50のひとり言~「りぷる」から~

言葉の刺激が欲しい方へ。亡き父が書きためた「りぷる」(さざ波)を中心に公開します。きっと日常とは違った世界へ。

電車は宇礼市に滑り込んでいってた。・・・

2015-06-11 20:23:02 | 小説
電車は宇礼市に滑り込んでいってた。理恵は、プラットホームででむかえているだろう男への目印、深紅のバラが咲く紙袋に手をのばした。目線で、先に降りると敏彦に言い、
「はい」
と言う彼の明るい声に、理恵は目を細める。投げキッスを残してやりたいけれども。
「岬ホテルで」
と囁く風に言って窓際の席から立った。

(つづく)