働くことをとおして誇りと責任をもち、仕事を通して1人1人が自己実現の夢や希望をもつことのできる、生き生きとした社会こそが豊かな社会だと思いまつ。
その意味ではこの国の今の政治家にはもはや信託できないでつ。幕末の志士がこの国には必要でつ。あの悪夢の再来だけは避けなければなりません。
昭和の時代とは、年功序列に終身雇用だった。その終わりの始まりを彷彿させる出来事は1997年、山一証券の破綻だろう。
その年の11月。首都圏の支店で窓口担当だった女性(34)は、上司にこう言われた。3連休前日の金曜日だった。
「連休中にニュースが出るかもしれませんが、大丈夫だから」
当時、新入社員。合併?くらいにしか思わなかった。その日まで、いつも通り株を販売していたのだから。
家に帰り、友達と長電話をしていた。確か、午前1時を過ぎていたと思う。
「あなたの会社、廃業だって。ニュース速報で出てる」
廃業って、お相撲さんじゃないんだからと、なかなかわがことのように考えられなかった。
「山一で可哀想」とゲタ
休日出勤すると、「出ちゃいけない」と言われた電話が鳴り続けた。連休が明けて支店のシャッターを開けると、顧客が長蛇の列を作り、われ先にと店に入ってきた。高齢の女性に1千万円近い額の札束を薄っぺらい紙袋に入れて渡したことを覚えている。顧客の列には、他行の社員が「営業」をかけていた。
都内の中堅私大出身の彼女は97年、山一証券に一般職として入った。マスコミ志望だったが、夏休み前に山一から内定が出て、大手なら安心だと「ひよった」のだ。一生働くつもりはなかったけれど、入ってすぐに会社が消えるとは想像すらしなかった。ただ、「30代以上の人は大変そうでしたが、20代の私たちは恵まれていました」と振り返る。すぐにあいうえお順で企業名が並んだ就職リストみたいなものができて、会社の一室が大学の就職課のようになったという。
「『山一で可哀想』というゲタも履かせてもらったし、改めて本当にやりたいことを真剣に考えるようになりました」
中堅私大に予備軍
同期の落ち着き先は、外資系証券会社や客室乗務員とさまざま。彼女は中堅の広告会社に就職が決まり、翌年2月、文字通り「会社都合」で退職した。
求人倍率が低調な95~2005年あたりに大卒就職期を迎えた世代は「ロストジェネレーション(失われた世代)」と呼ばれる。リクルートワークス研究所の「大卒求人倍率調査」によれば、バブル崩壊直後の91年の求人倍率は2.86に達したが、山一ショックを経て、00年には0.99とどん底に落ち込んだ。
景気の回復とともに06年あたりから復調が見られ、ここ数年は「売り手市場」。だが、それもつかの間だったようだ。10年春に入社する現在の大学3年生の就職活動は、厳しさを増しつつある。
「採用活動の予算は1年前には決まっているのがふつうですが、業績が悪化してくると四半期、半期ごとに修正がかかる。リクルーターの活動費や説明会の回数など“実弾”を減らす企業が出てきます。不動産、流通、サービス業ではすでに採用規模の縮小を表明しているところもあります」 と、リクナビの岡崎さんは語る。
金融危機、世界同時株安と、不況の波が押し寄せている時期に就職活動がぶつかる大学生たちは、先の城さんが予測するように、「第2のロストジェネレーション」と呼ぶべき世代になるのではないか。
「関関同立やMARCHといった中堅私大の学生ほど、大企業志向が強い。三井物産にトヨタ、パナソニックというふうに人気企業ばかり回っている層は、不況になって採用人数が減ると一番あおりをくいやすい」
城さんはこう続ける。
「昭和的価値観に支配されている学生が相変わらずいます。社会の価値観の変遷がわかっておらず、アンテナが低いといわざるを得ない。彼らは第2ロスジェネの予備軍になりうる」
その意味ではこの国の今の政治家にはもはや信託できないでつ。幕末の志士がこの国には必要でつ。あの悪夢の再来だけは避けなければなりません。
昭和の時代とは、年功序列に終身雇用だった。その終わりの始まりを彷彿させる出来事は1997年、山一証券の破綻だろう。
その年の11月。首都圏の支店で窓口担当だった女性(34)は、上司にこう言われた。3連休前日の金曜日だった。
「連休中にニュースが出るかもしれませんが、大丈夫だから」
当時、新入社員。合併?くらいにしか思わなかった。その日まで、いつも通り株を販売していたのだから。
家に帰り、友達と長電話をしていた。確か、午前1時を過ぎていたと思う。
「あなたの会社、廃業だって。ニュース速報で出てる」
廃業って、お相撲さんじゃないんだからと、なかなかわがことのように考えられなかった。
「山一で可哀想」とゲタ
休日出勤すると、「出ちゃいけない」と言われた電話が鳴り続けた。連休が明けて支店のシャッターを開けると、顧客が長蛇の列を作り、われ先にと店に入ってきた。高齢の女性に1千万円近い額の札束を薄っぺらい紙袋に入れて渡したことを覚えている。顧客の列には、他行の社員が「営業」をかけていた。
都内の中堅私大出身の彼女は97年、山一証券に一般職として入った。マスコミ志望だったが、夏休み前に山一から内定が出て、大手なら安心だと「ひよった」のだ。一生働くつもりはなかったけれど、入ってすぐに会社が消えるとは想像すらしなかった。ただ、「30代以上の人は大変そうでしたが、20代の私たちは恵まれていました」と振り返る。すぐにあいうえお順で企業名が並んだ就職リストみたいなものができて、会社の一室が大学の就職課のようになったという。
「『山一で可哀想』というゲタも履かせてもらったし、改めて本当にやりたいことを真剣に考えるようになりました」
中堅私大に予備軍
同期の落ち着き先は、外資系証券会社や客室乗務員とさまざま。彼女は中堅の広告会社に就職が決まり、翌年2月、文字通り「会社都合」で退職した。
求人倍率が低調な95~2005年あたりに大卒就職期を迎えた世代は「ロストジェネレーション(失われた世代)」と呼ばれる。リクルートワークス研究所の「大卒求人倍率調査」によれば、バブル崩壊直後の91年の求人倍率は2.86に達したが、山一ショックを経て、00年には0.99とどん底に落ち込んだ。
景気の回復とともに06年あたりから復調が見られ、ここ数年は「売り手市場」。だが、それもつかの間だったようだ。10年春に入社する現在の大学3年生の就職活動は、厳しさを増しつつある。
「採用活動の予算は1年前には決まっているのがふつうですが、業績が悪化してくると四半期、半期ごとに修正がかかる。リクルーターの活動費や説明会の回数など“実弾”を減らす企業が出てきます。不動産、流通、サービス業ではすでに採用規模の縮小を表明しているところもあります」 と、リクナビの岡崎さんは語る。
金融危機、世界同時株安と、不況の波が押し寄せている時期に就職活動がぶつかる大学生たちは、先の城さんが予測するように、「第2のロストジェネレーション」と呼ぶべき世代になるのではないか。
「関関同立やMARCHといった中堅私大の学生ほど、大企業志向が強い。三井物産にトヨタ、パナソニックというふうに人気企業ばかり回っている層は、不況になって採用人数が減ると一番あおりをくいやすい」
城さんはこう続ける。
「昭和的価値観に支配されている学生が相変わらずいます。社会の価値観の変遷がわかっておらず、アンテナが低いといわざるを得ない。彼らは第2ロスジェネの予備軍になりうる」