久遠の絃

-くおんのいと-
since 2003/9/1
キレイな写真なんていらない。もっと本当の姿が見たい

夜の長い

2007年09月30日 22時40分07秒 | ことばのうみ
 夜は暗すぎるから、一本だけロウソクを灯すの。
 燭台にロウソクを置いてね、そっと火をつけるの。そうすれば見えない世界が見えてくるわ。それは電球だと明るすぎて見えないんです。やわらかな明かりでしかそれは見えないんです。
 夜は本当は暗いものなんです。人は星と月の明かりを忘れてしまったのね。でも誰もそれに気がつかない。創り出した明かり。
 いつか人が火を手に入れた時から変わってしまったのね。私たちは本当の夜というものを知りません。どこかに何らかの明かりがありますから。でもそんな明かりのない世界。想い描くだけの世界にはどうやっても戻ることは出来ません。
 でもこうやって思い出すことは出来るのかもしれません。ロウソクの明かりでペンを取るように。
 ゆらりゆらりと光が揺れます。秋の夜の気持ちのいい風が虫の声を届けに来てくれます。
 静かな夜に、この秋の夜長に、更けていく今日と明日の境目。それは忘れていた何かを思い出すような――
 やわらかな光の中で


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