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ECHOES ZOO
愛をください
作者経歴
辻仁成
‘89年、小説「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞。
以降、作家、詩人、映画監督、音楽家などさまざまな分野で表現し続けている。
‘97年、「海峡の光」で芥川賞。
‘99年、「白仏」で仏フェミナ賞・外国小説賞を日本人として唯一受賞している。
〇あらすじ
施設で育ち人生に絶望していた18歳の遠野李理香のもとに1通の手紙が届く。
函館に住む長沢基次郎という23歳の男性からだった。
同じ境遇の基次郎に心を開き手紙のやり取りをする李理香。
その文通には意外な事実が隠されていた。
函館に住む長沢基次郎という23歳の男性からだった。
同じ境遇の基次郎に心を開き手紙のやり取りをする李理香。
その文通には意外な事実が隠されていた。
〇レビュー
最初は、題名からただの恋愛小説の類だと思っていた。でも読み進めていくうちにこれは純粋な「愛」の物語であることに気が付いた。作者は往復書簡という手法を用い、ただそれだけで、物語を進めていく。李理香と基次郎、二人は手紙のやりとりだけで決して会うことはない。普通ならそれだけだと中だるみし、中身のない小説になりがちだが、決して飽きることはない。それどころかぐいぐいとその小説世界へ引き込まれていく。
また、私がこの小説を読んで最も着目したところは作者が手紙を通して李理香の心の移り変わりを非常に綿密に描いている点だ。上手くやっていきたい、でも出来ない。幸せの匂いをかいでみたい、でもそれがどんなものか分からない。人間らしいまでに弱い、でもどこかで困難を乗り越え強くありたいと願う。李理香の手紙は、普通の近況報告から女の子らしい悩み、時には感情を爆発させた投げやりな手紙・・・一通一通に嘘の無い息遣いが聞こえてくるようだ。
一方で、李理香の手紙に応える基次郎の手紙も温かみのある、愛情に満ちたものである。時に恋人、時には兄のように接し、基次郎は優しくしっかりと李理香に「生きること」を教えていく。
二人の手紙はまるで自分に宛てられた手紙のように私の心に侵食していく。メールの普及で手紙を書く機会が随分減った。でも相手の筆跡にぬくもりを感じられるのは手紙ならではだ。
この小説を読んでみて私も久しぶりに手紙を書きたくなった。
さて、誰に宛てようか・・・・。
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