先日「初宮参りの供物」を記した。辰野町を中心に初宮参りに扇と真綿と麻を祈願する霊を見て民俗地図で表したものだったが、初宮参りをする日(生後何日目に行うか)を併せて地図化してみた。そもそも『長野県史民俗編』の問いは「お宮参りは、男・女児それぞれ生後何日目にやりますか」というものであって、その際何を神社に供えますか、という問いではなかった。答える中でそうした内容も聞き取っていたものであって、そもそもの問いが異なることから、答えとして網羅されているかどうかと問われると自信はない。いっぽう初宮参りは生後何日目か、というストレートな問だけに、答えは多様であった。今回地図化するにあたり、生後何日目かという数字をデータ欄に落とし込み、その上でデータを加工してみた。実際に回答された数字の最大は、男女共に100日目、最小は男19日、女20日であった。多様な数字が並ぶうえで、男女1日違いの数字を回答する事例が多かった。回答に添えて「女は低いので1日か2日遅れてお宮へ行くんだときかされていた」というものがあった。いっぽう「女の方がませているから」と言って、「男33日、女30日」という事例もあった。最頻値で示すと、男3女共に33日となった。また、実施日を実数で全て足して事例箇所数で割った数値(平均値)は、男34.3日、女33.4日と、みごとに1日違いの数値となった。しかし、図を見てわかる通り、必ずしも男の方が早いわけではなく、同日や女の方が早いという例も数多く、前述したように、必ずしも男女の数値が1日違いではなく、2日違いという例が多いがために、平均したら偶然にも1.0日という差が出たというわけである。ただし、男より女の方が1.0日早い。
さて、地図は数値が多様なため、男女同じか、男が早い、あるいは女が早い、という3社択一という図で表すこととした。男女同じという回答は北信に顕著で加えて佐久市周辺に多い。いっぽう女の方が早いという回答は全県的にあるが、顕著なのは下伊那と木曽だろうか。また、男の方が早いという回答は、栄村や長野市周辺、さらに松本周辺と上伊那に多い。これら傾向の裏には何があるのだろうか。なお、今回は小原稔氏が作成した主要街道の図を載せてみた。