2008 No.15 7/11~7/14
作者:アガサ・クリスティー(早川書房クリスティー文庫)
評価・・・★★★★★ 5.0
クリスティー自身が選んだお気に入り10作品の中の1作品です。
ポアロやマープルといった人気探偵が登場しない作品です。
ある犯罪で有罪とされて獄中で亡くなった人が実は無罪だった・・・
その知らせを親族に伝えたところ、喜ばれるどころか迷惑扱いされてしまった男。
そのままにしておけないと首を突っ込んでいくうちに明らかになっていく真実とは・・・というのがあらすじです。
特異な家族関係が事件の謎に深くからんでいて、なかなか読み応えがあります。
巻末の解説ではいくつか問題点が指摘されてはいますが、その辺は多めに見て欲しいな。
「ある特異な家族をミステリ風に描いた小説」という読み方にも充分耐えられる作品だと思います。
トリックそのものの鮮やかさより、犯罪者の特異な(あるときはごく一般的な)人間性や、被害者などの犯罪関係者の心の動きといった‘人間’を良く描いているからこそ、私はクリスティーが好きなんですよね。その気持ちを再認識した作品でもありました。