目の前にあるはずの僕の影がだんだんと変わっていく。
いつのまにかそれは僕の形からはずれ、独りでに動き出そうとしている。
”止められない・・・・・・”
立ちすくむ僕をあざ笑うかのように影がにやりと笑った。思わず一歩後ずさりしようとした僕の足。でも動かない。まるでがっちりと地面に引き留められていて動かない。思わずしりもちをつく。そして影が言う。
”君は動いちゃだめだよ。君はぼくが動くとおりに動くんだ。君は自分の姿を忘れてしまったのかい?”
影が見下ろしたように僕に問いかける。そう、だんだん影が伸びていく。へたり込んだ僕を影がじっと見つめる。
はっとした。手が離れない。
手はいくら引き離そうとしても離れない。床に張り付いたまま動こうとしない。手も足もどう動かそうとしても、床を離れることが出来ない。まるで床に落として溶け出していくアイスクリームのように。体が重い。本当に溶け出していくように。僕の体は床に引き寄せられるように。
天井を見ながら倒れ込む中で、首を上げて体を確認する。指の先からだんだんと黒ずんでいくのがわかった。
”影は僕か?”
強い口調で言葉をはき出す。にらみつけたはずの影が笑い、それはだんだんとどこかで見た顔、まるで鏡の中にいる僕の顔へと変わっていく。影は楽しそうに口を開く。
”君は変わりたいと願っただろう? もっともっと違う自分になりたいと。だからぼくが出てきたんだ。君と交代するためにね”
影がはき出したその言葉をきっかけに、指先の黒ずみが加速する。ざわざわと音を立てるように、静かに黒い色が広がっていく。手のひらを超えてじわりじわりとぼくの体が影に変わっていく。
”それは違う、僕はそんなの望んでいない!”
僕の黒く塗りつぶされた体がだんだんと影だったものへと移り変わっていく。
””やめろ! やめてくれ!””
叫んだ口は、影だったものも同じように。それはまるで僕ともう一人の僕が同時に口を開いて同じ言葉を叫んだような。そしてまた影が口を開く。
”君はぼくの影であればいいんだ。ぼくと同じ行動をして、ぼくの後をついてくればいいんだ。ぼくの言うとおりに動いてくれればそれだけでいいんだ”
いつのまにか黒い色は腕を通り越し、体の中へと入り込んでくる。
まるで頭の中まで影になっていくようで。胸を押さえられ、のどを止められ、口から吐き出した息は黒い霧のようで。 耳は聞こえなくなって、目の前が真っ暗になっていく。頭がだんだんぼんやりしてくる。そしてふらふらと倒れ込みそうになる。
でも、倒れ込んでしまえば本当に影になってしまいそうで・・・・・・
最後に見たものは地面を見つめて笑うような「ぼく」で・・・・・・
倒れ込んだ僕は音もなく地面に吸いこまれるように、うすっぺらで・・・・・・
気がついた時には自分の影を見つめる僕がいて、僕の動きに合わせて動く影があって、いつもと変わらない床といつもの景色があって。
”で、ぼくはどっちなんだろう?”
影に問いかけてみても何も答えず。二人して同じように首をひねるだけで。ただ、そのときの影が少し笑ったように見えたのは、ただの思い過ごしであればいいのだけれども・・・・・・
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いつのまにかそれは僕の形からはずれ、独りでに動き出そうとしている。
”止められない・・・・・・”
立ちすくむ僕をあざ笑うかのように影がにやりと笑った。思わず一歩後ずさりしようとした僕の足。でも動かない。まるでがっちりと地面に引き留められていて動かない。思わずしりもちをつく。そして影が言う。
”君は動いちゃだめだよ。君はぼくが動くとおりに動くんだ。君は自分の姿を忘れてしまったのかい?”
影が見下ろしたように僕に問いかける。そう、だんだん影が伸びていく。へたり込んだ僕を影がじっと見つめる。
はっとした。手が離れない。
手はいくら引き離そうとしても離れない。床に張り付いたまま動こうとしない。手も足もどう動かそうとしても、床を離れることが出来ない。まるで床に落として溶け出していくアイスクリームのように。体が重い。本当に溶け出していくように。僕の体は床に引き寄せられるように。
天井を見ながら倒れ込む中で、首を上げて体を確認する。指の先からだんだんと黒ずんでいくのがわかった。
”影は僕か?”
強い口調で言葉をはき出す。にらみつけたはずの影が笑い、それはだんだんとどこかで見た顔、まるで鏡の中にいる僕の顔へと変わっていく。影は楽しそうに口を開く。
”君は変わりたいと願っただろう? もっともっと違う自分になりたいと。だからぼくが出てきたんだ。君と交代するためにね”
影がはき出したその言葉をきっかけに、指先の黒ずみが加速する。ざわざわと音を立てるように、静かに黒い色が広がっていく。手のひらを超えてじわりじわりとぼくの体が影に変わっていく。
”それは違う、僕はそんなの望んでいない!”
僕の黒く塗りつぶされた体がだんだんと影だったものへと移り変わっていく。
””やめろ! やめてくれ!””
叫んだ口は、影だったものも同じように。それはまるで僕ともう一人の僕が同時に口を開いて同じ言葉を叫んだような。そしてまた影が口を開く。
”君はぼくの影であればいいんだ。ぼくと同じ行動をして、ぼくの後をついてくればいいんだ。ぼくの言うとおりに動いてくれればそれだけでいいんだ”
いつのまにか黒い色は腕を通り越し、体の中へと入り込んでくる。
まるで頭の中まで影になっていくようで。胸を押さえられ、のどを止められ、口から吐き出した息は黒い霧のようで。 耳は聞こえなくなって、目の前が真っ暗になっていく。頭がだんだんぼんやりしてくる。そしてふらふらと倒れ込みそうになる。
でも、倒れ込んでしまえば本当に影になってしまいそうで・・・・・・
最後に見たものは地面を見つめて笑うような「ぼく」で・・・・・・
倒れ込んだ僕は音もなく地面に吸いこまれるように、うすっぺらで・・・・・・
気がついた時には自分の影を見つめる僕がいて、僕の動きに合わせて動く影があって、いつもと変わらない床といつもの景色があって。
”で、ぼくはどっちなんだろう?”
影に問いかけてみても何も答えず。二人して同じように首をひねるだけで。ただ、そのときの影が少し笑ったように見えたのは、ただの思い過ごしであればいいのだけれども・・・・・・
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