつまらないです。
(今まで明るい色は着た事がないですが)
そして今まで良く着ていた黒がきつく感じるように・・・
似合う色は、肌の色は勿論ですが、年齢、髪の色、、目の色、化粧などでかなり変ってくるようです。
外国ではピンクはお年寄りの色と聞いた事があります。
というのがその理由だと、昔何かで読んだんです。でも黄色ったってマッキッキなわけじゃありませんしねぇ。個人差だと思いますし・・。私も年取ったら赤い色を着よう・・とずっと思っていましたが、そろそろかな・・という今になっても好きな色ってのはかわりませんねぇ。洋服もほとんどモノトーンか、せいぜいクリーム色とか薄いブルーとか。タンスの引き出しを開けるとくら~いんですよね。