からくの一人遊び

音楽、小説、映画、何でも紹介、あと雑文です。

the brilliant green - I Just Can't Breathe...

2021-07-24 | 小説
the brilliant green - I Just Can't Breathe...



Josienne Clarke - Sit Out (Official Video)



Hampstead Girl - The Dream Academy (Tokyo 2017)



millennium parade - U




(ちんちくりんNo,37)



「靖のうちは母子家庭だ。お父さんは靖が二歳のときに事故で亡くなったそうなんだが。その時お母さんは三十半ば過ぎていたのだけれど、結局補償の類ももらえず、元々が安アパート住まいでそれ程裕福とは言えないうちだったので、すぐに働かざるを得なかったらしい。仕事はすぐ見つかったそうだよ。でもね、それはよくある精密部品工場のパートで母子で生活するには少し心許ない収入しか得られない。それでもね、そこに決めたのはそれなりの企業の関連らしく、働く母親のための託児所みたいなものが併設されていたからだ。そこに勤務時間中は靖を預けてお母さんは働いた。靖が保育園に行くようになると、行き帰りの保育園バスがあったから工場の前で乗せてもらって、帰りもそこで降ろしてもらった。―ああ、工場には同じような境遇のお母さんたちがいたので、工場の前がバスの送迎の指定場所の一つになっていたんだね。で、・・・そういう母子の生活サイクルは不自由がないとは言わないが、まあまあ上手くいってたそうだ。だけどね、そういった生活のサイクルがいつまでも続くはずがない。靖が小学校に上がる頃にはよりお金がかかってくるし、靖の将来を考えればお金も貯めなきゃならない。そこでお母さんは夜の時間帯にも別の仕事をすることにした。
・・・・・・その仕事のこととそれに就いているお母さんのことがね、後々靖が小学校五年生のときに同級生に酷く侮蔑され、虐められ、最後には家に引きこもってしまう原因になってしまったんだ」

 ふぅ、そこまで一気に喋ると横山先生は息を吐き、試合の様子を伺う。バッターボックスにいるのは靖ではなくなっていた。あれれ、っと目を移すと二塁ベースに靖は足を付け、何が可笑しいのか僕らに向かって手を振り笑っている。僕は右手を上げ振り返した。

「・・・お前の母ちゃん"売春宿"」

「え?」突然横山先生が意味不明なことを言い出したので、少しの驚きが僕の心を揺らした。

「靖はそう言われたそうだ。勿論、真実ではない。靖のお母さんは、モーテルで受付や雑用の仕事をしていただけなのだから」

 モーテルが売春宿?小学校五年生ならモーテルの客が主にどういう目的で入ってくるのか、何となく想像つく子もいるだろう。しかし売春宿というのは「場所」を提供することだけが商売ではなく、むしろ非合法な「そのもの」を商売とするところだ。今の小学校五年生から簡単に口に出る言葉だろうか?

「恐らく親から聞いたのだろう。モーテルを侮蔑を込めて"売春宿みたいなもの"とでも言ったのかな」

 横山先生の瞳には正体の見えない「悲しみの怒り」が宿っているような気がした。ただ赤く燃えている炎だけではなく、裏に冷たく真っ青な炎が密かに隠れているような。

「それで・・・、虐め、引きこもり・・・という」

「そう、五年生の二学期からはほぼそういう状態だったらしい」

「それを、どうやって元の状態に・・・」

「その時の担任だな。・・・ほら彼だ」

横山先生の視線の先にはこの試合ののアンパイアがいた。「あの人ですか」

「そう、彼。彼がね、まずはお母さんに靖としっかり向き合って話し合ってくださいと。自分は決して恥じる仕事はしていないと・・・。その上で彼は靖に交換日記しないかい、と話しかけた。そして徐々に交換日記をしていく中で、ここだ!と思った時に、このボランティアが企画している行事に誘ったそうだ。賭けだった。自分のやっていることは学校にもそれほど詳細には報告していなかったので、越権行為なんじゃないかと悩んだそうだ。結果、靖は君も知っている通り学校にも元気に明るく来てるし、今、あそこにい、・・・あれ?いないぞ。ん?」

 二塁ベースに靖はいなかった。ああ、皆グラブを手にしてるところをみると、スリーアウト・チェンジ!ってことか。「先生」後ろから声がする。「なに横山先生と話してたのさ」靖がニタニタしながら突っ込んで来た。

「あ、いや、あー守らなきゃな。さて」

 僕が慌ててグラブを取って立ち上がると、靖はへへっと笑いながら僕を見上げた。

「先生いいよ、クビだね、あんなんじゃ。横山先生とこうた~い、です」

 へえええ、僕は力が入らなくなり、へなっとベンチにまた腰を下ろした。横山先生も笑っている。―こんちくしょうめ。

コメント (2)
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Joe Strummer And The Mescaleros - Tony Adams

2021-07-22 | 音楽
Joe Strummer And The Mescaleros - Tony Adams



AJICO | "The LIVE-HOUSE" No.004 by JOHNNIE WALKER



中納良恵『待ち空 feat. 折坂悠太』




サッカー男子

久保選手のシュート・ゴールは見事。ビューティフル!

堂安は今日は存在感がなかった。

日本の課題は、ボールを持ちすぎること。(ワンタッチ・ツータッチで前に進む。その上での長短織り交ぜたパスとサイドチェンジ)

後は、いつも思う事なのだけれど、優秀なパサー・フリーキッカーが欲しい。

過去で言えばガンバの遠藤みたいな・・・。中村俊輔タイプもいい。クレバーな・・・、という点では中田だっていい。

そういう選手、最近の若い人には見ないなぁ。


今日の試合を観れば、結構ゴール前でフリーキック獲得していたし(主審が違っていたらもっともらえていたかも)、コーナーキックもそれなりにあったからね。

上記の二選手みたいな選手がいれば、一点くらいはもぎ取ったかもネ。

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akai hana shiroi hana

2021-07-21 | 音楽
akai hana shiroi hana  Shione Yukawa



Kimbra - "Cameo Lover" (Live at Sing Sing Studios)



Czecho No Republic - Everything @ BAYCAMP2020



Radiohead - My Iron Lung


👇おまけ

今井美樹 - 「中央フリーウェイ」MV


ソフト勝ったな~、なでしこサッカードロ~だな~。

明日男子サッカーだっけ?

出来るのかな~、感染広がらなければいいのだけれど・・・。(-_-;)

・・・でも正直言って試合は楽しみ。

好きなものは好きなのである。(*_*;(ヒラキナオリなのだ・・・汗)
コメント (4)
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COIL/BIRDS

2021-07-20 | 音楽
COIL/BIRDS



Yesterday Man   Robert Wyatt



春夏秋冬  井筒香奈江



中納良恵『あなたを』


👇おまけ

筒美京平コレクション 1 【1960・70年代】


こうやってみてみると、筒美京平という人物は本当に才能のある人だったんだな、って思う。

まさか、「怪物くん」まで。

もともとはレコード会社(東芝EMI?)の社員。その当時から、ジャズについての造詣が深かったようだ。

「あんなんだったら俺の方がいい曲がつくれる」と言い放ち、作曲家になったとかの伝説がある。

「また逢う日まで」はもうどう礼賛していいのか分からないほど名曲。
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The Basics "Lookin' Over My Shoulder" [Official Video]

2021-07-20 | 小説
The Basics "Lookin' Over My Shoulder" [Official Video]



夢の途中 来生たかお・セーラー服と機関銃・adobe Film Process



Permanents(田中和将&高野勲 from GRAPEVINE) with 阿部芙蓉美 - エレウテリア @ZIG ZAG SHOW




Alice in Wonderland White Rabbit Jefferson Airplane RexRed




(ちんちくりんNo,36)

 
 その時は有難く思いながらも断った。未だ迷い続けている自分が素直に"はい"とは言わせなかった。

「よかったよ。君が来てくれて」

 横山先生は今年五十になる中年男の落ち着いた声とともに、剃り残しの目立つ頬を撫でながら、優しい笑顔を僕に見せてくれた。

「いや、一回断ったはずなのにありがたいです」

「はは、一昨日学校に来てくれた時には本当に嬉しかったよ」

 僕は横山先生に感謝の言葉を述べながら、バッターボックスの方を見た。三番バッターか・・・。確か、うちの中学校の野球部男子。ピッチャーは小学生らしき小柄な女子。ネクスト・バッターズ・サークルには前の回、ピッチャーをしていた靖が控えていた。ベンチに座っている面々を見ると小学生や他の中学校の生徒たちに交じって知った顔がちらほらと。それは相手側も同じで守備についている中には知った顔がいる。一塁側で出番を待って声を張り上げているものの中にも。
 それにしても、審判は何者か。アンパイアは多分別の小学校か中学校の教員なのだろうが、一塁、二塁、三塁の三人と線審の二人の五名は若く、僕と変わらない年齢にみえた。多分、向こうの方で試合をしている二チームも同じような構成で試合をしているのだろう。

「審判の若い連中は?」

「ああ、ボランティア。うちの大学のボランティア・サークルの面々だね」

「うちのボランティア・サークル・・・」

「そう。そもそも今日のような企画も彼らのお陰で成り立っている」

 "ボランティア・サークル"と聞いて、僕はどうもその趣旨というか、何故ソフトボールの企画とか審判をすることが、ボランティアに繋がるのか理解することが出来なかった。ボランティア、といったら老人ホームの慰問とかでは・・・。

「ここに来ている子供たちは、もともと何らかの事情がある子供たち」

「えっ」

 僕の微かな狼狽えを楽しむように覗いたあと、「おお」横山先生は打席の方を見遣ったので、僕もまた釣られて見た。小柄な女の子ピッチャーが一旦グラブを胸に置き、静止したかと思ったら右腕を鞭のようにしならせ一回転、下手から一瞬放たれるボールが見えたと思った時にはもうボールはキャッチャーのミットの中で、うちの三番バッターの金属バットは空を切っていた。キャッチャーまでの距離は野球よりソフトボールの方が短い。しかも下手から投げる球はホップするので、プロ野球の選手でも社会人ソフトボール・ピッチャーの球をとらえるのは160㎞/hの球を打つのに等しいらしい。「三振しちゃったね」横山先生はちょっと悔し気に片目を瞑った。

「例えば、家に引きこもっちゃうとかね・・・」

「・・・・・・」

「親が勉強することを極端に強要されてる子。酷い虐めに遭っている子、家での虐待を受けている子。家が商売屋で勉強が出来ない、親の強烈な圧によって将来を決められちゃってる子。―色々だね。ボランティア・サークルはそういった子たちに何らかの形で寄り添う為に存在する」

「引きこもりに、虐め・・・親の圧力、将来か」

「勿論、僕たちも協力しているし、本来は僕たちがやるべき事なのだけれどね。彼らには感謝している・・・」

「あの子は?あの子もなにか」

 僕は次に四番としてバッターボックスに立った靖の方に顔を向けた。靖は教育実習中僕の授業で率先して皆をまとめるリーダー役になってくれた子だ。明るく機転が利き、聡明な子である。とても虐めとかそういうことがあった子には思えない。「そう、例えば靖は―」横山先生は今度はとても重たそうに口を開いた。


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