拓庵思考~妻との日々・映画と音楽の毎日

巴座ホーム社長の私的なつづれ織り【妻にだけ弾くギタリスト 猫6人の父になる】

「そういう声を聞くと一番嬉しい..」 

2012-07-20 16:02:49 | 日記・エッセイ・コラム

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鬼がいない里....『鬼無里』(きなさ)と読む。

信州は善光寺から20キロ位西に山間のけっこう細い道を進むと小さい村がある。現在は長野市の鬼無里地区となっているこの村は木曽義仲伝説や紅葉伝説など逸話が多い水芭蕉の生息地だ。村の高低差はけっこう急だ。民家があるので道をどんどん登って行ったら、とんでもなく山の上に出た。しかも道幅は細い。対向車が来た。60代の女性だった。地元らしきこの女性はすれ違いが困難だと判断したようで道の真ん中で彼女の運転する軽自動車で立ち往生した。「えッ!何このおばさん...えッ!どうするの!崖から落ちるよ!」妻が緊迫した声と不安な顔であせっている....が、車幅の狭い車とはまことに便利で私の車は1リッターカーなのでなんなくバックでギリギリの幅寄せをして事なきを得た。

気をとりなおしてさらに山の上の道を登って進むと『ふるさとの館』なる建物がある人間の気配がない処に出た。「え~っ誰もいないよ....営業していないよ」妻がまたしても不安そうに話す。山間だが暑い日だった...日差しが強い。自分でも道を間違っていることにようやく理解が出来た.....アジサイやアザミの花が不安な山道の景色を彩っていた。

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少し町場に下りると駐在さんの姿があった。私は道をたずねた。「すみません。いろは堂は本当にあるのですか?」「あります。もう少し先です。」  カーナビの代わりのiPadのグーグルマップの示す場所からだいぶそれた場所を教わった。

私たちの目的は鬼無里が本店のおやきのいろは堂を訪ねることだった。Photo_5

関越自動車道の上りSAの上里サービスエリアで出会った『いろは堂のおやき』。初めて購入した時は私が[かぼちゃ・つぶあん]で、妻が[野沢菜・かぼちゃ]。食べた数分後から妻が「パパ。やばい。美味しい。やばい。はまる。」....このフレーズはこの日のドライブ中数回と翌日も何回も繰り返された。当然、数日後わざわざ、おやきを買いに上里SAに行くことになるのだが...いろは堂のおやきを扱っている場所は少ない。「本店は長野の市内ですか?」と売店の方に尋ねてみると「いやァ....山の中です」とやんわりした返事が返ってきた。上里SAで初めて食した日から鬼無里の本店で、この美味のおやきを食べるまでに8日しかかかっていない。本店に来る前日も購入したので8日で三回もこの、おやきを食べた。

はっきり言って うまい。 かぼちゃは夢に出てくるくらい好きだ。あくまで我が家の私的好みだが、数あるおやきの上位ランキングは 1位かぼちゃ 2位野沢菜 3位からみ茄子(夏限定)同率3位つぶあん。次点として ねぎ味噌、ぶなしめじ、きりぼし大根がある。まだ全種類食べていない。 アザミと茄子は未経験だ。 言えることは【本店まで来る価値がある】ということだ。もうまったく違う食感だ。いろは堂のおやきには、そば粉が入っていて軽く油で焼いてある。上里SAでいただいているものは冷凍なので鮮度が違うせいか全くちがう。それでも十分以上美味しく....これから私と妻の関越自動車道上り車線の定番となるであろう。

鬼無里003いろは堂本店の店内の写真を観ていただきたい。囲炉裏端で焼いて食べる贅沢な世界を...実際は匂いを気にする都会人には使えないしろものだ。 いろは堂のおやきは油をつけて焼くタイプだが、信州のおやきは蒸すものが多い。私は、野沢菜も蒸すタイプのおやきもそんなに積極的には食べてはいなかった。

52歳にして野沢菜と焼いたおやきの上質のコラボレーションに、はまってしまった。

014鬼無里にはまた来る。

いろは堂があるから。

180円のおやきを食べにかける距離 162㎞。わざわざ食べに来る価値があると、わたしたち夫婦はおもった....私も妻も喜びの表現を感謝の相手に伝えることができる。 高崎から食べに来たことと、あんまり田舎で驚いたことを女将さんにつたえると「そういう声を聞くと一番嬉しいです....正直、上里SAにお誘いされた時は悩みました....」と、お答えになった。

いろは堂を出る妻の手に湯呑茶碗の包みがあった。いろは堂の女将さんが そっと持たせてくれたそうだ...私はとても嬉しい気持ちでいっぱいになった。162km。暑い夏の昼下がり。妻の横顔も満足そうだ。大学生のときから今日まで、そしてこれからもずっと妻と見ていく車窓の景色にまた素敵な場所が増えた....