2006 No.8 7/18-9/3
作者:アガサ・クリスティー(早川書房 クリスティー文庫 720円)
評価・・・★★★★★ 5.0
<あらすじ>
呪われた土地と噂される“ジプシーが丘”で、マイクはアメリカの富豪の娘・エリーと出会い運命的な恋に落ちる。
やがて二人は結婚し、“ジプシーが丘”にマイクの友人サントニックスが設計する屋敷を建て、暮らし始める。
しかし、幸せなときは長く続かず、エリーが落馬して亡くなるという悲劇が起こる。
果たしてそれは“ジプシーが丘”の呪いのせいなのか?
それとも・・・
この作品はミステリとしては異色作といえますが、作者クリスティーのお気に入りの作品10本のうちの1作で、私にとってもお気に入りの作品です。
全体に悲劇的な雰囲気が漂っていて、中にはメロドラマ調に感じる人がいるかもしれませんが、切なさがこみ上げてくるこの作品が私は大好きです。
この作品でクリスティーは、ミステリよりも、愛と幸福の難しさについて描きたかったのではないかな。
すぐそばに真実の愛と幸福を得るチャンスがあるのに、それに気づかなかったら・・・それってすごく不幸なことだと思う。でも、そういうようなことは現実にはよくあることなのかもしれない。そう思うとすごく怖いけど、だからこそ愛する人にめぐり会えるということの尊さを感じる。
この作品のもう一つのテーマは異常な心理について。
クリスティーは異常心理について描いた作品が他にもいくつかあるけど、そういう作品を昔から書いていた(ちなみにこの作品は1967年の出版)というところが結構時代の先を行ってるように感じるのは、クリスティーファンの欲目かな(^^;)
思いっきり切ない気分にひたりたい&ビックリしたいという人にはオススメの作品です。