とかくに人の世は・・・

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  nob

知ること、知らせること

2012年05月21日 | 世の中のこと
もう何代前になるだろうか。小泉純一郎という総理大臣がいた。この国の首相としての彼を支持することはなかったが、唯一賛同できる瞬間があった。2001年熊本地裁でハンセン病訴訟に対する原告勝訴判決が出され、時の小泉純一郎首相が「国は控訴しない」という「総理大臣談話」を発表した。それによって判決が確定した。
私は国が最後まで争うだろうと予想していただけに意外であった。その後ハンセン病患者を救済する法整備ができて、順調に補償や名誉の回復が行われるものと思っていた。しかしそれはこの問題の終結ではなくてやっと始まったところだった。

「もういいかい ハンセン病と三つの法律」という記録映画を観る機会を得た。この映画はおよそ100年にわたり、「癩予防ニ関スル件」「(旧)癩予防法」「(新)らい予防法」という三つの法律によって行われた絶対隔離政策で虐げられ、差別されてきたハンセン病患者の歴史の実態を元患者の証言を中心に制作されている。

映画は、ハンセン病療養所にある「納骨堂」の場面から始まる。今も故郷へ帰ることができない遺骨が安置されている。家族はもとより社会から切り捨てられたのである。深い心の傷を与えた隔離政策がなぜ20世紀末まで続いたのか。重い証言とともに振り返る。
収容所では強制収容された患者に子をもつことを許さない断種と堕胎が公然と行われていた。もと患者や医師、弁護士ら22人の証言によって、ハンセン病患者の「絶滅政策」を浮き彫りにしていく。「病気の絶滅ではなく患者の絶滅である」こんな狂気が国策として行われていたのである。
タイトルは、死んでも故郷に帰れない無念を詠んだ川柳「もういいかい 骨になっても まあだだよ」から。

病気に対する間違った知識や偏見が差別を助長しいまだ苦しんでいる患者の存在を目の当たりにして社会に対する悲しみと憤りを胸にした143分であった。
この映画を観て、「本当のことを知る大切さ、本当のことを知らせる大切さ」を実感した。一人ひとりがまずできることなのかと。

製作/鵜久森 典妙  「もういいかい」映画製作委員会
監督/高橋 一郎 
脚本/川島 信治、 高橋 一郎
撮影/原 ひろし
語り/鈴木 瑞穂 
<記録映画/2012年/カラー/スタンダード/デジタル/143分>

「もういいかい ハンセン病と三つの法律」予告編

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