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伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

龍頭

2020-09-25 23:41:30 | 民俗学

花籠より

伊那市美篶下川手の「龍頭」

 

 『葬送文化』17号(平成27年 日本葬送文化学会)における大野益通/福田充氏の「栃木県鹿沼市における土葬用葬具と近年の土葬事例について」の中で、現代の土葬を紹介しており、「龍辰」について次のように記している。

 魂が天に昇るようという思いが込められていると言われていた。写真のように印刷されたものを葬儀社が用意した。「リュウタツは現在は紙に龍の頭が描かれた物を葬儀屋が持ってくるが、昔は竹で作り、口には唐とう辛がら子しをくわえさせた。胴体は新聞紙で形作り、半紙を貼って鱗うろこを描き、それを竹に吊るした。」。
 リュウタツは「昔の人々が想像しえた一番恐ろしい生物」で、「死体に危害を及ぼす無縁の霊を追い払うためのものと思われる」。

 ここにある写真については、http://www.sosobunka.com/newsletter/pdf/no17.pdf#search='%E8%91%AC%E5%88%97%E3%81%AE%E8%BE%B0%E9%A0%AD'を参照されたいが、紙に印刷された龍辰である。そもそも現代でも土葬が行われる事例であり、興味深い報告である。

 ここでは「龍辰」と称しているが、「龍頭」と称すところが多い。伊那市美篶下川手の公民館脇の堂に付随した倉庫に納められていた葬儀道具の中にも龍頭がいくつか保存されていた。写真のもののように、頭の部分は板に彩色されたもので、胴体は布で鱗が描かれたものだった。ほかに板に鉛筆で手書きされたような頭部や、鱗の描かれた紙片も残されていたが、どのようにそれらが使われていたか記憶にある人は少ないようだ。

 『日本宗教民俗図典 2葬送と供養』(昭和60年 法蔵館)に龍頭の写真と解説が掲載されている(42頁)。青森県六ヶ所村では、「オニ(ジャ、タツリュウともいう)といい、棒の先に板製の龍頭をつけたものである。そこでは一番オニから碁盤オニまであって、死者に魔物がつかないように守ってもらうのだという」。葬列においては棺より前に位置することは共通すると紹介されている。葬具を共有している下川手のような例では同じ龍頭を使いまわすことになるが、葬儀の都度作る地域では、墓まで行くとそこに置いてくるようだ。棺とともに埋めるというところもある。

座棺


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