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◇ 井波律子「中国人物伝 1~4」

2020年07月08日 | ◇読んだ本の感想。

井波さんは中国文学者。好きな学者さんです。

……えっ!亡くなっていたの、井波さん!?
この5月のことだそうだ。76歳。まだまだ旺盛な書欲を発揮していただけに、
もっと長生きしていただきたかった。

この時期に大部の「中国人物伝」を読み終わったのも何かの縁だったかもなあ。
これを読み終わった後だったらしばらく離れて、亡くなったことには
何年も気づかなかったかもしれん。


出版された本は2014年の「中国人物伝」までだいたい読んでいる。
この人のいいところって、がちがちの学者本のわりにうっすらとユーモアと
体温が漂うところ。冷静な書きぶりだが、贔屓の人について書く時は熱が入り、
そうでもない人に対してはそれなりに。その微妙な温度差を感知するのが好きだった。

もともとは「三国志」が専門だったらしい。でも三国志について書く人は
たくさんいるからね。わたしはむしろこの人が書いてくれる知らない人たち――
触れられることの少ない文人たち――についてが面白かった。

馮夢龍とか。李清照とか。――もっとたくさんいたんだけれど、
まあだいたいは忘れてしまった。しかし忘れたけれども、読むと思い出します。
ああ、井波さんの本で読んだなと。


「中国人物伝」は全4巻。まあまあの厚みで内容もそこそこ硬めなので、
読みとばすということは出来ない。
わたしは井波さんの集大成だろうと思ってゆっくり読みました。

1巻は春秋戦国時代から書き起こしているらしい。
わりと地味なところから……周の桓公が最初の一人のようだが、
周の桓公が何をどうしたかというと全く覚えていない。
桓公なんて、中国史で十人以上出て来るので、まったく印象にないよ。
まあ半年以上かけて4巻読んだからなあ。

中国の歴史上の人物というと、殷の紂王、周の周公旦、太公望あたりから
書き始めてもと思うが、伝説的要素が多すぎるということかね。


でも井波さんが書くと、全然知らない人でも面白く読めます。
面白くない人も多少はいるけど。
特に井波さんは侠客が好きらしく、侠客と文人を書くと熱が入る。
熱が入っている文章は読んでて面白い。

4巻は最後、毛沢東まで来て終わる。今まで毛沢東についての文章を読んだ
ことはなかったので、物珍しく読んだ。
まあ政治史的な毛沢東というよりは、むしろ毛沢東の文章の特徴について
だったが……

 

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井波さんの未読の著作はまだ何冊か残っている。これから1、2冊は出るだろうし。
名残を惜しみながら読む。多分7、8年後に。

 


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