おうた子に髪なぶらるゝ暑さ哉 斯波園女(しば そのめ)
いやあ、今年の夏は暑い。日本の夏、金鳥の夏なんて言っている余裕はない。
私事だが、私の職場にはエアコンがない(隣室にはあるので、まるっきりの劣悪状況とは言えないのだろうが)。小さな扇風機が一台。毎日、大量の汗を掻きどうしだ。
それもあって、比歌句46で定家の<行きなやむ牛のあゆみにたつ塵の風さへあつき夏の小車>を挙げた。
しかし、子育てしているお母さんは、もっと大変なんだろうなと思う。
掲句は「おんぶしている子に髷をいじられてより一層の暑さを感じる」ということだ。
推測すれば、この子は生後五か月以上十二か月ほどの児ではないかと思う。
理由は、赤んぼの目が見えるようになるのが生後三か月からだが、積極的に物をいじくりだす月齢がそのころからではなかろうかと考えたからだ。そして、一歳なるとある程度、人への配慮ができるようになり、母親が嫌がることしなくなるのではないかと思う。
但し、これはあくなでも私の思い込みではありますが。
ここ二十年、“おんぶ”という行為が著しく減ったように思う。抱っこばかりだ。
“おんぶ”という子育ての文化はなくなってしまうのだろうか?
残念だなあ。“おんぶ”は初期縄文時代から綿綿と続いてきたのに。
何故それが分かるかといえば、おんぶしている格好の初期縄文時代の土偶が見つかっているからだ。
抱っこであれば、髪をなぶられることもないが、母親の脊中の温もりを感じることもない。