Zombie - Cranberries MTV Unplugged
なごり雪
時代おくれの酒場 / 高倉 健
銀のさら CM 母と子
健さん、いいね~。
こういう映画俳優もう出てこないだろうね。
さて、またまた昔書いたやつまた載せます。
しつこいようでごめんなさい。
かなたくんのこと
からく
かなたくんが我が家に現れるようになったのは次男が小学校六年生のころである。
たしか息子の友人の一人として紹介されたような気がする。
息子が”芝崎かなたくん”と私に紹介したとき、ああ、あの芝崎さんちの・・・、と私は眉をひそめた覚えがある。
なぜ眉をひそめたかというと、かなたくんのおとうさんは地域で有名な反社の人間だったからだ。
父ひとり、子ひとりの環境で育ち、父親は近所の人に会っても挨拶一つ交わさないはぐれもので、柴崎組に所属しているとのもっぱらの噂だった。
なんで連れてきたんだと後で息子を問いつめたところ、友達じゃん、どうして駄目なのさと逆にたしなめられた。
私は職業の貴賎で人を選ぶなと息子たちに教育してきたので、大いに恥じ、子供に罪はないものなと思い直したものだ。
そんな環境で育ったかなたくんはうちで飼っている黒芝の”コロ”がお気に入りだった。
彼が初めてコロと対面したとき、コロは吠えなかった。気性の荒いコロが初対面の人間に吠えないということはまずありえない。だが、吠えるどころかコロは丸まった尻尾をふりふり彼に近寄り彼の顔をぺろぺろ舐めだしたのだ。私は驚き、そしてかなたくんはきっと心根が優しい子なのだなと思った。
それからかなたくんは息子の友達というより、コロの友達としてちょくちょく我が家を訪れるようになった。
月に二、三回、時には毎日のように学校帰りにコロの様子を見に来た。
私はそんな2人(?)をいつも微笑ましくみていて、私が声を掛けるとかなたくんは、えへっ、と笑い、「こんちわ」と挨拶をする。挨拶された私も嬉しくなり、彼らの仲間に入ってコロと遊びながらかなたくんといろいろなことを話した。家族のこと、学校でのこと、一人ぼっちであること、息子だけが普通に接してくれるんだと、とつとつと語ってくれた。
私はそんな彼が愛おしくなり、自分の三番目の息子のような気がしてしかたなかった。
真っ直ぐ育って欲しい、そう痛切に感じていた。
学校で暴力事件を起こしたと聞いたこともあったが、コロの前にいる彼はあくまでも純朴で素直な少年だ。
私は、自分の目で見、耳で聞いたことを信じた。
そんな関係が三年近く続いたころだろうか、中学の卒業式まであと三か月にせまったある日、かなたくんはコロの前で暗い顔を浮かべていた。
私はそれまで彼のそんな顔を見たことがなかったので、不安になり声をかけた。
「どうした、そんな深刻な顔して」
「うん」
「なんかあったのか?」
「・・・・・」
「俺には話せないことか?」
「いや、そんなことない」
「じゃあ話してみたら?」
かなたくんは私の顔を見てそれから目を伏せた後、こうぽつりと言った。
「千葉に行くんだ」
「えっ?」
「・・・・・・お祖父ちゃんのとこ行けってさ」
「誰が?」
「親父。・・・お祖父ちゃんのとこ行ってまっとうな人間になれってさ」
私は驚いた。驚いて、一瞬にして冷静になった。冷静になって彼の父親がどういう思いで彼に対してその言葉を口にしたのか理解した。
「・・・そうしたほうがいい」
「うん」
「はっきり言って今のお前の周りの環境は良くない。来年は高校生だ。将来を考えるなら今かもしれない」
「・・・・俺は捨てられたんだろうか」
「いや、そんなことない。お父さんだって、別れたくないさ。でもお前の将来を考えるとそうしたほうがいいと考えたのだろう」
「・・・・そうかな」
「そうさ、きっとそうに違いない」
「うん」
彼はそう返事を返すとコロの鼻先をちょんと指先ではじいた。
コロはびっくりして目を丸くしながら彼を見つめていた。
それから後、かなたくんと私の特別な物語は、ない。
彼は卒業を迎えるまで我が家を訪れることなく、やっと卒業式を終えた日に息子とともにコロに最後のお別れをすべくひょっこりと現れた。
彼はコロを前にして照れくさそうにしてつぶやいた。
「バイな」
それがコロに対するかなたくんの別れの言葉だ。
あっさりしているくらい潔いコロと彼との別れの瞬間だった。
あれから五年が過ぎた今、私は写真を眺めている。かなたくんと息子とコロが並んで写っている写真だ。三人(?)仲良く満面の笑みを浮かべて(?)写っている。この写真はかなたくんの手元にはない。送ろうとも考えていたのだが、何故だか躊躇していた。
そろそろ彼のもとに返してやるか・・・・
最近やっとそんな気になって私は彼への手紙をしたためている。
なごり雪
時代おくれの酒場 / 高倉 健
銀のさら CM 母と子
健さん、いいね~。
こういう映画俳優もう出てこないだろうね。
さて、またまた昔書いたやつまた載せます。
しつこいようでごめんなさい。
かなたくんのこと
からく
かなたくんが我が家に現れるようになったのは次男が小学校六年生のころである。
たしか息子の友人の一人として紹介されたような気がする。
息子が”芝崎かなたくん”と私に紹介したとき、ああ、あの芝崎さんちの・・・、と私は眉をひそめた覚えがある。
なぜ眉をひそめたかというと、かなたくんのおとうさんは地域で有名な反社の人間だったからだ。
父ひとり、子ひとりの環境で育ち、父親は近所の人に会っても挨拶一つ交わさないはぐれもので、柴崎組に所属しているとのもっぱらの噂だった。
なんで連れてきたんだと後で息子を問いつめたところ、友達じゃん、どうして駄目なのさと逆にたしなめられた。
私は職業の貴賎で人を選ぶなと息子たちに教育してきたので、大いに恥じ、子供に罪はないものなと思い直したものだ。
そんな環境で育ったかなたくんはうちで飼っている黒芝の”コロ”がお気に入りだった。
彼が初めてコロと対面したとき、コロは吠えなかった。気性の荒いコロが初対面の人間に吠えないということはまずありえない。だが、吠えるどころかコロは丸まった尻尾をふりふり彼に近寄り彼の顔をぺろぺろ舐めだしたのだ。私は驚き、そしてかなたくんはきっと心根が優しい子なのだなと思った。
それからかなたくんは息子の友達というより、コロの友達としてちょくちょく我が家を訪れるようになった。
月に二、三回、時には毎日のように学校帰りにコロの様子を見に来た。
私はそんな2人(?)をいつも微笑ましくみていて、私が声を掛けるとかなたくんは、えへっ、と笑い、「こんちわ」と挨拶をする。挨拶された私も嬉しくなり、彼らの仲間に入ってコロと遊びながらかなたくんといろいろなことを話した。家族のこと、学校でのこと、一人ぼっちであること、息子だけが普通に接してくれるんだと、とつとつと語ってくれた。
私はそんな彼が愛おしくなり、自分の三番目の息子のような気がしてしかたなかった。
真っ直ぐ育って欲しい、そう痛切に感じていた。
学校で暴力事件を起こしたと聞いたこともあったが、コロの前にいる彼はあくまでも純朴で素直な少年だ。
私は、自分の目で見、耳で聞いたことを信じた。
そんな関係が三年近く続いたころだろうか、中学の卒業式まであと三か月にせまったある日、かなたくんはコロの前で暗い顔を浮かべていた。
私はそれまで彼のそんな顔を見たことがなかったので、不安になり声をかけた。
「どうした、そんな深刻な顔して」
「うん」
「なんかあったのか?」
「・・・・・」
「俺には話せないことか?」
「いや、そんなことない」
「じゃあ話してみたら?」
かなたくんは私の顔を見てそれから目を伏せた後、こうぽつりと言った。
「千葉に行くんだ」
「えっ?」
「・・・・・・お祖父ちゃんのとこ行けってさ」
「誰が?」
「親父。・・・お祖父ちゃんのとこ行ってまっとうな人間になれってさ」
私は驚いた。驚いて、一瞬にして冷静になった。冷静になって彼の父親がどういう思いで彼に対してその言葉を口にしたのか理解した。
「・・・そうしたほうがいい」
「うん」
「はっきり言って今のお前の周りの環境は良くない。来年は高校生だ。将来を考えるなら今かもしれない」
「・・・・俺は捨てられたんだろうか」
「いや、そんなことない。お父さんだって、別れたくないさ。でもお前の将来を考えるとそうしたほうがいいと考えたのだろう」
「・・・・そうかな」
「そうさ、きっとそうに違いない」
「うん」
彼はそう返事を返すとコロの鼻先をちょんと指先ではじいた。
コロはびっくりして目を丸くしながら彼を見つめていた。
それから後、かなたくんと私の特別な物語は、ない。
彼は卒業を迎えるまで我が家を訪れることなく、やっと卒業式を終えた日に息子とともにコロに最後のお別れをすべくひょっこりと現れた。
彼はコロを前にして照れくさそうにしてつぶやいた。
「バイな」
それがコロに対するかなたくんの別れの言葉だ。
あっさりしているくらい潔いコロと彼との別れの瞬間だった。
あれから五年が過ぎた今、私は写真を眺めている。かなたくんと息子とコロが並んで写っている写真だ。三人(?)仲良く満面の笑みを浮かべて(?)写っている。この写真はかなたくんの手元にはない。送ろうとも考えていたのだが、何故だか躊躇していた。
そろそろ彼のもとに返してやるか・・・・
最近やっとそんな気になって私は彼への手紙をしたためている。